化学物質管理

(2)子供用おもちゃの構成成分

おもちゃは不定形な商品であり、多様な素材が用いられています。主要な構成成分は、おもちゃ自身の素材、塗料、接着剤などがあります。ここでは素材について、特にプラスチックに重点をおいて、主素材と副素材からみていきます。

「子供用おもちゃ」イメージイラスト

1.主素材

1-1.繊維

人形やぬいぐるみなどで使用されている繊維として、ポリエステル繊維、アクリル繊維、羊毛、綿などがあります。

1-2.木

積み木等で使用されている木として、ブナ、カエデ、カバ、パインなどがあります。

1-3.金属

レーシングカー、ゼンマイを使用したミニチュアカー、キャラクター人形、鉄道模型、航空機模型などで使用されている金属として、鉄、アルミダイキャストなどがあります。

  • ダイキャストとは、ダイ(Die)=鋳型、キャスティング(Casting)=鋳造、鋳型鋳造のことで、合金を溶かして金型に高圧で流し込み製品を造る鋳造方式、またはその製法で作ったものをいいます。

1-4.紙

紙は、カード類、折り紙などで使用されています。

1-5.プラスチック

おもちゃに使用される主なプラスチックの特性及び使用例は次のとおりです。

おもちゃに使用される主なプラスチックの特性及び使用例
名称/略号 特性 使用例
ポリスチレン樹脂(ポリスチレン)/PS 非結晶性熱可塑性樹脂で、スチレンを単体重合した一般用(GPPS)、スチレンとポリブタジエンを重合した耐衝撃性(HIPS)のものがあります。絶縁性、耐水・耐薬品性が良く、常温で硬く、樹脂自体は透明、着色により様々な色調になります。熱に弱く、衝撃耐久性が低いものは、落下などで割れることもあります。 ミニカー、人形、ブロック、キャラクター、乗物玩具、プラモデル、おしゃぶり、歯がため、音のでるもの
アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂/ABS 非結晶性のスチレン系熱可塑性樹脂で、アクリロニトリル(A)ブタジエン(B)スチレン(S)の三つが重合したものです。一般に乳白色、半透明、吸湿性があり、金や銀などの金属によるプラスチックのメッキの密着性が良好です。
アクリロニトリル・スチレン樹脂/AS 非結晶性のスチレン系熱可塑性樹脂で、スチレンとアクリロニトリルを共重合したものです。物理的、化学的性質はバランスがとれ、引っ張りや衝撃に強く、耐熱温度、硬度が高く、透明で、耐薬品性、耐候性がポリスチレンより良く、有機溶剤を除いて、弱酸、アルカリ、油類にもよく耐えるものです。
塩化ビニル樹脂/PVC 塩化ビニル(塩ビ)を重合した熱可塑性樹脂で、一般に粉末状であり、これに可塑剤、安定剤、充てん材などを配合混練して成形材料をつくります。添加剤の加え方により、軟質から硬質まで広範囲の製品ができます。 透明性、着色性、印刷自在性、耐水性、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性などに優れ、電気絶縁性が極めて良好ですが、耐熱性は低くなっています。 音のでるもの(がらがら)、ソフトビニル玩具、ミニカー、人形、乗物玩具
ポリプロピレン/PP プロピレンを重合した結晶性の熱可塑性樹脂で、結晶の数や大きさ、種類などで性質が異なります。汎用プラスチックの中で最も軽く、硬質で引っ張り強さがあり、耐熱性は110℃と高く、折り曲げにも非常に強い性質を持っています。また、絶縁性、耐薬品性にもすぐれています。 音のでるもの、人形、おしゃぶり、歯がた
ポリエチレン 高密度タイプ/HDPE、 低密度タイプ/LDPE
  • 高密度ポリエチレン:エチレンを低圧下で重合してできた、分岐のない直線状のポリエチレンの樹脂で、結晶性が高く、低密度ポリエチレンに比べて硬く、軟化温度も高い性質があります。
  • 低密度ポリエチレン:エチレンを高温高圧下で重合してできた乳白色半透明の結晶性樹脂です。一般に、ポリエチレンは、水に浮く軽さで、成形しやすいため広く使用されています。熱には弱いが、寒さには強くマイナス20℃位までなら耐えられます。また、吸水性がほとんどないため、防水性は抜群です。電気絶縁性、耐油性、耐薬品性は良い反面、接着性や印刷性が悪く、太陽光線や紫外線に弱い弱点があります。
人形、音のでるもの、歯がため
ポリアミド(ナイロン)/PA ポリアミドは、ポリマーの主鎖中にアミド結合をもつ結晶性樹脂で、一般にナイロンと呼ばれています。εカプロラクタムを重合したナイロン6およびヘキサメチレンジアミンとアジピン酸などの酸とを重合させたナイロン66、610、612、12、46など多くの種類がありますが、代表的なものはナイロン6とナイロン66です。機械特性が良く、引張り、圧縮、曲げ、衝撃に強く破損しにくい性質があります。熱にも強く、ガラス繊維を加えると160℃以上に耐え、また、耐薬品性、耐油性も非常に強いものです。欠点は、吸水性が高く、膨張して寸法変化、変形を起こします。 ラジオコントロール玩具
メラミン樹脂/MF メラミンとホルムアルデヒドの縮重合反応によってつくられます。表面硬さが大で、重量感があり、光沢、色調も良く陶磁器に似た触感があります。耐衝撃性が強く、不燃性、電気絶縁性にすぐれ、耐酸、耐アルカリ性に富み、有機溶剤に強い性質を持っています。 将棋の駒、組立ブロック
ポリカーボネート/PC ビスフェノールAを主原料とした主鎖にカーボネート結合をもつポリマーで、透明性に優れており、引っ張り、圧縮強さが強く、特に強力な耐衝撃性を持っています。また、耐熱性、耐寒性も良好で、燃えにくく、耐候性、透明性、寸法安定性にすぐれ、電気絶縁性もよく、多くの特筆すべき特性をもっていますが、繰り返し荷重には弱く、塩素含有溶剤に溶けます。 ゲーム機器ディスプレー保護パネル、ラジコン玩具
メタクリル樹脂(アクリル)/PMMA メタクリル酸メチル(MMA)を主体とするポリマーで、プラスチック随一の透明度をもち、耐候性に優れています。外観、表面光沢、表面硬度も良いものです。 キャラクター
エチレン・酢酸ビニル樹脂/EVA エチレンと酢酸ビニルを共重合させた樹脂で、酢酸ビニルの含有率によって異なった性質を示しますが、柔軟性、ゴム弾性、すぐれた低温特性をもちます。 楽器、電話、遊具
ポリアセタール/POM ホルムアルデヒドを主原料として得られる重合体で、機械的性質、耐熱性に優れ自己潤滑性を有し、耐摩耗性および耐疲労性についてはすぐれた性能を示しますが、耐酸性、耐アルカリ性に劣り、耐候性にもやや劣ります。

(※使用例はインターネット等の情報によります。)

ページトップへ

2.副素材について

副素材として、プラスチックに様々な目的で添加されている配合剤について記載します。

2-1.プラスチック配合剤

プラスチックには、加工する際に加工し易くする滑剤、硬さ軟らかさを調節する可塑剤、製品使用時に熱、光、酸素などからの影響を防止するための安定剤、帯電防止剤、難燃剤、カビ防止剤、着色剤や機械的強度を向上するための結晶核剤などが添加されています。

2-1-1.可塑剤

可塑剤は、ポリマー分子の間に浸透して、ポリマー間の分子力を弱め、ポリマーに柔軟性を与えます。特に、塩化ビニル樹脂(PVC)においては、可塑剤の添加量により自由に樹脂の柔軟性が制御できるため多く使用されています。可塑剤は相溶性に優れる一次可塑剤と、それが劣る二次可塑剤に分けられます。前者にはフタル酸エステル類、アジピン酸エステル類があり、後者にはアルキルエポキシステアレート、エポキシ化大豆油、塩素化パラフィン、ポリエステルなどがあります。

2-1-2.安定剤

プラスチックの安定剤は、プラスチック加工時の熱、空気中の酸素、オゾン、あるいは製品使用中の紫外線暴露などにより、プラスチックの物理的及び化学的性質が劣化するのを防止するために、プラスチック加工の配合時に加える化学物質のことをいい、塩化ビニル樹脂安定剤、酸化防止剤(抗酸化剤)、紫外線吸収剤に分類されています。また、抑制機能別の分類としては、1)光エネルギーなどにより生じるラジカルの影響を抑制するラジカル連鎖開始阻害剤、2)樹脂中で生成したラジカルや重金属類の金属イオンなどにより生成するラジカルを捕捉するラジカル捕捉剤、3)ラジカルと空気中の酸素と速やかに反応し、生成される過酸化物(パーオキシラジカル)を無害化する過酸化物分解剤に分類されます。

(1)塩化ビニル樹脂安定剤

塩化ビニル樹脂は、加熱、光の照射により、しだいに着色、黒変、脆化(もろくなること)します。これは、塩化ビニル樹脂が熱や光のエネルギーで脱塩酸がおこり着色しやすい構造になり、更には主鎖の切断や架橋を起こすためです。これらを防止するための塩化ビニル樹脂安定剤には、金属石けん系、有機スズ系、鉛塩系の化合物が用いられています。

(2)酸化防止剤

酸素・オゾンは熱や光によって、プラスチックの一部と過酸化物をつくり、その過酸化物は分解してその部分を変質させ、また、同時に活性に富んだラジカルを生成し、プラスチックの強度の低下、ひび割れ、着色、電気絶縁性の低下を起こします。酸化防止剤は、ラジカルを不活性化して作用が広がらないようにする、生成した過酸化物を分解する、過酸化物の酸化作用を促進する重金属を捕捉するなどの作用をしています。酸化防止剤には、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン酸系の化合物が用いられています。

(3)紫外線吸収剤

紫外線には大きなエネルギーがあり、プラスチックの主成分のポリマーに直接作用して結合を破壊し、劣化させますが、紫外線吸収剤が存在すると紫外線エネルギーを吸収し、紫外線吸収剤分子の内部変化にそのエネルギーを消費し、ポリマーにエネルギーを及ぼさない作用をします。紫外線吸収剤には、サリチル酸系およびベンゾフェノン系の化合物が用いられています。

2-1-3.難燃剤

プラスチックの燃焼は、プラスチックが熱により分解して低分子量の可燃性物質になり、それが燃焼することにより起こります。また、燃焼は高温でラジカル的に進行する酸化反応です。難燃剤は、燃焼の際に低分子化合物に分解しないように架橋を促進したり、燃焼で出来る活性ラジカルと反応して酸化反応を止める効果、それ自身又は燃焼して不燃性ガスを発生し空気(酸素)を遮断する効果を示すなどの働きをする化合物です。これらにはリン酸エステル系、ハロゲン化炭化水素系、無機系の化合物が用いられています。

2-1-4.帯電防止剤

プラスチックは、一般的に電気絶縁性が高く、摩擦したり、重ね合わせたフィルムを剥離する際には、容易に数万ボルト以上の電位を発生し外部に漏洩しないので帯電が起こります。その結果、チリなどの付着、エレクトロニクス製品へのノイズ、人への電撃、時には火災の原因にもなります。これを防止するために用いられるのが、帯電防止剤で、その使用方法には練り込み型と塗布型があります。主なものとして、高分子の非イオン系、カチオン系、両性系の界面活性剤が用いられています。

2-1-5.着色剤

着色剤は、プラスチックを着色するものですが、そのほかに、光の遮断、吸収等による耐光性をプラスチックに付与します。着色剤には、無機顔料、有機顔料及び染料があります。

2-1-6.抗菌・防カビ剤

抗菌・防カビ剤は、製品表面につく細菌やカビを増やさないようにするもので、製品表面に 抗菌・防カビ剤が滲みだすことで効果をもたらします。抗菌・防カビ剤には、リン酸ジルコニウムなどの無機系化合物とベンズイミダゾール系などの有機系化合物があります。

2-1-7.滑剤

プラスチックの成形加工では、加熱溶融した樹脂を金型に充てん・固化して行われますが、成型機内では樹脂と金属壁との間で摩擦抵抗が生じ樹脂の流動性に作用し、成型品の生産性・仕上がり性に影響が出ます。滑剤はこの摩擦抵抗を低下させて溶融樹脂の流動性をよくして成形性を改善する配合剤です。炭化水素系、金属石けん系、アミド系、エステル系の化合物が用いられます。

2-1-8.結晶核剤

結晶核剤は、結晶性プラスチックの結晶化をコントロールすることで、そのプラスチックの剛性、耐熱性、透明性、表面光沢性等の物性を向上させるもので、タルク、シリカなどの無機系化合物と安息香酸カルシウムなどの有機系化合物があります。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 化学物質管理センター
TEL:03-3481-1977  FAX:03-3481-2900
住所:〒151-0066 東京都渋谷区西原2-49-10 地図
お問い合わせフォームへ