化学物質管理

構造活性相関に関する用語集

構造活性相関に関する用語集
分類 用語 英語 解説
化学物質の生分解性に関する用語 分解 degradation 一般には、分子内の原子間結合が切断されて、より小さな分子となること。分解を行うために外部から与えたエネルギーの形態により、熱分解、電気分解、光分解、放射線分解、生分解などと称される。環境中の化学物質に対しては、有機化合物が生分解等により、水や二酸化炭素などの無機化合物になるケースを指すことが多い。
生分解 biodegradation 酵素反応などの生物学的な反応による分解
環境中に放出された化学物質は、主に微生物による生分解を受け、二酸化炭素や水などの無機化合物に変換される。生分解を受けにくい化学物質ほど、環境中に残留する可能性が高い。
非生物学的反応 abiotic degradation 生物学的でない反応。
大気中や水中での安定性に乏しい化学物質が環境中に放出されると、生分解を受ける前に、光分解や加水分解などの非生物学的反応により他に物質へ変化する場合がある。
加水分解 hydrolysis 官能基の結合が切断されて、その切断部位に水分子がHとOHに分かれて付加する反応。
例えば、エステル類が加水分解するとアルコールとカルボン酸が生成され、有機化合物のハロゲン化物が加水分解するとアルコールとハロゲン化水素が生成される。生物学的反応によるものと非生物学的反応によるものがある。
分解度試験 degradation test 化学物質の生分解を調べる試験。微生物が存在する水溶液中に被験物質を投入し、一定期間において分解した割合(分解度)を測定する。

化審法の分解性評価で用いられる標準の分解度試験は、活性汚泥を用いて28日間の試験期間で行う。試験系の酸素消費量の変化が経時的に測定され、消費された酸素の総量[生物化学的酸素要求量(BOD)]から、分解度が算出される(間接法)。また、試験期間終了後は、ガスクロマトグラフ分析法、高速液体クロマトグラフ分析法などにより、試験液中の残留物(親物質及び変化物)の量が測定され、ここからも分解度が算出される(直接法)。

活性汚泥 activated sludge 好気的条件下(酸素が十分に供給されている条件下)において分解能を有する微生物群を培養して得られる微生物の凝集体。泥状の外観を持つ。
化審法の分解度試験で用いられる活性汚泥は、都市下水処理場の汚泥、河川・海などの表層水、表土など全国十カ所以上から採集された汚泥・水・土を混合し、この中に含まれる微生物を培養することにより調整される。
生物学的酸素要求量 biological oxygen demand (BOD) 有機化合物の分解のため微生物が消費する酸素の量。生物化学的酸素要求量(biochemical oxygen demand:BOD)と同義語。
化審法における分解度試験では、酸素消費による試験系の空気相の圧力変化を電気信号として検出することで測定される。BODから分解度(%)を算出する方法は以下のとおり。
分解度(%)=(BOD-B)/TOD×100
BOD:試験系における生物学的酸素要求量(測定値)
B:汚泥ブランク系(試験液から試験物質のみを除いた系)における生物学的酸素要求量(測定値)
TOD(理論的酸素要求量):試験物質が完全に酸化された場合に必要とされる理論的な酸素消費量(計算値)
変化物   分解度試験試験において、被験物質が変化することにより生成した物質のこと。分解生成物(degradant)や重合物(polymer)が含まれる。このうち、生物学的反応により生じた変化物は代謝物質(metabolite)という。
環境へ放出された化学物質は、親物質の有害性が低くとも、有害性の高い物質へ変化する可能性もある。従って、化審法においては難分解性の親物質だけでなく、分解度試験で残留した変化物の構造を特定することが必要とされている。
良分解性 readily degradable 容易に分解するため、環境中に残留する可能性がないとみなされる分解度試験の判定結果。
化審法の分解度試験では、28日後に親物質が60%以上分解しており、かつ、変化物が1%以上残留していないことが良分解性判定基準となっている。良分解性と判定され公示された物質は、化審法における規制の対象とはならない。
なお、良分解性という語句は行政判断において用いられる語句であり、一般に環境中などで容易に分解する化学物質の性質のことは易分解性(easily biodegradable)という。
難分解性 not readily degradable 分解度試験の結果から、良分解性でないとされる判定結果。難分解性の物質は、環境中に残留する(persistent)可能性があるとみなされる。
化学物質の生物濃縮性に関する用語 生物濃縮 bioconcentration 水中の化学物質が、えらや体表など周囲の水と直接接触している部位から生体内へ取り込まれ、その取込速度が消失速度を上回り、生体内に化学物質が蓄積する現象。食物からの取り込みによる化学物質の蓄積は該当しない。
生物蓄積 bioaccumulation 経路(周囲の環境や食物)によらず、生体内への化学物質の取込速度が消失速度を上回り、生体内に化学物質が蓄積する現象。
生態蓄積 biomagnification 食物として生体内へ取り込まれた化学物質の取込速度が消失速度を上回り、生体内に化学物質が蓄積する現象。食物連鎖の観点から、生態蓄積により生体内に蓄積する化学物質の濃度は、高次捕食動物ほど高くなる可能性が大きい。
濃縮度試験 bioconcentration test 化学物質の生物濃縮性を調べる試験。
被験物質を一定濃度に保った水槽中で水生生物を一定期間飼育し、生体内に蓄積した化学物質の濃度を測定することにより生物濃縮係数を求める。化審法の生物蓄積性評価で用いられる濃縮度試験では、供試魚として主にコイが用いられている。
生物濃縮係数 bioconcentration factor (BCF) 濃縮度試験において定常状態に達した際の水中の化学物質濃度に対する生体中の化学物質濃度の比。
高濃縮性 high bioconcentrative 生物濃縮性が高いという濃縮度試験の判定結果。高次捕食動物に高い倍率で生物蓄積する可能性があるとされる。
化審法では、濃縮度試験における生物濃縮係数BCF)が5,000倍以上である場合は高濃縮性として判定される。また、BCFが1,000倍以上5,000倍未満である場合は、排泄試験や部位別試験の結果に応じて、高濃縮性かどうかの判定がなされる。一方、濃縮度試験におけるBCFが1,000倍未満、またはオクタノール /水分配係数の常用対数値が3.5未満の場合は、高濃縮性でないと判定される。
オクタノール/水
分配係数
octanol-water partition coefficient 互いに混じらないで2層を成す液体における溶質の両層の濃度比を分配係数という。
オクタノール/水分配係数は、水層中における溶質の濃度に対するオクタノール層中における溶質の濃度の割合を表す。オクタノール/水分配係数の常用対数(LogPOW,LogP,LogKOW等と表記)は、化学物質の脂質性を表すパラメータとして、構造活性相関モデルの記述子などに広く用いられている。LogPOWはLogBCFと直線相関があることが見出されており、化審法ではLogPOWが3.5未満の化学物質を高濃縮性でないとする判定基準がある。
オクタノール/水
分配係数測定試験
octanol-water partition coefficient measurement test 化学物質のオクタノール/水分配係数を測定する試験。フラスコ振とう法(LogPOW値を-2から4まで測定可能)とHPLC法(LogPOW値を0から6まで測定可能)がある。
フラスコ振とう法は、相互に飽和した2つの溶媒中に被検物質を溶解して振とう後平衡化し、各相の被検物質濃度を分析する方法である。HPLC法は、炭化水素固定相カラムを用いた高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析の結果から、分配係数を推計する方法である。
構造活性相関モデルに関する用語 構造活性相関 structure-activity relationships 物質の化学構造上の特徴または物理化学定数と、生物学的活性(生分解性・生物濃縮性・各種毒性エンドポイント等)との相関関係を構造活性相関という。既に試験が実施された化学物質の試験データを用いて、こうした相関関係を明らかにすることにより、化学物質の生物学的活性を化学構造から予測する構造活性相関モデルが作成される。
定量的な構造活性相関をQSAR(定量的構造活性相関)、定性的な構造活性相関をSARと称し、区別する場合がある。
定量的構造活性相関 quantitative structure-activity relationships (QSAR) 本来は、生物学的活性の大きさの変化を化学構造上の特徴の差異による自由エネルギーの変化として表した上で、それを定量的に予測できる構造活性相関を指していた。最近では、自由エネルギー変化としての表現をしているかどうかによらず、生物学的活性の大きさを定量的に予測できる構造活性相関全てを指す場合にも用いられている。
トレーニングセット training set 構造活性相関モデルを作成する際に用いられた実測試験データのセット。
バリデーションセット validation set 構造活性相関モデルのバリデーションに用いられた実測試験データのセットのこと。
記述子 descriptor 構造活性相関で用いる物質の構造上の特徴又は物理化学的性状のこと。例えば、分子量、部分構造、LogPOWなどが記述子となる。
本来の定量的構造活性相関では、エネルギーに換算可能な量のみが記述子となる。
エキスパート予測 expert system 構造活性相関よる予測手法の一種。統計解析による予測式ではなく、専門家(エキスパート)が有する知見や経験則をルール化し、フローチャート等を用いて行なう予測。エキスパート予測による構造活性相関モデルをシステム化したものをエキスパートシステムという。
フラグメント法 fragment method 化学構造を任意に分割したものをフラグメントという。フラグメント法は、構造活性相関の予測手法の一種でフラグメントを記述子としたもの。通常、予測する生物学的活性の大きさは、分子を構成する各フラグメントに与えられた定数(フラグメント定数)の和として表わされる。
バッテリーアプローチ battery approach あるエンドポイントに対して、複数の構造活性相関モデルの予測結果を組み合わせて、ベイズ推定法等により、一つの予測結果を導き出す方法。
構造活性相関の評価に関する用語 エンドポイント endpoint 化学物質の評価の指標とする項目。
例えば、分解性、生物蓄積性、変異原性、魚類急性毒性など。詳しくは、試験法とその測定値の種類(OECD301C分解度試験におけるBOD分解度、OECD305濃縮度試験における生物濃縮係数など)により定義される。OECD (Q)SARバリデーション原則では、構造活性相関モデルが予測の対象とするエンドポイントを明確に定義することが求められている。
アルゴリズム algorithm 構造活性相関モデルが予測結果を導き出すための一連の手順。回帰式など統計解析を用いた構造活性相関モデルでは、その予測式が該当する。OECD (Q)SARバリデーション原則では、構造活性相関モデルのアルゴリズムが明示されることが求められている。
適用領域 applicability domain ある構造活性相関モデルが信頼できる予測結果を出すことができる物質の領域。通常、トレーニングセットの物質の構造上の特徴や記述子の範囲で定義される。OECD (Q)SARバリデーション原則では、構造活性相関モデルの適用領域を明確に定義することが求められている。
メカニズム mechanism 生物学的活性(生分解性・生物濃縮性・各種毒性エンドポイントなど)の原因となる分子の挙動や生物学的作用。OECD (Q)SARバリデーション原則では、可能であれば、構造活性相関モデルにメカニズム的な解釈が備わっていることが望ましいとしている。
適合度 goodness-of-fit トレーニングセットに対する構造活性相関モデルの予測精度。
回帰式を用いたモデルでは実測値と予測値の相関係数などで評価され、エキスパート予測を用いたモデルでは感度特異度などで評価される。
頑健性 robustness 回帰式など統計解析を用いた構造活性相関モデルにおいて、トレーニングセットの変動による予測精度の変動の受け難さ。構造活性相関モデルの信頼性評価の指標のひとつ。クロスバリデーションにより評価することができる。
予測性 predictivity トレーニングセットに含まれていない物質の試験データ対する構造活性相関モデルの予測精度。
回帰式を用いたモデルでは実測値と予測値の相関係数などで評価され、エキスパート予測を用いたモデルでは感度特異度などで評価される。
バリデーション validation
  1. (1)種々の角度から構造活性相関モデルを検証し、特定の使用目的に対し受容可能であることを立証するプロセス。OECDでは、構造活性相関モデルの行政利用目的に対しバリデーションを行うための5項目から成るOECD (Q)SARバリデーション原則を定めている。
  2. (2)適合度頑健性予測性など、構造活性相関モデルの信頼性を評価すること。内部バリデーション外部バリデーションがある。OECD (Q)SARバリデーション原則では、構造活性相関モデルの適合度頑健性予測性を評価することが求められている。
OECD (Q)SARバリデーション原則 OECD principles for the validation of (Q)SAR
  1. OECDが行政利用を目的にバリデーションを行う際に必要となる構造活性相関モデルの情報として2004年に定めた5つの原則。
    1. 1.エンドポイントの定義
    2. 2.曖昧さのないアルゴリズム
    3. 3.適用範囲の定義
    4. 4.適合度、頑健性、予測性の適切な評価
    5. 5.可能ならば、メカニズムに関する解釈
内部バリデーション internal validation 適合度頑健性の評価など、構造活性相関モデルの信頼性を評価すること。
クロスバリデーション cross-validation 回帰式など統計解析を用いた構造活性相関モデルにおいて、トレーニングセットから一部の物質のデータを除外した後、そのモデルの回帰係数などを再計算し、再構築したモデルの除外した物質群に対する予測制度を調べること。構造活性相関モデルの頑健性の評価に用いられる。
外部バリデーション external validation 予測性の評価などトレーニングセットに含まれていない化学物質の試験データを用いて、構造活性相関モデルの信頼性を評価すること。
感度 sensitivity あるエンドポイントにおいて、陽性か陰性かを予測する構造活性相関モデルで、実際に陽性である物質をいくつか予測したとき、それらの中で正しく陽性と予測された物質の割合。
特異度 specificity あるエンドポイントにおいて、陽性か陰性かを予測する構造活性相関モデルで、実際に陰性である物質をいくつか予測したとき、それらの中で正しく陰性と予測された物質の割合。
フォールスネガティブ false negative prediction あるエンドポイントにおいて、実際には陽性である物質を陰性であるとする誤った予測。
フォールスポジティブ予測 false positive prediction あるエンドポイントにおいて、実際には陰性である物質を陽性であるとする誤った予測。
カテゴリーアプローチに関する用語 カテゴリーアプローチ category approach 構造類似性に対し有害性が類似または規則的なパターンを示す物質群をグループ化して評価を行う方法。同じカテゴリーに属する類似物質の試験データを用いて未試験物質の有害性を推定することができる(データギャップ補完)。類似物質の選定の方法などエキスパートジャッジに基づき評価が行われる。
アナログアプローチ analogue approach 類似物質の数は少ないが、分子構造及び有害性が非常に類似な物質の試験データがある場合において、エキスパートジャッジで未試験物質の有害性を評価する方法。
トレンドアナリシス trend analysis カテゴリーアプローチにおいて、有害性の規則的なパターンに基づき相関式等を用いてデータギャップ補完を行う方法。
リードアクロス read-across カテゴリーアプローチアナログアプローチにおいて、有害性の類似性に基づきデータギャップ補完を行う方法。未試験物質の有害性は試験データのある類似物質と同程度と推定される。我が国では「類推」と呼ばれる。
アドバースアウトカムパスウェイ adverse outcome pathway 個体または群に対する化学物質の暴露から、個体レベルまたは群レベルでの最終的な有害性の発現までの事象の経路を示したもの。分子レベル、細胞レベル、臓器レベル、個体レベルおよび群レベルの事象が含まれる。反復投与毒性などの複雑なエンドポイントについてはadverse outcome pathwayに基づいてカテゴリーアプローチを行うコンセプトがOECDにより提案されている。なお、類義語の"toxicity pathway"は分子レベルと細胞レベルの事象を対象とする際に、"mode of action"は分子レベルから個体レベルまでの事象を対象とする際に用いられる。
ハザード評価に関する用語 インビボ in vivo 「生体内で(の)」という意味。生体に直接被験物質を投与し、生体内及び細胞内での反応を検出する試験をin vivo試験という。
インビトロ in vitro 「試験管内で(の)」という意味。試験管や培養器のような人工環境下での反応を検出する試験をin vitro試験という。
インシリコ in silico コンピュータを用いた有害性予測。構造活性相関カテゴリーアプローチ等が含まれる。
インテグレーテッドアプローチトゥテスティングアンドアセスメント integrated approach to testing and assessment 異なるタイプの試験データ(in vivoin vitro)や非試験データ(in silico)を組み入れて有害性の評価を行うコンセプト。関連するあらゆる情報を結合し評価することにより必要な試験を最小化することが意図される。類義語に"integrated testing strategy"がある。

【参考文献】

  1. [1]化学大辞典:東京化学同人(大木道則、大沢利昭、田中元治、千原秀明編集)
  2. [2]化学物質と上手に付き合うために─化学物質のリスク評価─【PDF:2.83MB】(NITE化学物質管理センター)
  3. [3]岩波 理化学事典(第5版):岩波書店(長倉三郎、井口洋夫、江洋、岩村秀、佐藤文隆、久保亮五編集)
  4. [4]環境と化学物質-化学物質とうまく付き合うには-:大阪大学出版会(西原力著)
  5. [5]統計解析ハンドブック:朝倉書店(武藤眞介著)
  6. [6]回帰分析:朝倉書店(佐和隆光著)
  7. [7]化審法 判定基準「監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準【PDF:22KB】
  8. [8]化審法 試験法通知「新規化学物質等に係る試験の方法等について【PDF:620KB】
  9. [9]OECDテストガイドライン 301【易分解性】
  10. [10]OECDテストガイドライン 301C【修正MITI試験(I)】
  11. [11]OECDテストガイドライン 305【生物濃縮:魚による流水式試験】
  12. [12]OECDテストガイドライン 117【分配係数(n-オクタノール/水)(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法)】
  13. [13]OECDテストガイドライン 107【分配係数(n-オクタノール/水)(フラスコ振とう法)】
  14. [14]米国EPA "Pollution Prevention Manual"
  15. [15]米国EPA "Terms of Environment"
  16. [16]OECD Series on Testing and Assessment No. 80: Guidance on Grouping of Chemicals
  17. [17]OECD Series on Testing and Assessment No. 184: Guidance Document on Developing and Assessing Adverse Outcome Pathways

PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。Adobe ReaderはダウンロードページGet ADOBE READERよりダウンロードできます。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター  安全審査課  QSAR担当
TEL:03-3481-1735  FAX:03-3481-1950
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10 地図
お問い合わせフォームへ