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ブラジル

本ページの最終更新日:2021年3月23日

生物多様性条約関連国内法

ブラジルは、生物多様性条約を1994年5月29日に、名古屋議定書を2021年3月4日に批准しました。

アクセスと利益配分に関するブラジルの国内法としては、遺伝財産に関する法律(2015年5月20日付法律第13.123号)、関連政令(2016年5月11日付政令第8.772号)等があります。

ブラジル環境省内には遺伝財産管理委員会(CGen)が設立されており、遺伝財産及び関連する伝統的知識へのアクセスや利益配分等について管理・調整を行う機関として、遺伝財産に関する法律や関連政令の施行に大きな役割を担っています。

ブラジル国旗

遺伝財産に関する法律(2015年5月20日付法律第13.123号)

2015年11月17日に「遺伝財産に関する法律 2015年5月20日付法律第13.123号」(以下、法律第13.123号)が施行されました。これにより、2001年8月23日付暫定措置令第2.186-16号は廃止されました。法律第13.123号はブラジル連邦が管轄権を有する遺伝財産及び関連する伝統的知識のアクセス、保護、利益配分について規定したものです。

原文(ポルトガル語)及び英訳
NITE/JBA仮訳 【PDF:517KB】
参考:概要説明 【PDF:801KB】
参考:暫定措置令第2186-16号 原文(ポルトガル語)及び英訳【外部リンク】、JBA仮訳【外部リンク】

政令第8.772号(2016年5月11日付政令第8.772号)

2016年5月12日に「2016年5月11日付政令第8.772号」(以下、政令第8.772号)が施行されました。これにより、2001年9月28日付政令第3945号、2003年12月31日付政令第4946号、2005年6月7日付政令第5459号、2007年7月17日付政令第6159号、2009年7月29日付政令第6915号は廃止されました。政令第8.772号は法律第13.123号の運用詳細について規定したものであり、遺伝財産及び関連する伝統的知識国家管理システム(SisGen)への登録を介した遺伝財産または関連する伝統的知識へのアクセス手続きや、利益配分手続き等の詳細が明記されています。

原文(ポルトガル語)【外部リンク】
[環境省]暫定訳【外部リンク】

【遺伝「財産」】

 法律第13.123号においてブラジルの遺伝資源は、「遺伝財産:patrimônio genético」と称されており、実体物である遺伝資源本体からデータ等の無形物まで「遺伝財産」に含まれます。

法律第13.123号第2条Iにおける遺伝財産の定義は以下のとおりです。

I. 遺伝財産:植物、動物、微生物またはその他の種の遺伝的起源(origem genética)の情報であって、当該生物の代謝から生じる物質を含む。

【ブラジルの遺伝財産へのアクセス】

 法律第13.123号第2条VIIIにおいて、「遺伝財産へのアクセス」の定義は、「遺伝財産のサンプルに対する研究または技術開発」となっています。
 ブラジルの遺伝財産については、ブラジル国内又は他の提供国における取得の時点ではなく、当該遺伝財産を研究または技術開発に利用する時点で「遺伝財産へのアクセス」と見なされる可能性があり、その場合、「遺伝財産及び関連する伝統的知識国家管理システム(SisGen)」にアクセス行為を登録する必要があります(法律第13.123号第11-16条、政令第8.772号第22条)。なお、外国籍の「自然人」によるブラジル遺伝財産または関連する伝統的知識へのアクセスは禁止されており、ブラジルの公立または民間の科学技術研究機関と結びつきがあり、ブラジル国外に本拠地を有する「法人」である必要があります(法律第13.123号第11条第1項及び第12条II)。

 アクセスと見なされない活動については政令第8.772号第9章第107条に記載されています。

【SisGenへの登録が必要な活動】

 以下の活動についてはブラジルの科学技術研究機関を通じてSisGenへの登録が必要です(法律13.123号第12条、政令第8.772号第4章)。

1. 自然人または公立もしくは民間を問わずブラジル国内の法人がブラジルで行う、遺伝財産または関連する伝統的知識へのアクセス
2. ブラジル国内の公立または民間の科学技術研究機関と結びつきがあり、ブラジル国外に本拠地を有する法人による遺伝財産または関連する伝統的知識へのアクセス
3. 自然人または公立もしくは民間を問わずブラジル国内の法人がブラジル国外で実施する、遺伝財産または関連する伝統的知識へのアクセス
4. 上記2.または3.の場合に、アクセスを目的とした遺伝財産のサンプルのブラジル国外への送付
5. 研究および技術開発の一環でのブラジル国外におけるサービス提供を目的とした、公立または民間を問わずブラジル国内の法人による遺伝財産を含むサンプルの発送
 
 またその登録は、以下の行為の前に行わなければならないと規定されています (法律第13.123号第12条2項、政令第8.772号4章)。

  • ● いかなる知的財産権の要求
  • ● 中間製品の商品化
  • ● 学会におけるもしくは通信手段による最終もしくは中間結果の公表
  • ● アクセスの結果、開発される最終製品または生殖素材の通知

 学会におけるブラジルの遺伝財産に関する研究成果の報告、論文発表やブラジルの遺伝財産へのアクセスから最終製品や生殖素材が生じた場合も上記の法律に基づき判断されうることに留意してください。疑義がある場合は弊機構やABSクリアリングハウスに記載されているブラジル政府のフォーカルポイントに確認することをお勧めします。

【日本の利用者がSisGenに登録を行うには】

 ブラジル国外に本拠地を有する法人は自身で直接SisGenにアクセス等を登録することができません。現地支社や共同研究先など、ブラジルの法人納税登録番号(CNPJ)を持つ法人又は納税者番号(CPF)を持つ個人を通じて登録する必要があります。もし現地に協力者が存在しない場合は以下の機関でブラジルのパートナーを紹介してもらえる可能性があります。

Conselho Nacional de Desenvolvimento Científico e Tecnológico (CNPq) (国家科学技術開発審議会)
 

【ブラジル国外への遺伝財産の移転について】

 遺伝財産のブラジル国外への移転については「発送 (envio)」と「送付 (remessa)」の2つの形態があります。両形態ともにSisGenへの登録が必要です。

1. 発送 (envio):

ブラジルの法人と提携している又は契約を結んでいるブラジル国外の機関が遺伝財産のサンプルに対して試験又は専門技術活動を実施するため、ブラジルの法人がサンプルをブラジル国外に移転することを「発送 (envio)」といいます。サンプルに係る責任はブラジル内でのアクセス実施者が負うこととなっており、サンプルの移転先であるブラジル国外機関は負いません。またブラジル国外機関によるサンプルの第三者移転、経済開発、知的財産権の要求等は禁止されています。実際の発送手続き及び条件については政令第8.772号第4章第2節第24条に記載されています。

2. 送付(remessa):

アクセスを目的とした、ブラジル国外の機関に対する遺伝財産のサンプルの移転を「送付 (remessa)」といいます。サンプルに係る責任は受取者であるブラジル国外機関が負います。「送付 (remessa)」には、以下の2つのケースがあります。

  • ● 遺伝財産に対して研究または技術開発を行うブラジル国外機関への移転
  • ● ブラジルの個人又は法人によるブラジル国外の生息域外コレクションへの遺伝財産の寄託

送付(remessa)に際してはブラジル国内の遺伝財産発送人と受取者であるブラジル国外機関/生息域外コレクションとの間で「素材の移転に関する文書」(以下、MTA)及び送付インボイスを締結する必要があります。当該MTA及び送付インボイスは2018年9月18日付CGen決定第12号に規定されています。

2018年9月18日付CGen決定第12号
原文(ポルトガル語)及び英訳【外部リンク】

実際の送付手続き及び条件については政令第8.772号第4章第3節に記載されています。また手続きについてまとめた図は以下です。

*下図クリックで、拡大表示されます。

● ブラジル国外機関への送付手続き    


● ブラジル国外の生息域外コレクションへの寄託手続き
 

 

相談窓口

生物多様性条約等に基づく微生物の移転及び海外資源へのアクセス等について、ご相談を受け付けております。  以下お問い合わせフォームより、国名及びご相談内容を明記の上、お問い合わせください。

 

*この関連国内法等は改正される可能性があります。本ページの利用により生じた損害・不都合について、当機構は一切責任を負いません。

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お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター  生物多様性支援課
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