化学物質管理

(3)化粧品の構成成分

化粧品に用いられる配合原料は、使用目的に応じた有用性(機能)や使用性(使用感)に優れていること以外に、人体に対する安全性が高く、また長期に保存安定性が良好で、においの変臭がないことなどが必要です。

化粧品の原料を大雑把に分類すると、化粧品のベースを構成するのに必要な基剤原料、生理活性や効果、機能を訴求するための薬剤原料、製品の品質を保つのに必要な品質保持原料、色や香りに関連する官能的特徴付与原料に分けられます。

「1.化粧品」表紙画像

1.油性成分

油性成分は皮膚に対する柔軟作用や保護作用(すなわちエモリエント効果)のために、保護乳液や保護用クリームに配合される成分です。またファンデーションや口紅などメークアップ化粧品の色素分散や化粧効果を上げる目的で使用されます。そのメークアップ化粧品を落とすためのメーク落としにも配合されます。ヘアケア化粧品では髪へのつややセット性を与えるためにも配合されます。

油性成分は、炭化水素類、植物油、動物油、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、シリコーン油が主に用いられます。これら以外にも多価アルコール類、多価アルコールエーテル、アリキルグリセリルエーテル、皮脂成分や細胞間脂質、フッ素油などがあります。

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2.界面活性剤

洗顔料、シャンプー、浴用石けん、ボディシャンプーやハンドソープなどの洗浄剤では主成分として界面活性剤が配合されています。

また多くの化粧品では製品形態の安定性を保つために、種々の界面活性剤が配合されています。界面活性剤の可溶化作用や乳化作用(油性成分などの水不溶性成分と水とを均一で安定な状態に混合する作用)を利用しています。

化粧品は皮膚に直接使用しますので、出来るだけ皮膚刺激性などの少ない界面活性剤が用いられます。(→界面活性剤の構造等については「洗剤情報」を参照にしてください。)

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3.保湿成分

保湿成分(保湿剤)は吸湿性の高い水溶性の物質であり、水にはよく溶け皮膚になじみやすい物質で、水を含ませて皮膚につけると皮膚表面及び角層の内部にしばらくとどまって水分を与え、しっとりとさせる働きをもっており、皮膚、毛髪の水分の蒸散をおさえ乾燥を防止する作用があります。ヒューメクタントあるいはモイスチャライザーと呼ばれることがあります。

保湿成分としては多価アルコール類がもっとも多く用いられていますが、それ以外にも糖類や水溶性の生体高分子、天然保湿因子(natural moisturizing factor、NMFと略記 される)であるピロリドンカルボン酸ナトリウムなどが使用されています。また最近では、アミノ酸類や尿素も使用されています。

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4.高分子物質

高分子物質(高分子化合物、ポリマー)とは、分子量の大きい物質の総称で、その範囲は非常に広い。化粧品に関連する高分子物質としては、水溶性高分子、生体高分子、皮膜性高分子、粉体高分子に分類することが出来ます。また無機物の粉体も無機高分子として、この範疇に入ります。

  • 水溶性高分子は粘度調整(増粘、ゲル化)、液状安定化(乳化、分散)、泡安定化等の目的で使用されます。従来、天然高分子が使用されてきましたが、供給性、品質安定性、微生物汚染などの観点から、最近では半合成高分子(カルボキシメチルセルロース等)や合成高分子(ボリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン等)が多く用いられるようになり、その種類は多岐に亘っています。
  • 生体高分子とは生体由来の高分子であって、真皮の構成成分である酸性ムコ多糖類のヒアルロン酸ナトリウムやたんぱく質の可溶性コラーゲンやエラスチンなどが保湿成分として用いられます。なお、これらの生体高分子は保湿作用のほかにも皮膜形成、増粘、乳化などの機能を併せ持っています。
  • 皮膜形成高分子は皮膜形成能を有する高分子のことで、化粧品ではパック、ネイルエナメル、シャンプーなどに配合されています。代表的なものとしては、パックに用いるポリビニルアルコールやネイルエナメルに用いるニトロセルロース等があります。
  • 粉体高分子は製品の剤型保持や使用感触向上の機能を有する粉状の高分子です。ポリエチレン粉末やナイロン粉末などが用いられます。またスクラブ剤(マッサージ効果や洗浄効果を増強するために使用する粉末)としても用いられます。
  • 無機高分子としてはシリカ、マイカ、タルクなどの無機粉体があります。賦形剤(注)、充填剤、無機顔料あるいは研磨剤等広い用途に用いられます。
    (注):賦形剤(ぶけいざい):あつかいやすくするために有効成分に加える影響のない成分。

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5.増粘剤

製品を使用しやすい粘度に調整(増粘、ゲル化)する目的で使用されます。主に水溶性高分子が用いられます。

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6.溶剤

何かを溶かすための液体です。ネイルエナメルでは主に酢酸エチル等が使用され、皮膜形勢高分子を溶かして爪に塗りやすくし、塗った後にこの液体部分が蒸発することで、爪の上に皮膜を形成します。また香水等のフレグランスにおいては、エタノール等が使用され、香り成分を溶かします。使用時に香り成分の蒸発を調整する働きも持ちます。

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7.色材

色材(着色剤)は化粧品に配合して、おもに皮膚を適度に被覆、彩色して美しく見せる目的でメークアップ化粧品などに配合されます。

物質としては有機合成色素(合成染料、レーキ、有機顔料)、天然色素、無機顔料(体質顔料、着色顔料、白色顔料)に大別され、またパール剤(真珠光沢顔料)も用いられます。

7-1.有機合成色素

有機合成色素とは石炭タール系原料から製造される合成着色剤で、タール色素ともよばれる合成着色剤です。色調が豊富で、メークアップ効果が鮮明であるという特徴を有していますが、なかには皮膚刺激性などのために人体に使用できないものがあります。化粧品に用いられるものは薬事法によって、現在使用基準が設けられていて、これを法定色素または許可色素といいます。有機合成色素には、合成染料(水、油、アルコールなどに溶解する色素)、レーキ(水溶性の染料を金属塩にして不溶化したもの)、有機顔料(水、油、アルコールなどに溶解しない有機粉末)の3種類があります。

7-2.天然色素

天然色素とは動植物または微生物から抽出される有色の有機化合物です。一般に天然色素は有機合成色素に比べて着色力に劣り色落ちしやすいなどの欠点があるため、現在はあまり使用されていません。しかし近年の天然物志向への風潮から見直されつつあります。

7-3.無機顔料

無機顔料は鉱物性顔料とも呼ばれます。天然鉱物などを粉砕して使用しているため、不純物で品質が安定しないという短所があります。一般に、無機顔料は色彩の鮮やかさでは有機顔料に劣りますが、耐光性、耐熱性、耐溶剤性に優れています。製品の剤形を保つための体質顔料、製品の色調を調整する着色顔料、色調のほかに隠蔽力をコントロールする白色顔料などに分けられます。

7-4.パール剤

光を一定方向に反射し、輝きを感じたり、虹のような色を発したりする仕上がりのことをパール感とよび、このような特性を持った素材をパール剤(真珠光沢顔料)といいます。代表的な素材として、アルミニウム粉末、酸化鉄被覆雲母チタンなどがあります。

また、きらきらとした点在感のある輝きを放つ材料としてラメ剤があります。素材としては、屈折率の異なる複数の高分子を100層前後に積層させ、干渉光で輝きを出します。アルミニウムを蒸着させて、金属光沢を出すものもあります。

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8.香料

香料には天然の素材に由来した天然香料と、有機合成によってつくられる合成香料があります。実際に化粧品等に用いられるものは天然香料や合成香料等の香料素材を調香技術によってブレンドして作り出された調合香料です。

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9.紫外線防止剤

紫外線防止剤(紫外線防御剤、サンスクリーニング剤)には、大きく分けて紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があります。

紫外線吸収剤は、吸収剤そのものが紫外線を吸収し、熱などのほかのエネルギーに変化させて肌の表面から放出させ、肌の内部に紫外線の悪影響が及ぶのを防ぐものです。肌が紫外線を吸収しやすくするものではありません。

紫外線散乱剤は、おもに粉体で、肌の表面で受けた紫外線を乱反射させて逃がし、肌の内部へ侵入するのを防ぐものです。最近は、吸収剤と散乱剤がいっしょに配合されている製品が多くなっています。

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10.抗菌剤

抗菌剤とは、有害な微生物を殺菌したり、増殖を抑制したりする薬剤で、防腐剤と殺菌剤を便宜的に称してよびます。

防腐剤は化粧品の中で静菌作用により製品の劣化を防ぎます。代表的なものとして、パラオキシ安息香酸エステル(パラベンとも呼ばれます)があります。その他にソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウムなどがあります。

殺菌剤は短時間に菌を死滅もしくは減少させる効果をもち、にきび用製品やデオドラント化粧品に配合されます。化粧品に用いられる殺菌剤としては、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムのような第四級アンモニウム塩、クロロヘキシジン等があります。

なお、防腐剤と殺菌剤は使用目的や微生物に対する作用形態などが異なり、区別されていますが、実際はあまり厳密な区別ではなく、同一の物質を使用目的により、防腐剤として使用したり、殺菌剤として使用したりします。

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11.酸化防止剤

化粧品の成分の中には空気に触れると自動酸化を起こし、皮膚刺激やアレルギー反応の原因となる過酸化物がつくられる可能性があります。酸化防止剤はこれを防ぐため使用されるもので、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール(ビタミンE)等が代表的です。

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12.キレート剤

化粧品に鉄イオンや銅イオンが非常に微量混入していても、酸化が起こり、変色や変臭、品質の低下が促されることがあります。エチレンジアミン四酢酸塩やクエン酸等のキレート剤は金属イオンと強く結合して、変質を効果的に抑えます。金属イオン封鎖剤(あるいは単に金属封鎖剤)と呼ばれることもあります。

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13.pH調整剤

化粧品の品質を保持のためにそれぞれの化粧品にあったpHに保持することが必要です。pH調整剤はそれぞれの化粧品のpHを適切な状態に保つためや化粧品の原料を配合する際の中和などに使用されます。

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14.酸化剤

物質を酸化させる働きを持つ薬剤です。ヘアカラー(永久染毛剤)においては毛髪に浸透した酸化型染料を発色するために酸化剤として過酸化水素等を用いられます。脱色剤においては、毛髪のメラニンの脱色のために用い、脱染剤では毛髪に吸着した染料を脱色するために使用されます。また、パーマネント・ウェーブ剤では、パーマ1剤(還元剤)で緩められた毛髪構造を、2剤(酸化剤)として、再構築して、毛髪を永久的に変形させるために使用され、過酸化水素や臭素酸ナトリウムが用いられます。

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15.還元剤

物質を還元させる働きを持つ薬剤です。パーマネント・ウェーブ剤の1剤として、毛髪構造を緩めるためにチオグリコール酸等が用いられます。

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16.浸透剤

半永久染毛剤では、染料の毛髪への浸透性を高めるために、ベンジルアルコール等の浸透剤が用いられます。

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17.生理活性成分

生理活性成分とは、化粧品や薬用化粧品に配合される緩和な薬理作用をもった成分で、美白剤、育毛剤、肌荒れ防止剤、しわ防止剤、にきび用剤、ふけ・かゆみ用剤、腋臭(えきしゅう)防止剤(わきの下に発生するいやな臭い防止を目的とする剤)などがあります。

17-1.美白剤

美白剤とは日焼けなどによるメラニン(褐色あるいは黒色の色素)の生成を抑制し、その沈着を予防する効果のある成分です。メラニン抑制の機能から分類すると、メラニン生成抑制剤、メラニン還元剤及びメラニン排泄促進剤に分類できます。成分としてはビタミンC及びその誘導体等がありますが、それ以外にも多くのものが開発、使用されています。日本では、医薬部外品の主剤として有効性が認められた成分を美白剤と呼びます。

17-2.育毛剤

育毛剤には種々の生理活性成分が配合されます。毛包部への血液供給を促進する血行促進剤(末梢血管拡張剤あるいは毛根刺激剤)、毛包細胞への栄養補給、または毛母細胞の酵素の働きを活性化させることにより毛成長の促進をはかる目的としての毛母細胞賦活(ふかつ)剤、抗男性ホルモン剤(女性ホルモンなど)、抗炎症剤、ふけ抑制剤、頭皮の鎮痒(ちんよう)剤(かゆみをおさえるための剤)、頭皮の保湿剤、頭皮の浸透促進剤などです。

17-3.肌荒れ防止剤

外界からの影響(乾燥、紫外線、刺激等)や内部環境の影響(疾病、精神状態等)を受けて発生する肌荒れを予防、改善する剤のことです。肌荒れ防止用に使用される成分は非常に数が多く、肌荒れの発生原因に応じて、組み合わせて使用されます。

配合される成分としては、抗炎症剤、ビタミン、ホルモン類や植物エキス類、殺菌剤などがあげられます。また肌の乾燥が原因である肌荒れに対しては、油性成分や保湿成分が組み合わされます。

17-4.しわ防止剤

しわの主な発生原因は、紫外線や肌の乾燥などの外部要因と、老化による代謝機能低下があります。

防止成分としては、活性酸素やフリーラジカルによる皮膚のダメージをおさえる抗酸化剤、衰えた皮膚代謝機能を賦活させる細胞賦活剤、老化により減少するコラーゲン線維の分解・変性をおさえるコラゲナーゼ抑制剤、エラスターゼ抑制剤などがあります。また、紫外線防止剤や保湿成分などが上記成分と組み合わせて使用されます。

17-5.にきび用剤

にきび肌用化粧品に配合される有効成分には、皮脂の分泌をおさえる皮脂分泌抑制剤、毛穴をふさいでいる角栓を取り除くための角層剥離・溶解剤、にきびを刺激して悪化させ炎症を起こしたりするにきび桿(かん)菌などの皮膚常在菌が増えないようにする殺菌剤、にきびの炎症をおさえる抗炎症剤などがあります。

17-6.ふけ・かゆみ用剤

ふけの発生やそれに伴うかゆみ、炎症を防止するためには、皮脂の分泌を抑制するための皮脂分泌抑制剤、ふけ原因菌の増殖をおさえる殺菌剤、皮脂の酸化をおさえる抗酸化剤、多量に生成した角質を減少させるための角層剥離・溶解剤、かゆみや炎症を防ぐ鎮痒剤や抗炎症剤などが用いられます。

17-7.腋臭防止剤

腋臭(えきしゅう)防止剤としては、汗口のたんぱく質に結合して凝固収縮させることで、汗口を狭くして汗の発生を防ぐ収斂(しゅうれん)効果をもつ制汗物質や、発汗した汗をすみやかに吸収することで細菌との接触を防ぎ、汗の変性を抑える水分吸収剤、細菌そのものの働きをおさえる殺菌剤などがあります。

制汗成分としてはクロルヒドロキシアルミニウム(塩化アルミニウム水和物、ACH)、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)などのアルミニウム塩が良く使われ、ついで硫酸亜鉛やパラフェノールスルホン酸亜鉛などの亜鉛塩がよく使われます。なかでも、クロルヒドロキシアルミニウムは粉末のままでも水に溶かしても使え、制汗効果も高く、皮膚刺激も少ないので最も多く使われる成分です。

水分吸収剤として、タルク、酸化亜鉛、微粉シリカ、多孔性高分子などが使用されます。

17-8.収れん剤

収れん(収斂)とは肌を引き締めたり、発汗をおさえたりする作用で、そのような効果を有する成分が収れん剤(アストリンゼントとも呼ばれる)です。収れん剤には皮膚への作用が緩和な有機酸(クエン酸、コハク酸等)と収れん効果が強い酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインジヒドロキシアルミニウム等の金属塩があります。どちらも皮脂腺や汗腺の開口部のたんぱく質と結合し、凝固、収縮する作用があります。収れん剤はアストリンゼントローション(収れん化粧水)、アフターシェービングローションや腋臭防止剤などに配合されます。

17-9.その他成分(薬剤)

化粧品にはこれまで述べた成分以外にも、生体の生理機能に関与する成分として、アミノ酸、ビタミン等種々の成分が配合されています。また天然物由来成分として植物抽出物も多く利用されています。

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