バイオテクノロジー

スピルリナ属光合成細菌
(Arthrospira (Spirulina) plantensis NIES-39)

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らん藻は、光合成を行い二酸化炭素を酸素に変える有色の微生物です。生育環境や細胞形態の異なる様々な種類があります。今回ゲノム解析を行ったArthrospira (Spirulina) platensis NIES-39株はアフリカの塩湖より分離されたらん藻で、高塩濃度、高アルカリといった過酷な環境で生育することができます。ユレモ科アルスロスピラ属の、俗にスピルリナと呼ばれるグループの代表的な株です。繊維状の形態をとり、窒素固定能は持ちません。このグループはサプリメントを初めとした栄養補助食品・食品添加物・動物飼料として利用されることでも知られています。

ゲノム解析により、ゲノムのほぼ全体の配列を解明するとともに、オプティカルマッピングにより全体像の把握を行った結果、6.8Mbの一本の環状染色体を持つことが明らかになりました。ゲノム配列から、6,600個あまりの遺伝子を予測し、既に公開されている種々のらん藻ゲノムと比較を行ったところ、繊維状の形態を持つらん藻に特徴的な遺伝子等を捉えることができました。ゲノム全体の際立った特徴として、配列全体の約1割(618kb)ほどを、グループII イントロン、IS配列、ファージ様の領域、その他の繰り返し配列が占めていることが分かりました。さらに数多くの偽遺伝子が見つかったことから、ゲノム構造の変化が頻繁に起こることで、過酷な環境に耐え適応していることが考えられます。またこのグループは従来より遺伝子導入が困難なことが知られていましたが、ゲノム解析の結果からも外来DNAを分解する働きを持つ制限修飾系の遺伝子が多く見つかり、これを裏付ける結果となりました。

今後は、ゲノム配列情報を活用して形質転換系の確立を図るなどにより、さらなる研究の進展と工業利用の促進が期待されます。


Arthrospira (Spirulina) platensis NIES-39 菌体写真
大森氏 (埼玉大学) 提供

  chromosome
ゲノムサイズ(bps) 6,788,435 bp
ORF 6,630
GC含量(%) 43.65 %
データベース DOGAN
代表共同研究先 国立大学法人 埼玉大学

References:

[1] Genomic Structure an Economically Important Cyanobacterium, Arthrospira (Spirulina) platensis NIES-39.
Fujisawa T, Narikawa R, Okamoto S, Ehira S, Yoshimura H, Suzuki I, Masuda T, Mochimaru M, Takaichi S, Awai K, Sekine M, Horikawa H, Yashiro I, Omata S, Takarada H, Katano Y, Kosugi H, Tanikawa S, Ohmori K, Sato N, Ikeuchi M, Fujita N, Ohmori M. (2010)
DNA res. Epub ahead of print
[PMID:20203057]

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