製品安全

Vol.9 11月 4日号「安全・安心な生活のために」

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         ■ 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE・ナイト)
      ■■■          生活・福祉技術センター 業務管理課
                       http://www.jiko.nite.go.jp/

====================2005.11.4 Vol. 9=====================
┌─────┐
│PSコラム│
└─────◆───────────────────────────┐
      │       安全・安心な生活のために         │
      └───────────────────────────┘

◇NITEで製品安全の仕事をする20年ほど前のことですが、当時住んでい
 た横浜市主催の消費者講座を一市民として興味があり、受講しました。その
 頃、小型ガス瞬間湯沸器の不完全燃焼による中毒事故や死亡事故が多発した
 ために、これらの機器に不完全燃焼防止装置の取り付けが義務付けられまし
 た。

◇「安全装置を取り付けると商品価格が上昇するので、安全装置のない商品も
 選択ができるようにしても良いのでは。」と、少々意地悪な質問をしたとこ
 ろ、「命を落とすことを防止できるのであれば、安全装置を義務付ける方が
 良い。」と明快な回答がかえってきました。

◇最近、二口以上のガスこんろには、一つ以上のバーナーに、揚げ物を調理中
 に起こるいわゆる「天ぷら油火災」を防止するための調理油過熱防止装置が
 業界の自主的な努力により付けられるようになりました。この安全装置が普
 及し、使用されるようになれば、「天ぷら油火災」は少しでも減るのではな
 いかと思っています。

◇自主的に安全装置を付ける例が出てきたことについては、国が安全規制によ
 って義務づけしているやり方からすると時代が変わったなと感じます。NI
 TEの誤使用事故防止ハンドブックは、事業者に製品設計を行う場合などに
 「スリーステップ・メソッド」(注1)や「リスク・アセスメント」(注2)を
 するように勧めています。このような消費者の安全を重視した実例が多数で
 てくるものと期待しています。
 (注1)本質安全設計、保護装置による安全確保、消費者に対する情報提供
     による安全確保の順位で製品安全対策を検討すること。
  (注2)製品のどの部位に危険が存在し、その危険がどの程度であるか特定
     ・評価すること。

◇現在、経済産業省では階層的製品安全規格体系の整備が検討されています。
 本体系の考え方は、やはり、リスク・アセスメントの実施とスリーステップ
 ・メソッドが前提であり、かつ最高レベルの基準を求めています。事業者が、
 自己責任原則のもと製品のリスク・アセスメントを行い、可能な限り安全に
 配慮した製品を開発流通する時代がやがてくるのではないかと感じさせます。

                              < R.H > 

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                目次 
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1.消費生活用製品の事故防止について
    第9回「誤使用事故防止の考え方のポイント」
2.事故情報 
   ・消費生活用製品の事故情報収集状況(10月17日~10月28日受付69件)
   ・石油ストーブの事故
   ・昨年12月に発生した事故の傾向
   ・消費生活用製品以外の事故(1件)
3.社告情報(2件)
4.関係機関の製品安全情報
   ・「安全工学の基礎講座」
    ~安全原則を現場実践に活かす手法を考える~(有料)
                    明治大学リバティ・アカデミー
   ・生活用品PLセンターインフォメーションを発行
                        生活用品PLセンター
5.編集後記
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        1.消費生活用製品の事故防止について
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       第9回 「誤使用事故防止の考え方のポイント」

◇(12)「リスク低減の優先順位」
 ・リスク・アセスメントの結果、許容できないと判断された場合のリスク低
  減の優先順位をa.~c.に示す。現在のISOの国際安全規格等においても、
  安全対策の優先順位が採用されており、この手順は「スリーステップ・メ
  ソッド」と呼ばれ、製品を設計する際の世界的な常識となっている。

   a.本質安全設計
    設計段階で、ハザードを完全に除去、又は、ハザードを許容可能なリ
   スクの範囲内に納めるよう以下のように設計する。
  (人が手を切る可能性がある鋭利な部分)→安全に加工する。
  (差し間違えによる危険性が存在する複数のコネクタ)→それぞれの差し
   込み口の形状を変え、差し間違いが起こらないようにする。
  (高温による火傷の可能性がある部位)→温度を設計段階から下げる。
  (手指が挟まる危険性がある箇所)→ユーザの手指の寸法を考慮した構造
   に変更する。

  b.保護装置による安全確保
    本質安全設計によるハザードの除去や低減が困難な場合には、次の手
   段として以下の例のような「保護装置による安全確保」を検討する。
  (高温による火傷の可能性がある部位)→ユーザが直接触れないようカバ
   ーする。
  (高速で回転するため手が巻き込まれる部位)→ユーザがハザードに近づ
   く可能性を除去する手順を踏まないと回転が始まらない設計に変更する。

  c.消費者に対する情報による安全確保
    a.及びb.の手段を講じることが困難な場合、又は、講じてもリスクが
   残る場合に対しては、本体表示、取扱説明書等により、製品のリスクに
   関する警告や注意の内容及びリスクの回避策を消費者に伝達する。

                                                     < S.N >

        ※「消費生活用製品の誤使用事故防止ハンドブック」より
                          (第10回に続く)
    ☆前回までの記事はこちらです→ http://www.jiko.nite.go.jp/psm/ 

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              2.事故情報
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◆◆◇ 消費生活用製品(*)の事故情報収集状況
                (10月17日~10月28日受付69件) ◇◆◆

 NITEに通知のあった事故情報を傾向として集計しています。
(件数の多い順に5製品)なお、事故原因については現在調査中です。
                 
    製品名(事故状況と件数)        [前号比(件数±)]
  =============================================================
  1. ガスこんろ    (火災 17件)      [+ 8]
  2. 四輪自動車    (火災等 6件)      [+ 1]
  3. 石油ストーブ   (火災  4件)      [+ 4]
  3. 電気ストーブ      (火災  4件)      [+ 2]
  5. 配線器具     (火災  3件)       [+ 3]  
  5.ふろがま     (火災  3件)      [+ 2]
  5.エアコン     (火災  3件)      [+ 1] 
 
  (*)消費生活用製品:一般消費者が生活において使用する製品。

◆◆◇ 石油ストーブの事故 ◇◆◆

 前号のハロゲンヒーターに引き続き、暖房器具を取り上げます。石油ストー
ブの事故は、NITEに毎年多く事故情報が通知されています。

◇平成15年度、平成16年度にNITEに通知があって、調査が終了してい
 る石油ストーブに関連した事故件数は以下になります。
      
     ・平成15年度 125件
     ・平成16年度 128件
  
◇事故原因別でみると、消費者の誤使用・不注意による事故が8割を超えます。
 (以下参照)   
      〔事故原因〕        2003   2004 (件)
     …………………………………………………………
          消費者の誤使用・不注意  104(83%) 107(84%) 
     原因不明         21(17%)   21(16%)  

◇消費者の誤使用、不注意による事故の事例を紹介します。

 (1)可燃物に引火 
  ・干していた洗濯物が石油ストーブの上に落下し、ストーブの火が引
   火した。
  ・石油ストーブをつけたままうたた寝をしていたところ、ストーブに
   寝具等の可燃物が接触し、出火した。 
 (2)給油時の不注意
  ・石油ストーブを消火しないで給油、カートリッジタンクの口金がき
   ちんと締められていなかったため、セットする際にこぼれた灯油に
   ストーブの火が引火した。
 (3)灯油以外の燃料を給油 
  ・灯油と間違えてガソリンを給油したため、異常燃焼を起こして出火
   した。

  消費者の誤使用、不注意による事故は、大きく分けると、(1)のような、
 石油ストーブ近くの可燃物(洗濯物・布団・カーテンなど)にストーブの火
 が引火して起こった火災事故と、(2)のような、給油時の不注意(点火した
 まま給油・カートリッジタンク口金の締め付けが不完全など)で、こぼれた
 灯油に引火して起こった火災事故があります。この2つで、消費者の誤使用、
 不注意による事故の7割を超えます。
  その次に、(3)のような、灯油と間違えてガソリンや混合油を給油して起
 こる異常燃焼による火災事故が続き、その他に、燃焼筒がきちんと装着され
 ていなかったことによる異常燃焼による事故などがあります。
 
【参考】事故情報特記ニュース 
 No.53 石油ストーブや石油ファンヒーターを使用するにあたって
     (注意喚起)
     http://www.jiko.nite.go.jp/news/053/news53.html

・・・‥‥…………………………………………………………………‥‥・・・
◆◆◇ 昨年12月に発生した事故の傾向 ◇◆◆ 

 平成16年12月発生の事故は、168件中、74件(約44%)が『燃焼
器具』の事故でした。その次に、『家庭用電気製品』59件(約35%)、
『乗物・乗物用品』16件(約10%)でした。石油ストーブの事故が30件
になり、昨年11月の同製品事故の2倍近くに増えています。

・・・‥‥…………………………………………………………………‥‥・・・
◆◆◇ 消費生活用製品以外の事故でこんな事故がありました ◇◆◆

◇『ブランコで遊んでいた小学生が指を切断』    (10/16・大阪府)
 公園のブランコで遊んでいた小学生が、転落して左手小指の指先を切断した。

■━━事故情報の検索━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
 
  NITEのHPでは、調査が終了した事故情報を検索できます。
  http://www.jiko.nite.go.jp/php/jiko/index.html

■━━製品の事故情報をお寄せください━━━━━━━━━━━━━━━━■

  NITEでは、暮らしの中で起こった製品の事故情報を集めて調査し、
 その結果を公表して製品事故の未然・再発防止に役立てています。
 
 【事故情報収集制度概要】 http://www.jiko.nite.go.jp/index2.html
 【通知様式】 http://www.jiko.nite.go.jp/index10.html(Word版・PDF版)
 【送付先】 mailto:jiko@nite.go.jp Fax 06-6946-7280
  【問い合わせ先】 mailto:jiko@nite.go.jp

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              3.社告情報
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 ◇平成17年10月21日 ヤマハ株式会社 「キーボード」
 高温時での使用の際、電源投入後に本体が起動せず稀にスピーカーおよびヘ
ッドホンから大音量ノイズが発生する場合があり、このノイズを聞いた場合、
人によっては聴覚障害をおこす恐れがある。(無償で修理)

◇平成17年7月8日 株式会社ミスターマックス 「アルミ鍋」
 ガラス蓋が破損するという不具合が数件発生している。(無償で製品交換)

■━━━NITE社告情報のページ━━━━━━━━━━━━━━━━━━■

 【過去半年間の社告】 http://www.jiko.nite.go.jp/index4.html
 【社告の検索】 http://www.jiko.nite.go.jp/php/shakoku/search/index.php

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           4.関係機関の製品安全情報
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◆◆◇ 「安全工学の基礎講座」
    ~安全原則を現場実践に活かす手法を考える~(有料) ◇◆◆
                (主催)明治大学リバティ・アカデミー
                (共催)社団法人日本機械工業連合会 
                    株式会社三菱総合研究所
                    明治大学安全学研究所
    
 安全は、技術を中心に、人、モノ、管理、制度等の仕組みを以て、総合的
に実現していかなければなりません。本講座では、モノの設計、使用、管理
の視点から、どの分野の安全にも必須な安全の実現の基礎的、基本的な考え
方を、包括的な観点も踏まえて紹介します。

  第1回 11月10日 安全と技術と社会
  第2回 11月18日 安全における工学的設計 
  第3回 11月25日 安全工学入門
  第4回 12月 2日 安全における人間工学
  第5回 12月 9日 安全活動を活かす製造現場の実践論
            ~「トヨタ生産方式(TPS)」の考え方
  第6回 12月16日 化学物質総合管理への社会的取り組みと科学的方法論
      
 【会場】 明治大学秋葉原サテライトキャンパス
 【時間】 15:00~17:00
 【定員】 30名
 【詳細】 http://academy.meiji.jp/ccs/index.html
 【申し込み・問い合わせ】明治大学リバティ・アカデミー事務局
              E-mail:academy@mics.meiji.ac.jp

              Tel   :03-3296-4423

◆◆◇ 「生活用品PLセンターインフォメーション」を発行
                     生活用品PLセンター ◇◆◆
 
 生活用品PLセンターでは、10月に生活用品PLセンターインフォメーシ
ョンを発行しました。同インフォメーションは4月、10月の年2回発行され
ています。
 【問い合わせ】   生活用品PLセンター Tel:0120-090-671(水曜のみ)
 【ホームページ】 http://www.gmc.or.jp/sodan-pl/index.html 

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              5.編集後記
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 スポーツ中に骨折してから、やっと4週間、配信後にギプスが取れそうです。
こんなに不自由とは思っていませんでした。松葉杖は、階段はもちろんですが、
ちょっとした斜面も意外と怖い。雨の日はそれが倍増します。自分の誤使用
(そのスポーツに適さない靴を履いていて転びました。)ですが、この経験も、
高齢者の事故など、今後のPSマガジンに生かせればと思っていましたところ、
先日、別の課の人から松葉杖への荷重などを測定させてと。ただでは転ばせて
くれない職場です。

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          【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
                  生活・福祉技術センター 業務管理課

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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図