バイオテクノロジー

NBRCニュース 第21号

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NBRCニュース No. 21(2013.6.3)
画像付き http://www.nbrc.nite.go.jp/news/news_vol21.html
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 NBRCニュース第21号をお届けします。今号は微生物あれこれ、微生物の保存
法、NITEが解析した微生物ゲノム、特許微生物寄託のイロハの4つの連載記事
をお届けします。最後までお読みいただければ幸いです。

(等幅フォントでご覧ください)

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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株(2013年3月20日~5月20日)
 2.微生物あれこれ(18)
    微生物実験に役立つ書籍の紹介
 3.微生物の保存法(11)
    バクテリオファージの凍結保存法
 4.NITEが解析した微生物ゲノム(10)
    二次代謝産物合成遺伝子データベース(DoBISCUIT)を更新しました
 5.特許微生物寄託のイロハ (2)
    2つあるセンターの一元化とそれらの違い
 6.海外微生物探索へのお誘い
 7.子ども科学センター・ハチラボのお知らせ
 8.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ

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 1.新たにご利用可能となった微生物株(2013年3月20日~5月20日)
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 酵母 22株、糸状菌 8株、細菌 17株、アーキア 2株、微生物ゲノムDNA 1種
類を新たに公開しました。
 
【新規公開株一覧】 http://www.nbrc.nite.go.jp/new_dna.html

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 2.微生物あれこれ(18)
    微生物実験に役立つ書籍の紹介      (伴さやか、村松由貴)
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 連載「微生物の培養法」では微生物の種類ごとに培養テクニックをご紹介し
ておりますが、これはそもそも微生物を扱う事が初めての方や、これから施設
や実験室を整えていく方は想定しておらず、ややマニアックな内容になってい
ます(もちろんそういった細やかな情報も、微生物を殺さず育てるためには必
要不可欠なのですが)。そこで今回の「微生物あれこれ」では、微生物を初め
て扱う方や、昔習ったけど忘れてしまった方にも役立つ、微生物実験の基礎を
わかりやすく学べる和書をいくつか紹介させていただきます。

【初めて学ぶ人のための微生物実験マニュアル 第2版 培養から遺伝子操
作まで】安藤昭一 編著、技報堂出版、ISBN978-4-7655-0238-2
 微生物の取り扱いに際して必要最小限の知識がA3版で全146ページのコンパ
クトなボリュームにまとめられています。教科書的に「微生物とは」という概
論から始まるものの、分類の話はそこそこに、必要な設備や道具類について写
真付きで解説されています。実験方法については、培地の作り方;栄養素の調
合からpH調整、オートクレーブ滅菌の方法、植菌から培養、菌数の測定、染色
から種々の観察法、保存やスクリーニング法、更には、組換えDNA実験や植物
(細胞)培養まで列挙されています。この節でも細かに説明写真が添付されて
いるので、非常に理解しやすい内容です。大学生が基礎実験で使う教科書にも
なる本書。タイトルにある通り、微生物を初めて扱う方には最適な一冊ではな
いかと思います。

【新版微生物学実験法】杉山純多・渡辺信・大和田紘一・黒岩常祥・高橋秀
夫・徳田元 編、講談社サイエンティフィク、ISBN4-06-153425-4
 観察法から分離、同定、保存法までが網羅されているのはいずれの書籍も同
じですが、第1章「試料採取法および試料の直接観察法」から始まり、食品、
住環境、水環境、植物、動物を挙げてそれぞれに特徴的な微生物群の解説が付
けられる構成で、食品の衛生管理や工場の品質管理など、より現場に近い視点
から理解しやすく、使いやすい一冊です。更に一歩踏み込んだ中級編まで細か
く丁寧に書かれています。文章量も多く厚い本ですが、ソフトカバーのA4版な
ので、実験しながら隣に広げて使うことができます。

【微生物の分類・同定実験法 分子遺伝学・分子生物学的手法を中心に】
鈴木健一朗・平石明・横田明 編、シュプリングラー・フェアラーク東京、
ISBN4-431-70930-4
 分離・保存した微生物株に、どうやって名前を付ければ良いかわからない方
は多いのでは。DNAを読めばわかるといわれても、どの遺伝子を調べれば良い
のか?配列情報をどうやって調べたら、名前の同定までたどり着けるのか?と
いった疑問に答える内容です。出版されたのが12年前で、日進月歩で進化する
バイオインフォマティクス、データベースなどは内容が古くなってしまってい
ますが、基礎的な事を理解しながら、実験教科書的に使うことができると思い
ます。

【食品微生物検査マニュアル 新版】森地敏樹 監修、栄研器材株式会社、
ISBN4-9901151-1-2
 食品微生物の検査方法を解説した書ではありますが、微生物の基礎知識や微
生物を取り扱う際の一般的な注意事項についても丁寧に記載されています。食
品微生物検査の結果に加え、実験用の道具や機器についても写真や絵入りで紹
介してあるため、初心者でもイメージしやすいです。食品微生物の検査という
ことで細菌が中心になっていますが、実験室の立ち上げから取り組もうとする
人にもよい解説本となるでしょう。

 以下は残念ながら絶版本です。古書店で探していただくしかないのですが、
ご参考までに。

【微生物による生物実験】微生物教材化研究会 編、三省堂
 編者名からわかる通り、この本は理科教材として微生物実験を広めようとい
う意図で書かれています。全編通じて理科実験を想定しており、微生物の働き
や機能を理解する様々な実験がまとめられています。微生物の内容が教科書に
入った今、中学校・高等学校の先生に温故知新としてお勧めしたい本です。

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 3.微生物の保存法(11)
    バクテリオファージの凍結保存法          (藤田克利)
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 バクテリオファージ(ファージ)の保存方法は、微生物同様に乾燥保存法、
凍結保存法と低温保存法があります。乾燥保存法には特殊な機器が必要となり
ます。また、低温保存法はRNAファージの長期保存には不向きですので、今回
は他の微生物でも良く使用されている凍結保存法について説明します。

◆ 凍結保存法
(1) NBRCニュースNo. 8に「微生物の培養法(4)バクテリオファージ」を掲載
  しております。こちらの「復元培養の手順」に従って、ファージを増殖さ
  せ、回収、フィルター濾過します。得られた濾液(平板培地1枚につき約2
  ml)を凍結保存に用います。凍結保護剤としてフィルター滅菌したジメチ
  ルスルホキシド(dimetylsulfoxide; DMSO)を終濃度7%となるように加え
  混合します。
(2) 1.8 ml容の滅菌した凍結保存用チューブに1 mlずつ分注後、ただちに液体
  窒素タンクまたは-80℃の超低温フリーザーに入れて、凍結保存します。
  液体窒素(特に液層)で保存する場合は、インナーキャップタイプのチュ
  ーブを使用します。 

 DMSOの代わりに、滅菌したグリセロールを終濃度20%となるように添加する
ことも可能です。

◆ 凍結保存品の復元法
(1) 室温で凍結保存品を融解します。
(2) DMSOが宿主の生育阻害を引き起こす可能性があるため、融解したファージ
  溶液を10~100倍程度、宿主を培養する液体培地で希釈します。DMSOの代
  わりにグリセロールを用いた場合は、希釈する必要はありません。
(3) NBRCニュースNo. 8の「微生物の培養法(4)バクテリオファージ」に掲載
  している「復元培養の手順」に準拠してファージを増幅させます。

 ファージの中には凍結・融解を繰り返すと生残性が著しく落ちる種もありま
すので、凍結品を複数本作製することをおすすめいたします。

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 4.NITEが解析した微生物ゲノム(10)
    二次代謝産物合成遺伝子データベース(DoBISCUIT)を更新しました
                             (市川夏子)
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 放線菌などの微生物が産生する二次代謝産物は、医薬品開発・ケミカルバイ
オロジー・化合物のデザインなどで注目されています。昨年、NBRCは、微生物
の二次代謝産物の生合成遺伝子クラスターに関する最新情報を広く分かりやす
い形で統合したデータベースDoBISCUIT(ドゥビスキュイ)を公開しました。
今回は一周年を迎えましたDoBISCUITに加えた新しい機能などについてお知ら
せします。
 微生物の産生する二次代謝産物には様々な化合物名が付いています。ダウノ
マイシンにドキソルビシン、グリセオロージンにグリセウシン、それぞれの化
合物の構造式の違いや特徴が直感的に分かりにくいと感じられたことはないで
しょうか。そこで、収録している化合物を構造の似たグループ毎に表示する
「Compound structure list」という機能をサイドメニューの中程に設けまし
た。構造式の一覧を表示することにより、微生物の産生する二次代謝産物は同
じ炭素骨格を持つものでも、糖やアミノ酸の種類や付き方などにより構造に様
々なバリエーションがあることが分かります。こんなにも多様な化合物を作る
ことができる微生物のすごさを改めて感じることができます。
      

Compound structure list (DoBISCUIT)

        
Compound structure list (DoBISCUIT)

 また、DoBISCUITは昨年一年間で5回もデータを追加し、現在80個の二次代謝
産物の生合成遺伝子クラスターの情報を提供しています。更に、日々出版され
る二次代謝産物に関する研究論文の最新情報を追加し、新しい機能が分かった
遺伝子についてはアノテーションを更新しています。この一年間でのべ88個の
二次代謝産物合成クラスターのアノテーション情報を更新しました。これらは
大変な作業ではありましたが、最新の研究論文をフォローすることによって、
二次代謝産物の生合成研究の熱気を感じることができました。
 お陰様でDoBISCUITは多くのユーザーの方々からアクセスをいただけるよう
になって参りました。これからもDoBISCUITを確認していただくだけで、ユー
ザーの皆様が最新の情報を収集できるよう、統合的なサイトを目指して更新を
続けて行きたいと思います。

【DoBISCUIT】 http://www.bio.nite.go.jp/pks/top

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 5.特許微生物寄託のイロハ (2)
    2つあるセンターの一元化とそれらの違い      (大野さやか)
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 今回は、日本に2つある特許微生物寄託機関、特許微生物寄託センター
(NPMD)と特許生物寄託センター(IPOD)の一元化とそれらの違いについてご
紹介します。
 まず歴史的なお話をいたしますと、IPODは1966年に工業技術院発酵研究所、
今の独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)に設立され、1981年にブダペ
スト条約上の国際寄託当局としての業務を開始しました。一方のNPMDは、産業
界からの国内寄託機関を複数化すること、NBRCに特許微生物寄託機能を持たせ
ることの要望を受け、日本で第2の特許微生物寄託機関として2004年に設立さ
れました。皆様もご記憶にあるのではないかと思いますが、2010年に業務仕分
けの手法を用いた行政改革が行われ、公的機関が実施する様々な業務が統合、
縮小、廃止となりました。特許微生物寄託機関も同様に、日本に2つあるのは
無駄ではないかとの指摘を受け、政策的に統合が決まりました。しかし、ブダ
ペスト条約上、2つの機関を統合して一方の機関を廃止するのは、実はとても
大変なことなのです。その理由はいくつかあるのですが、最も大きなものは、
これまでに発行した特許出願に必要な受託番号(NPMDではNITE P-またはBP-か
ら、IPODではFERM P-またはBP-から始まる番号です。P-が国内寄託を、BP-が
国際寄託を表します)を変更しなくてはいけないことです。単に受託番号を変
えるだけ、と思われるかもしれませんが、受託番号は特許の明細書に記載され
ているため、受託番号が変わると、出願者は日本の特許庁をはじめ出願国の特
許庁に対し、明細書の内容について変更の手続きをしなくてはいけません。こ
の手続には多大なコストと労力が必要で、手続をしないと特許が無効となる可
能性もあり、微生物をお預けいただいている方々に悪影響があることが懸念さ
れました。そのため、受託番号を変えなくて済むように2つの機関を残し、
2012年4月にNITEが産総研のIPODの事業を引き継ぎ、2つのセンターを運営する
こととなりました。このような形となったため、今回の件は統合ではなく、一
元化」と私たちは呼んでいます。
 今回の一元化により、両方のセンターで受託していた細菌等と動物細胞の新
規受付をIPODでは終了し、これらの受付はNPMDだけで実施することとなりまし
た。その結果、細菌等、動物細胞、受精卵はNPMDで、植物細胞、種子、藻類、
原生動物はIPODで受託することになりました。ただし、これまでに寄託された
微生物の受託先のセンターおよび受託番号には変更はありません。さらに、昨
年度までIPODは茨城県つくば市で、NPMDは千葉県木更津市で運営をしていまし
たが、2013年4月1日から両方とも木更津市で業務を行っております。
 次回は、実際に特許微生物を寄託いただく手順についてご説明します。

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 6.海外微生物探索へのお誘い
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 ベトナムの微生物探索を希望される方を募集しております。生物多様性条約
に則った共同研究事業にご参加いただき、皆様が直接現地へ渡航して、ニーズ
にあった微生物を探索することが可能です。NITEが現地でのサポートをいたし
ますので、安心して渡航ができます。応募期間は6月28日までです。ご興味が
ございましたら、お気軽に「abs-info@nbrc.nite.go.jp」へお問い合わせくだ
さい。詳細につきましては以下のサイトをご参照下さい。
 また、今年度はミャンマーでの微生物探索を行うため、ただ今、職員が現地
に渡航して実験室を整備しております。公募に関しては今後NITEホームページ
にてお知らせしますので、ぜひご期待下さい。

【詳細】 http://www.bio.nite.go.jp/nbdc/collabo_VN_20130401.html

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 7.子ども科学センター・ハチラボのお知らせ
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 「私たちのくらしをささえる科学」~身の回りの製品に使われた科学技術~
をメインテーマに、NITEが日頃行っている活動を皆様に知っていただくため、
以下の日程で「子ども科学センター・ハチラボ」に出展中です。主に小学生の
お子様を対象に今回はバイオテクロジーおよび化学分野を中心とした展示を行
っています。
 期間中にはワークショップも開催致しますので是非お越しください。

 日程:2013年5月21日(火)~7月7日(日)10:00~17:00(月曜日閉館)
 場所:渋谷区子ども科学センター・ハチラボ
    東京都渋谷区桜丘町23-21 文化総合センター大和田3階
    http://www.city.shibuya.tokyo.jp/edu/bunka/hachirabo.html

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 8.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ
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 以下に出展いたします。お立ち寄りいただいた皆様からのご相談やご質問に
もお答えします。是非お越しください。

日本ケミカルバイオロジー学会
 日程:2013年6月19日(水)~21日(金)
 場所:東京医科歯科大学 
    http://www.jscb.jp/8-8-2.html

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 編集後記
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 今号に出てきましたバクテリオファージっておもしろい形してますよね。初
めて写真を見たときは、「・・・ネジ?」と思ったものです。NBRCニュースの
編集担当になって1年、やっと慣れてきたかなーと言う頃に、産休をとること
になり編集局を少しの間離れることになりました。産前の多少余裕があるであ
ろう時期には、せっかくなので微生物あれこれで紹介された書籍を読破しよう
かな?復帰した際には微生物実験の知識がとびきり豊富な私になってる・・・
かもしれません。かも、の話です。。。(KA)

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 信予定です。

編集・発行
 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
 NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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