製品安全

特別号 No.1  6月13日号

 ■■■◆        
 ■    ◆========= 製品安全情報マガジン(PSマガジン)========== 
 ■■■◆           PSマガジンは製品安全についての情報を
 ■   ■■■       お届けします。   
 ■  ■               <等幅フォントでご覧ください>
      ■■  ・・・‥‥…………………………………‥‥・・・ 
        ■ 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE・ナイト)
    ■■■        生活・福祉技術センター 製品安全企画課
                    http://www.jiko.nite.go.jp/

==================== 2006.6.13 特別号 ===================


    誤┃使┃用┃事┃故┃防┃止┃シ┃ン┃ポ┃ジ┃ウ┃ム┃
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 NITEでは、去る5月26日(金)、東京牛込箪笥区民ホールで誤使用
事故防止シンポジウムを開催いたしました。少し遅くなりましたが、お越し
いただけなかった方のために、特別号としてその概要をお届けすることにい
たしました。
 当日は308名の方々にご参加頂き、開催することができました。開会に
あたり、NITE御園生理事長より挨拶をさせていただき、経済産業省商務
情報政策局消費経済部長谷みどり氏より来賓挨拶を賜りました。シンポジウ
ムでは「講演」「討議」「パネル展示」が行われました。それぞれの概要を
ご紹介いたします。シンポジウムの様子、まとめなどは、NITEホームペ
ージでご紹介していますので、ぜひご覧ください。
         → http://www.nite.go.jp/jiko/symposium/sympo.html

 また、この場をお借りして、特別講演、パネリスト、パネル展示でご協力
いただきました皆さまに厚く御礼申し上げます。

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            挨拶(概要)             
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 ◇主催者挨拶
   独立行政法人製品評価技術基盤機構 理事長 御園生 誠

 NITEは、平成18年4月から「安心を未来につなぐNITEです」をス
ローガンに、第2期をスタートしました。これは、「未来にわたってくらしの
安全・安心を支え、明るい未来を開きます。」という、国民のみなさまへのN
ITEからの意思表明でもあります。NITEが昨年度収集した事故件数は、
3,000件近くに達しております。平成12年度から平成15年度までの総
件数5,188件について分析いたしましたところ、誤使用による事故は製品
事故の約3分の1となっております。また、製品の不具合による事故に比べ、
死亡、重傷に至る件数が極めて多いこともわかりました。NITEは、誤使用
事故防止の必要があると考え、早稲田大学小松原先生を中心に委員会を設置し、
昨年5月に誤使用事故防止ハンドブックとして公表いたしました。また、ハン
ドブックの考え方を普及すべく説明会も行ってまいりました。本日のシンポジ
ウムは、昨年から取り組んできた誤使用事故防止活動の総括であります。本シ
ンポジウムの開催により、誤使用事故防止の考え方について関係者のご理解が
深まることを希望するとともに、普及啓発に資するものと考えております。み
なさまからの積極的なご参加を賜り、意義のあるシンポジウムにしていただけ
ればと存じます。

 ◇来賓挨拶 
   経済産業省商務情報政策局消費経済部長 谷 みどり氏 
 
 最近、NITEに年間3,000件近く事故情報が寄せられています。各方
面の方にご努力いただいていますが、事故はまだまだ減りません。少子高齢化
も、誤使用の観点から考えるとひとつの要素かもしれません。高齢者にとって
ご本人の努力でできないこともあります。少子化における子どもの事故は社会
にとっての悲劇です。こうした事故を防ぐために、行政が取り組んでいること
を4点ご紹介いたします。第1点に、試買テスト、立ち入り検査などによる製
品安全に関する法律の適切な執行、第2点に、規格を階層的な体系に整理し直
すなど、製品安全体系をより明確なものとするよう引き続き検討する、第3点
に、グローバルに製品安全を確保するため海外諸機関との連携を図る、第4点
に、製品事故の情報収集、分析に一層力を入れ情報提供の充実を図る。
 「誤使用を消費者が悪いで片づけない」、こういった姿勢は必ず消費者の支
持を得ることができると思っています。日本でこそなし得る安全設計、品質管
理、日々の消費者とのコミュニケーション、事故対応も含めた様々なご努力の
中で、「この企業だと信頼できる」という消費者の支持を得る企業が一社でも
増え、消費者の支持が少しでも強まることによって、日本の国民の事故を防ぐ
とともに、そのことが、日本のものづくり、サービス産業も含めて、日本の経
済の明日を築くこととだと思っています。
 
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               講演(概要)             
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           ◆◆◇ 特別講演 ◇◆◆           
               
 ◇「誤使用事故とヒューマンエラー」
       小松原 明哲 氏(早稲田大学理工学部教授)
 
 製品誤使用は、メーカーがして欲しいことと消費者がしたこととのミスマッ
チであり、一種のヒューマンエラーといえる。
 ヒューマンエラーにはいくつかのタイプがあり、たとえば、(1)偶発的接触、
(2)加齢に伴う能力低下による力負け、(3)取り違い・思い違い、(4)失念、
(5)知識不足や、(6)軽率行為(手抜き)などがある。
 (1)~(5)は本人が起こそうとして起こしたものではないが、(6)は、
よくないことは知りながら”まあいいか”という気持ちで起こしてしまうもの
で、意図したエラーといわれる。製品誤使用を防止するには、当該製品を、い
つ、どこで、だれが、どのように使用し、そのときにどのようなヒューマンエ
ラーが起こる恐れがあるのかを推定し、的確な対策を講じる必要がある。こう
した取り組みを場当たりではなく、システマティックに進める手順を示すもの
が、リスクアセスメントのプロセスとなる。設計対応をしても残留してしまう
軽微なリスクは警告表示や取扱説明書で対応することとなるが、これらの媒体
は、消費者に明確に伝わり、誤解の生じないもの、そしてきちんと守ろうとい
う気にさせるものを作成しなければならない。取扱説明書は警告表示は、書い
ておけばよいというものではない。以上まとめとして、消費生活用製品におい
ても、リスクアセスメントを確実に行うこと、そしてそのためには、ヒューマ
ンエラーなどの人間の特性を正しく知ることの必要性を強調したい。

 ◇「誤使用事故とPL」
       升田 純 氏(中央大学法科大学院教授)
 
 製造物責任法では、第3条にあるように、製造物の欠陥によって他人の生命、
身体又は財産を侵害したときに、その責に任ずるとなっている。ここでいう製
造の欠陥は、第2条第2項によると、製造物の特性、その通常予見される使用
形態、引き渡した時期、その他の事情を考慮し、通常有すべき安全性を欠いた
ものであるといわれる。これらの要件を考慮の上、欠陥の有無が判断される。
 誤使用は、欠陥の存在と相反する事情として主張されることが多いが、法律
上、誤使用の位置づけは規定されていない。誤使用は、通常の使用方法を逸脱
した使用であると定義される場合もあるが、様々な定義が存在する上、誤使用
が問題になる場面ごとにさまざまな意味で使用されているため、多義的であり、
明確でない。
 誤使用の取扱い、位置づけについて、「リフト事例」「フロント・サイドマ
スク事例」「カテーテル事例」など裁判例によって概観した。誤使用は、現状
においては、明確さを欠く用語であり、濫用と混乱をもたらしている。これら
の混乱を克服すべく議論をすることが有意義である。

            ◆◆◇ 講演 ◇◆◆                         

 ◇「誤使用事故の事例について」
       長田 敏(製品評価技術基盤機構)

 NITEが収集、調査した事故情報について、事故件数の上位製品について
概観したほか、全事故に占める誤使用事故の割合、誤使用事故を起こしやすい
製品などについて解説した。消費生活用製品、家庭用電気製品、燃焼器具それ
ぞれについて、年齢における誤使用事故の傾向と事故原因の解析結果を提示。
消費生活用製品や燃焼器具では、年齢とともに誤使用や不注意による事故件数
が増加する傾向があり、家庭用電気製品では、50才代における誤使用や不注
意における事故件数が最大となっていた。 
 また、キッチン・ダイニングなど、生活の場面における誤使用事故事例を紹
介しながら、どこに危険が存在するのか、警告表示以外の安全対策はあるか、
安全装置を付けることは可能かなどについて検討し、今後の誤使用事故につい
ての対応例を紹介した。

 ◇「誤使用事故防止の考え方」
       新井 勝己(製品評価技術基盤機構)

 事業者と消費者がそれぞれ正しいと考える使用方法にギャップがあり、この
ギャップが誤使用とされる。この部分について事業者は積極的に具体的防止対
策が講じてこなかった。誤使用防止対策品などの例からみても、事業者が対応
することで誤使用を防ぐことが可能となるものもあり、PL判例などでも事業
者が対応すべきとされる事故もある。その上で事業者が対応すべき誤使用の範
囲を考えた。
 誤使用のうち非常識な使用方法を除いた部分を予見可能な誤使用とし、この
部分について事業者が対応すべきであるとし、その具体的対応例を解説した。
最後に、誤使用防止対策は、設計、製造、検査、安全部署それぞれ独立したも
のではなく組織が一体となって取り組むことが必要であるとの提言を行った。

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               討議(概要)
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 ・パネルディスカッション「何故人間は誤使用事故を起こすのか」
 ・フリーディスカッション、まとめ「誤使用事故防止はどうあるべきか」

 ◇司会 
  升田  純 氏(中央大学法科大学院教授)
 ◇パネリスト
  小松原明哲 氏(早稲田大学理工学部教授)
  長見萬里野 氏(財団法人日本消費者協会参与)
池田 仁士 氏(財団法人家電製品協会技術関連委員会安全情報WG主査)
折戸三喜雄 氏(社団法人日本ガス石油機器工業会ガス安全啓発WG主査)
  長田  敏  (製品評価技術基盤機構)

 パネリストの自己紹介とこれまで仕事上などで関わった誤使用事故を紹介す
ることからパネルディスカッションがスタートしました。「人は何故誤使用を
起こすのか」「誤使用事故のすべてが消費者の責任か」「誤使用事故が発生し
たとき事業者はどこまで対応すべきか」「誤使用事故を防止する観点での、消
費者団体、事業者、研究機関、NITEの役割」と、次々に討議を重ね、会場
からご意見もいただきました。最後に、司会の升田先生から、まとめが読み上
げられ、約1時間半にわたる討議が終了しました。

          ◆◆◇ パネリストより ◇◆◆
 
 早稲田大学理工学部教授 小松原明哲氏
………………………………………………‥‥・・・
 製品誤使用に興味を持つようになったのは、ある民事裁判の鑑定人をしたこ
とがきっかけ。ホテルのサウナ風呂の炉にお客さんが落ちて火傷し、被害にあ
った方がホテルを相手取って工作物責任による損害賠償を訴えた。そこで求め
られたのが、被害にあった方の被害に至ったいきさつと、炉の安全柵の適切性
を鑑定すること。これを契機に、人間工学の観点から製品安全に携わることに
なった。
 「人はなぜ誤使用を起こすのか」と言ってしまったとたんに、実は話しが進
まなくなる。例えば電気製品のコードを束ねて使用するのは誤使用だが、その
人は、コードがバラけていると、美観を損ねるし、足元も悪くなるから束ねた
のかもしれない。つまり、誤使用、と決め付ける前に、なぜ人はその状況でそ
のように製品を使ったのかを淡々と明らかとすることが大事である。
 製品誤使用は、消費者の責任か事業者の責任か、ということについて。これ
は製品に求められる安全水準ということである。これは技術が決めることでは
なく、社会が決めること。時代や国により求められる安全水準は変わってくる。
「女工哀史」に、ボール盤で手をつぶしたときに、保証金をもらえないだけで
なく監督に叱り飛ばされたとの記述がある。しかし今はもちろん違う。企業は、
今までと同じ気持ちでいてはだめ。よりいっそうの安全な製品を供給する努力
を続けなくてはならない。
 製品安全について、研究機関としての役割は、個別の安全技術の開発、基本
的な安全の方法論や考え方を研究開発すること。そして教育機関としては、学
生のみならず、企業、消費者に対して、それを供給(教育)すること。このと
きにはその教育のためのテキストなどのツールや、研修講座などを開発し、提
供することが役割と感じている。

 財団法人日本消費者協会 長見萬里野氏
………………………………………………‥‥・・・
 消費者相談などに携わり印象にあるのが、30年以上前の小型ガス湯沸器が
普及し始めた頃に相次いだCO中毒死事故。換気をしなかったり、ホースを引
いて浴室に使用したりしたことが原因。製品の改良や換気への注意喚起が必要
だと要求したが、当時は行政も業界も「火を燃やせば酸素がなくなることは中
学でも習っていること」という対応だった。このように「誤使用は全部消費者
の責任」と言われていた時代が長くあったが、PL法の制定以降、誤使用を真
剣に考えてもらえるようになった。時代が変わり安全へと向いていることは、
私たちにとっても画期的なことだ。
 誤使用が起きるのは、コードを束ねるとなぜいけないのかそういったことが
知られていないことが問題。誤使用に消費者の責任というのは少ないと思う。
事業者は可能な限り改善策を考えて対応していただきたい。業界の方から改善
点の話を聞くが、改善にずいぶん時間がかかり過ぎている。例えば、石油スト
ーブの給油タンクは、高齢者にとって使用するのは難しいと以前から提案して
きた。
 消費者団体の役割は、消費者への教育や啓発であるが、小冊子や講座をして
も「安全」は人気がない。学校教育も検討したが、安全といえば「交通安全」
と言われ、入る余地がない。今後は、世論を作っていくような、マスコミを動
員する形にならないものかと考えている。

 財団法人家電製品協会 池田 仁士氏
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 主な家電製品を扱う事業者団体の主要三工業会(社団法人電機工業会、社団
法人電子情報技術産業協会、社団法人日本冷凍空調工業会)の事故情報を収集、
分析し、事業者へフィードバックすることを通じて安全な製品を作るための活
動を行っている。誤使用については誤使用区分情報を分析し、誤使用防止事典
を作成して実際に設計の中に反映していくことも行っている。
 誤使用事故に占める家電製品の割合は大体20%といったところ。誤使用事
故を分析すると、熱器具(電気ストーブ、電気あんか、電気こんろ、電気こた
つ等)が多くなっている。また配線器具類も多い。家電製品が家中にあふれ便
利になったが、道具の有り難みを感じなくなっている。便利な道具として大切
に使ってもらえば、誤使用事故も少なくなるはず。取扱説明書も読まずどんど
ん使ってしまう。実態調査でも取扱説明書を読んでいないとの結果がある。安
全対策にはコストがかかるが、それが認められる社会風潮になってほしい。誤
使用だと言い切りたいところでも、事故を分析し製品で対応出来るところは対
応してきているし、それは続けるべきだと思う。誤使用防止対策ということで
は、買い換えで商品が一巡するまではなかなか行き渡らないのが現状。ヒヤリ
ハットの事例を300件ほど集めたことがあるが、それによれば、「隠れる危
険」「忘れる危険」「繰り返す危険」がある。「隠れる危険」や「忘れる危険」
などは消費者等に広くこういう危険もあると伝えなくてはならないし、「繰り
返す危険」などは逆に、消費者からこんな危険があると指摘して貰うことも必
要と思っている。つまり、一方的な対応ばかりでなく、事業者・消費者・公的
機関(政府・公共団体・教育機関・マスコミ等々)が三位一体となって対処し
ていかねばならない。警告表示についてはマークをつけて認識を深めたいと思
っているが、まだまだ認知度が低く、啓発活動を広めたいと考えている。技術
的改善への対応として、事故情報の分析のためには、事故の具体的な中身まで
踏み込んだものを収集するのが難しく、今後とも皆さまのご協力をいただきた
い。

 社団法人日本ガス石油機器工業会 折戸三喜雄氏
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 石油ストーブの品質向上と安全性の機能向上について、給油タンク装着の時
の信頼性を上げるべく改善した事例が3点ある。ひっくり返さなくても上から
給油できるタンク、キャップを閉め忘れても漏れないタンク、ねじ式でなくワ
ンタッチで閉めるタイプである。また、長見先生のご意見にあった小型湯沸器
の誤使用については、不完全燃焼防止装置を組み込んでおり、不完全燃焼が起
こると停止するようになっている。 ただ、人間の心理からか、不燃防が作動
して燃焼停止すると、再度点火動作をしてしまうようで、不完全燃焼したまま
再点火を繰り返して事故になった事例も出てきており、対策として再使用でき
ないようにするなどのハード側で対策をした。また、啓発チラシも見直した。
調理器の関係では昨年の8月以降、2口、3口のガスこんろについて1個以上
の天ぷら油過熱防止装置の装着を業界で決め、全メーカーで装着している。ま
た、燃焼機器は普段何気なく使っているが、素朴な疑問に対して「ガスと燃焼
機器に関するQ&A」という冊子を作ったり、チラシなどにより安全啓発をし
ている。
 誤使用については取扱説明書を読まれないことに問題があると考える。賃貸
住宅等には燃焼器具が始めから設置されており取扱説明書がわからない場合も
ある。そういう中で私たちはどうやって誤使用事故を減らしていくのかという
ことを考えていかなければならない。
 一方、最近はIHこんろの普及で、火を知らないで育つ子ども達が増えてい
るのではないかと危惧している。学童教育の必要性を考えて活動してきたが全
く成果はゼロ。誤使用事故防止にメスを入れるためにも、事故情報の分析を正
確にしなければいけないと考えている。

 製品評価技術基盤機構 長田 敏
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 印象にある誤使用事故は2つ。1つはガスこんろの天ぷら油火災事故。1週
間に1件以上はこの事故報告がある。鍋底をセンサーで検知して250℃にな
ると消火して天ぷら油火災を防ぐ、天ぷら油過熱防止装置を業界の自主基準で
付けるようにした判断はすごいと思う。もう1つは電気こんろの誤使用事故。
ワンルームマンションなどに備え付けられている電気こんろは、使わずに上に
新聞紙など物置にしている場合がある。電気こんろの上に物を置く誤使用に電
源スイッチが回りやすい構造が重なって火災事故が多発した。日本電機工業会
とキッチン・バス工業会でスイッチの取りかえ作業を行っている。
 NITEでは、誤使用事故について、間違った使用を「誤使用」、うっかり
した失敗を「不注意」とし、分析している。人は失敗する動物。誤使用事故は
避けられないと思う。折戸氏から安全対策が一向に改善が進まないという話が
あったが、あきらめないでほしい。誤使用対策は何年で効果がでるのかとの質
問を受けることがあるが10年はかかると答えている。なぜなら買い替えが進
まないからだ。
 誤使用事故で多発するものは何らかの対策が必要。非常識な使用でも警告表
示や消費者教育が必要だ。誤使用事故のすべてが消費者の責任と考えてはいけ
ない。NITEが公開している事故情報のうち、調査結果が原因不明の案件は
内容を詳しく記載していない。事象がわかる案件について詳しく書いてあった
らもっと有益だとの指摘を受けたことがある。NITEとして、事業者の皆さ
んがリスクアセスメントする上で、役立つ情報にしていく必要があると考える。
また、NITEは人間特性データベースを公開している。安全対策にご活用い
ただくよう周知をはかっていきたい。

         ◆◆◇ 会場からのご意見 ◇◆◆

 「取扱説明書の作成をしている。取扱説明書は買ったときは見るが、その後
はほとんど見られない、ましてや買った人以外がみるかどうか。それに対して
どこまで安全性を委ねたらいいか考えると、抜本的に変える必要があるのでは
ないかと思う。また、安全についてのページが多すぎる。必要ないものが多す
ぎて肝心なところがわからないのではないかと気になっている。」

 「消費生活センターの相談員をしている。取扱説明書はやってはいけないこ
とが一番最初にでてくる。いけない、いけないと書いてあるがその理由は書い
ていない。これでは消費者が読まないのは当たり前。まずは使い方を書いて、
いけないことを読んでから使って下さいとする必要があるのではないか。相談
であった事例だが、消費者の誤使用という結果になり、相談者もそれに納得し
た。その上で相談者が「ここをこう変えたらこの事故は起こらなかったのでは
ないか」と図にされた。メーカーに真摯に見て頂きたいと申し出たところ、
「受け取れば社内の全部署に回さなければいけない、設計に取り入れればパテ
ント料をよこせといった話になる」と受け取りを拒否された。最近は消費者の
権利意識が強くなってきているが、消費者の言葉のひとつひとつを受け止めて
いくことで事故は防げるのではないかと思っている。」

 「知っている消費者と知らない消費者があるので、問題を解くことなどでラ
ンク付けして、マニュアルをほとんど読まなくていい人、全部読んでいい人な
どとしてはどうか。ゲーム的な要素を入れると自分のランクを上げようと勉強
してくれるのではないか。」 

 「家電製品に関わるヒューマンエラーを摘出する手法を教えて欲しい。なけ
れば開発して、標準化していただきたい。それを品質システムの中のひとつの
手順として入れるようにすると、事故が減るのではないかと考えている。」

 「誤使用事故は、消費者の責任は少ないという意見もあったが、一方でNI
TEの事故原因区分では誤使用となっている。」

           ◆◆◇ 司会者より ◇◆◆

 中央大学法科大学院教授 升田純氏
…………………………………………‥‥・・・
 製品は消費者のために提供されるものだが、消費者と事業者の間のコミュニ
ケーションがあまり十分ではないように思う。取扱説明書もディフェンスのた
めに考えるという面があるが、基本的にはコミュニケーションのツール。相手
の立場をおしはかりながらコミュニケーションしないといけない。自分の立場
で言い合うことは、裁判のそれぞれの主張にしか過ぎないし、社会で訴訟をす
るわけではない。それぞれの立場で試行錯誤でやっていただければいいと思う
が、基本的にそういう部分がかけているのではないか。事故情報は公共財。こ
のシンポジウムで、コミュニケーションギャップが埋まっていない現状の認識
を十分行うことができ、将来への取り組みの方向性が見えたのではないだろう
か。
            ◆◆◇ まとめ ◇◆◆

 NITEホームページでご紹介していますので、こちらをご覧ください。  
     → http://www.nite.go.jp/jiko/symposium/sympo.html#tougi

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               パネル展示           
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 受付ロビーに、各機関のご協力で誤使用防止対策を施された製品や取り組み
を紹介したパネルを展示いただきました。

 パネル展示の様子はこちらから 
   → http://www.nite.go.jp/jiko/symposium/sympo.html#paneltenji
    
         ◆◆◇ 各機関の展示内容 ◇◆◆
 
 ◇社団法人電子情報技術産業協会 
      http://www.jeita.or.jp/japanese/index.htm
  ・AVリモコン
   →電池がマイナス端子からしか装填できない逆装填防止設計
   →幼児が電池ぶたを開けるのを防ぐため、2-アクション構造
      電池ぶたを(1)下方に押しながら、(2)引いて開ける
  ・オープンタイプのテレビラック
   →割れにくく、万一割れても飛散しないよう、強化ガラスに飛散防止
    フィルムを貼った棚板ガラスを採用 
   ……………………………………………………………………………………
    「強化ガラスは割れると粒状になって飛散する特性があります。万一
   割れた場合、そばにいる人が飛散したガラスを踏んで足を切ったりしな
   いように強化ガラスに飛散防止フィルムが貼られています。会場では、
   テレビモニターでガラスに金属ボールを落として割れても破片が飛散し
   ない様子を映像で紹介するとともに、実際に割れたガラスも展示されて
   いました。」
 
 ◇社団法人日本ガス石油機器工業会 http://www.jgka.or.jp/index.html
  ・天ぷら油過熱防止装置付きガスこんろ
   →センサーが鍋底の温度を直接検知して、250℃になると自動的に
    消火し、天ぷら油火災を防ぐ
   ……………………………………………………………………………………
    「家庭用2口、3口ガスこんろは1個以上の調理油過熱防止装置を付
   けるよう昨年4月から業界の自主基準で定め、現在販売されているガス
   こんろにはこの装置が付けられています。同装置付きのガスこんろはこ
   れまでも販売されていましたが、センサー付きのガスこんろを使用して
   いるのに、センサーの機能を知らないでセンサーが付いていない側のバ
   ーナを使用して火災になってしまうケースもあり、チラシを梱包して周
   知を図っているとのことです。」
  
 ◇社団法人電池工業会 http://www.baj.or.jp/
  ・逆装填通電防止対策をしたアルカリ電池
   →逆装填(数本のうち1本のみ誤って逆装填した場合充電される)によ
    る液漏れ化学火傷事故を防ぐため、逆装填しても充電されない対策。
   ……………………………………………………………………………………
    「電池をいくつも装填する場合、誤って1本だけ逆にしてしまう場合
   が電池側で対策しているのが、展示していただいた電池。対策は2種類
   で、ひとつは負極端子に絶縁突起を設ける方法(見ると小さな突起が3
   つ付いています)、もうひとつは負極端子と外装の間に絶縁リングを入
   れる方法です。」

 ◇社団法人日本電機工業会 http://www.jema-net.or.jp/
  ・掃除機
   →指などの巻き込み防止のためヘッドを上げると停止するパワーブラシ
  ・加湿器
   →スチームで火傷しないよう、「チャイルドロック機能」「蒸気温度の
    表示」「警告表示」を装備
   ……………………………………………………………………………………
    「NITEの事故情報にも、掃除機のパワーブラシに子どもの指が巻
   き込まれて負傷した事故があります。ヘッドを上に向けたり、床から離
   すとパワーブラシが停止します。」     
  
 ◇社団法人日本農業機械工業会 http://www.jfmma.or.jp/
  ・歩行型除雪機
   →転倒よる巻き込まれ事故などを防ぐため、手を離すと機能が停止する
    装置「デッドマンクラッチ」を装備
   ……………………………………………………………………………………
    「昭和61年に発足以来様々な安全装置を確保するため、デッドマン
   クラッチを標準装備されているとのこと。除雪作業中に滑って転倒し挟
   まれたりひかれたりして負傷した事故、安全装置を解除して使用したた
   めに、雪が詰まって停止した回転部分に手を入れて指を切断した事故な
   どがあります。工業会では、チラシ等を作成して注意喚起を図っている
   とのことです。」
  
 ◇社団法人人間生活工学研究センター http://www.hql.jp/
  ・誤使用事故をめぐる課題の中には、「人間(ユーザー)」や「生活」に
注目することで解決できるものが数多くあります。人間生活工学や人間
   中心設計のプロセスの実践は、生活者が安心して使える安全で快適・便
   利な製品開発に大いに役立ちます。

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                編集後記 
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 今年度初めての特別号、急きょ発行することになりました。誤使用事故防止
シンポジウムは、私たちが思っていた以上のお申し込みをいただき、定員を増
やし対応しましたが、それも超えてしまいました。お越しいただけなかった皆
さまに少しでもシンポジウムの様子をお伝えしたいと今回の発行になりました。

・・・‥‥…………………………………………………………………‥‥・・・
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        【編集・発行】 独立行政法人製品評価技術基盤機構
                生活・福祉技術センター 製品安全企画課

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独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図