バイオテクノロジー

NBRCニュース 第47号

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                      NBRCニュース No. 47(2017.10.2)
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 NBRCニュース第47号をお届けします。今号の微生物あれこれでは微生物を利用した地域
活性化への取り組みについてご紹介します。また前号に引き続き「日本の名古屋議定書対
応」をお届けします。最後までお読みいただければ幸いです。
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 内容
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 1.新たにご利用可能となった微生物株
 2.微生物あれこれ(43)微生物から始める地域活性化
    ~きみつ食の彩りプロジェクト「カラー工房(酵母)」~
 3.日本の名古屋議定書対応(2)遺伝資源国内取得書について
 4.平成29年度NBRC微生物実験講習会のご案内
 5.NITE講座のご案内
    微生物産業イノベーション ~国内外の動向と識別技術の最先端~
 6.発酵を五感で楽しむ展示会に行こう!
    ~千葉県立現代産業科学館 企画展「ちばの発酵」のご案内~
 7.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ

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 1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆ NBRC株、ゲノムDNA
 酵母 15株、糸状菌 15株、細菌 44株、微細藻類 1株、ゲノムDNA 3種類が新たにご利用
可能となりました。
 細菌では、古くから知られているアンモニア酸化細菌 "Nitrosomonas mobilis" の培養
株であるNBRC 112761を公開しました。

【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html

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 2.微生物あれこれ(43)
   微生物から始める地域活性化
   ~きみつ食の彩りプロジェクト「カラー工房(酵母)」~     (竹内史子)
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 突然ですが、皆さんは国が実施している「まち・ひと・しごと創生総合戦略」をご存知
でしょうか。人口減少・地域経済の縮小を克服し、地域創生を進めるための政策です。こ
の政策では、国から全国1270余りの地方自治体に地方創生交付金が配布されていますが、
その活用に向けた参考事例集の中には、これまでNBRCが行ってきた地域振興支援の取り組
みのひとつである「釜石はまゆりプロジェクト」が掲載されています。
 今回はこれをきっかけとした、NBRCと千葉県君津市、千葉県産業支援技術研究所、地元
企業等による地方創生事業での微生物を活用した取り組みを紹介します。 
 始まりは2015年3月のとある日、君津市役所からきた「地方創生交付金事業に協力して
もらえないでしょうか?」との一本の電話。聞けば、日頃から地元の特産品であり、結婚
式などでも人気の花「カラー」のさらなる知名度向上と、カラーという地域資源を活用し
た地域活性化を考えていたところ、地方創生交付金活用の参考事例集を見た君津市職員が
「これだ!」とひらめいたとのことでした。君津市は平成の名水百選にも選ばれた豊かな
湧水に恵まれた土地であり、この湧水を利用したカラーの生産量が日本一であることから
考えたそうです。
 その君津市職員の発想は、そのまま君津市の地方創生交付金事業として採択され、その
熱意により市役所の関係部署はもちろんのこと、NBRCや千葉県産業支援技術研究所、JAき
みつ、カラー農家、君津市立小糸中学校、地元の蔵元などからの協力を短期間で得て、地
方創生交付金を活用した、きみつ食の彩りプロジェクト「カラー工房(酵母)」がスター
トしました。この事業では、カラーの持つブライダルイメージを活かし、カラー由来の微
生物を利用した食品開発による地域の活性化を目指しました。 
 NBRCはカラーからの微生物の分離を担当し、2015年4月から5月に栽培農家にてカラーの
採取を行い、一部のサンプル処理は小糸中学校にも協力をいただいて分離を進めました。
これまで自然界で行った花からの微生物分離に比べ、集積培養での微生物による濁りが少
ない(つまり菌数が少ない)状況で、目的微生物の分離がうまくいくかとNBRCの担当責任
者は胃が痛くなるほど心配していましたが、多様な培地を使い分離を進めた結果、最終的
に酵母(Saccharomyces cerevisiae)10株、乳酸菌およびビフィズス菌(Lactobacillus
属、Lactococcus属、Leuconostoc属、Bifidobacterium属など)32種134株、糸状菌(Geo-
trichum属、Mucor属、Aspergillus属)18株を分離・選抜することが出来ました。今回は
食品開発に利用可能な微生物をターゲットとしたため、特に酵母についてはS. cerevisi-
aeの分離を念頭に置き、麹汁培地やエタノールを添加した培地等を用いました。なお、自
然界からS. cerevisiaeを選択的に分離する方法については、
NBRCニュース第42号「微生物の培養方法(21)」で紹介しています。
 さて、目的の微生物が採れても次に大きな問題になるのが、それが本当に商品を作るた
めに適した機能がある微生物かどうかという点です。そこで食品開発のプロである千葉県
産業支援技術研究所へバトンタッチ。協議のうえ、君津市が千葉県内でも有数の酒蔵が集
中する地域であることから、分離したS. cerevisiaeが日本酒造りに使えるかを最優先と
して機能解析していただきました。その結果、分離した酵母には十分なアルコール生産能
があることが判明し、さらに小仕込み試験が進められることになりました。
 そして2017年5月、ついに日本酒「青葉の風」が発売されました。これは、君津市にあ
る株式会社須藤本家において、千葉県立君津青葉高等学校で育てた酒米「総の舞(ふさの
まい)」と平成の名水百選に選ばれた「生きた水・久留里」、そしてカラーから分離した
酵母を使って仕込んだ日本酒です。現在、この「青葉の風」に使用したS. cerevisiaeNBRC 112968として分譲をしています。 
 NBRCの地域振興支援の取り組みは、微生物を使用した食品開発の支援だけに限らず、全
国の公設試験研究機関等とともに地域産業支援や技術開発支援等も行っています。今後も
微生物に関する技術や知見を活かし、地方自治体、公設試験研究機関や大学等、産学官連
携による地域微生物資源を利用したものづくりを支援していきます。
    きみつ食の彩りプロジェクト「カラー工房(酵母)」
    (写真: 左上:カラーの採取風景 右上:カラーとサンプル培養物
         左下:NBRC 112968光学顕微鏡写真 右下:青葉の風)

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 3.日本の名古屋議定書対応(2)
   遺伝資源国内取得書について            (大野さやか、須藤 学)
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 前回のNBRCニュースでは、名古屋議定書における大きなポイントとして、(1)ある国
において遺伝資源を取得する場合、原則として取得する国(遺伝資源の提供国)から事前
に取得の同意を得て、許可証等が与えられること、(2)提供国以外の国において遺伝資
源を利用する場合、提供国から発行された許可証等の提示を求められる場合があることを
説明しました。また名古屋議定書を担保するために施行された日本のルールであるABS指
針では、日本の遺伝資源の取得に対して国の許可を必要とせず、許可証等は発行されない
ことを紹介しました。
 このことから、日本の遺伝資源を他国で利用する際に、他国から提供国である日本が発
行した許可証等の提示を求められた場合、提示できるものがないことになります。そのた
め、日本で取得したことを示すのに時間と手間がかかる場合が想定されます。
 ABS指針第5章では、このような状況を解消する手段として、日本で取得した遺伝資源に
対して、日本で取得されたことを示す書類(国内取得書)を発給できることになっていま
す。国内取得書は、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業又は環境大臣がその
所管の範囲で認定した機関により発給されます。事業者は、申請しようとする遺伝資源と
その利用用途によって、発給条件が合致する認定機関へ依頼書を提出し申請することで、
国内取得書を受け取ることができます。
 NITEは、この国内取得書を発給する機関としての認定を経済産業大臣から受け、9月25
日から日本を由来とする遺伝資源に対して、国内取得書を発給しています。
 対象となる遺伝資源とその利用用途に対して、NITEが設定した発給条件は以下の通りで
す。国内取得書の発行には全ての項目を満たす必要があります。

 一.原産国が我が国であるもの(注1) 
 二.提供国が我が国であるもの(注2) 
 三.経済産業大臣が所管する事業での利用であること(注3) 
 四.ABS指針第1章第3の2で適用外とされた 食料及び農業のための植物遺伝資源
   の利用でないこと(注4) 
 五.ABS指針第1章第3の2で適用外とされた パンデミックインフルエンザ事前対
   策枠組みに基づく利用でないこと(注4)

  注1 自然界から遺伝資源を採取した場所が日本であること。
  注2 遺伝資源の輸出国が日本であること。
  注3 工業用酵素、工業用原料、試薬、生物触媒の製造等が該当します。
  注4 詳細は、ABS指針とその通知文をご参考ください。

 国内取得書のお申し込み様式等は以下のウェブページで紹介していますので是非ご覧く
ださい。
 【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/global/abs-chap5/index.html

 前号から2回に渡って短期連載「日本の名古屋議定書対応」をお届けしましたが、前号
と今号の内容はもちろん、国内外の遺伝資源へのアクセスについて疑問等がございました
ら、NBRCにて相談窓口を公開しておりますので、お気軽にご相談ください。

 【お問い合わせ】
  ・国内取得書の発給について: abs-chap.5@nite.go.jp
  ・遺伝資源アクセスについて: abs-info@nite.go.jp

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 4.平成29年度NBRC微生物実験講習会のご案内
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 微生物アンプルの復元・培養や微生物の保存方法等に関する講習会を開催します。日本
工業規格(JIS規格)や薬局方に用いられる細菌および糸状菌を用いて、菌の取り扱いに
関する実習を行います。皆様のご参加をお待ちしております。

 日時:1. 平成29年11月10日(金)10:30~17:30
    2. 平成29年11月17日(金)10:30~17:30
    両日程とも同じ内容です。
 場所:製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター
    千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8
 講習内容:微生物アンプルの復元や凍結保存法など(座学および実習)
 受講資格:NBRC株のユーザーあるいは今後使用する予定があり、大学等で微生物の
      取り扱い経験がある方
 募集人数:各回10名(最低履行人数は5名)
      定員になり次第、締め切らせていただきます。
 参加費用:8,500円(税込み)
 申込方法:以下のウェブページに掲載している申込書をダウンロードしていただき、
      必要事項をご記入のうえ、faxあるいはe-mailでお申し込みください。
      https://https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/seminar.html
 募集開始:平成29年10月2日(月)

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 5.NITE講座のご案内
   微生物産業イノベーション ~国内外の動向と識別技術の最先端~
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 微生物の識別技術、微生物の安全性に関する情報や、近年注目されているマイクロバイ
オームをテーマに、微生物産業のイノベーションを支援するNITEの取組みについて、セミ
ナーを開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ちしております。

東京会場
 日時:平成29年12月8日(金)10:00~17:00
 場所:製品評価技術基盤機構
    東京都渋谷区西原2-49-10

大阪会場
 日時:平成30年1月19日(金)10:00~17:00
 場所:製品評価技術基盤機構 大阪事業所
    大阪府大阪市住之江区南港北1-22-16
 
参加費:無料
定員:50名
受付開始:平成29年10月16日(月)

 ※内容の詳細やお申し込み方法につきましては、以下のウェブページをご覧ください。
【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/information/2017_bio-kouza2.html

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 6.発酵を五感で楽しむ展示会に行こう!
   ~千葉県立現代産業科学館 企画展「ちばの発酵」のご案内~
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 NBRCでは千葉県立現代産業科学館が主催する平成29年度企画展「ちばの発酵」に協力し
ています。NBRC職員によるミュージアムトークや普段見ることができない微生物の展示な
どを行います。親子で楽しめる展示になっていますので、ぜひご来館ください。

~企画展概要~
 私たちの身近にある味噌、しょう油、日本酒、ワインなどの発酵食品。これらの発酵食
品は、小さな微生物の働きによって、素材の形が変わり、深い味わいや香りが引き出され
ています。千葉県は、全国の三分の一の生産量を誇るしょう油をはじめ、昔から発酵・醸
造産業が盛んな地域です。発酵のしくみや、私たちの生活や産業に活用される「発酵」に
ついて、わかりやすく紹介するとともに、五感で楽しむことができる展示会です。

 期間:平成29年10月14日(土)~12月3日(日)
 場所:千葉県立現代産業科学館 企画展示室ほか
    千葉県市川市鬼高1-1-3
 入場料(企画展開催中):
     一    般  500円
     高校・大学生  250円
     ◎中学生以下、65歳以上の方、障害者手帳をお持ちの方とその介護の方は無料
 関連イベント:
     ミュージアムトーク
     ・「酵母と私たちの身近な生活とのかかわり」(講師:NBRC 山崎敦史)
       10/14(土)1回目:11:30~ 2回目:13:30~
     ・「カビの生き方と発酵食品」(講師:NBRC 稲葉重樹)
       10/15(日)1回目:11:30~ 2回目:13:30~
     ※ミュージアムトーク以外にもたくさんのイベントがあります。

 企画展の詳細は以下のウェブページをご確認ください。
【詳細】 http://www2.chiba-muse.or.jp/www/SCIENCE/contents/1519536268486/index.html

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 7.NITEバイオテクノロジーセンター展示のお知らせ
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 以下に出展いたします。ブースではお立ち寄りいただいた皆様からのご相談やご質問に
もお答えします。是非お越しください。

BioJapan2017
 日程:平成29年10月11日(水)~13日(金)
 場所:パシフィコ横浜 ブース番号:D-35
    http://www.ics-expo.jp/biojapan/main/

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 編集後記
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 スクラッチという子供向けのプログラミング言語を使ってゲームを作るNHKの番組が4月
から放映されています。子供向けに書店でプログラミング、ホームページ作成の方法を解
説した本を探したところ、絵がふんだんに入った本や、アニメキャラクターがついた本な
ど数多く出版されていることに驚きました。私が子供に購入した本では、ブラウザのイン
ストールから、HTMLでのホームページ作成、最後にはJavaScript(ジャバスクリプト)を
使って占いページを作るところまで詳細に解説されています。いよいよプログラミングが
子供たちに身近になってきた感があります。今後子供たちがどうやってコンピューターと
付き合っていくか楽しみです。(NI)

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 ・画像付きのバックナンバーを以下のサイトに掲載しております。受信アドレス変更、
  受信停止も以下のサイトからお手続きいただけます。
  https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/nbrcnews.html
 ・NBRCニュースは配信登録いただいたメールアドレスにお送りしております。
  万が一間違えて配信されておりましたら、お手数ですが、下記のアドレスにご連絡
  ください。
 ・ご質問、転載のご要望など、NBRCニュースについてのお問い合わせは、下記のアド
  レスにご連絡ください。
 ・掲載内容は予告なく変更することがございます。掲載内容を許可なく複製・転載さ
  れることを禁止します。
 ・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第48号は2017年12月1日に配信
  予定です。

  編集・発行
    独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター
    NBRCニュース編集局(nbrcnews@nite.go.jp)
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お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物資源利用促進課
(お問い合わせはできる限りお問い合わせフォームにてお願いします)
TEL:0438-20-5763
住所:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 地図
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