バイオテクノロジー

加水分解タンパク質

小麦加水分解物を含有する製品におけるアレルギーの発症

タンパク加水分解物は、保湿や泡立ちを良くするためにシャンプーや石けんなどの医薬部外品・化粧品で多く使用されています。
 平成22年頃に加水分解コムギを含有する石けんを使用することにより、小麦アレルギーを発症した事例が多数あることが分かりました。その多くは顔面の皮膚障害ですが、呼吸困難や意識不明になるなどのアナフィラキシーショックを起こす重篤な症例も多く含まれていました。その危険性が大きいことと、当該石けんの販売数が非常に多く潜在的な被害者が膨大な人数になることが考えられ、平成22年10月15日に厚生労働省より、「小麦加水分解物を含有する医薬部外品・化粧品による全身性アレルギーの発症について」の通知が出されました。
 現在では、日本アレルギー学会での「化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会」などで、情報収集や同様な問題の発生防止のための調査研究が行われており、2,000名を超える患者が確認されています。すべてのタンパク加水分解物がアレルギーを発症させるわけではないことも分かり、事故を起こした加水分解コムギがなぜこれほど重篤なアレルギーを発症させたのか追求するために、日本中の病院、大学、試験・研究機関で疫学調査、物性、感作性の確認などの研究が行われています。

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加水分解コムギの解析

NITEでは、国立医薬品食品衛生研究所と藤田保健衛生大学と共同で、アレルギーを発症させた加水分解コムギや各種加水分解コムギ試料について、物性や疫学試験を行いました。NITEで行ったのは物性試験で、サイズ排除クロマトグラフ(SEC)による分子量分布の解析と高速液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS/MS)による加水分解によるアミノ酸変化の解析を行いました。

これらの結果と研究先の疫学試験の結果を照らし合わせると、分子量分布とアミノ酸の変化の度合いはアレルギー発症の危険性と相関があることが分かりました。

解析結果は、NITEからは経済産業省へ、また共同研究先を通じ、厚生労働省、その他の大学、研究機関にも提供しました。これらの結果をまとめて、平成27年5月31日に日本アレルギー学会、日本皮膚科学会が開催した市民公開講座にて、最終の研究結果が報告されました。

コムギ加水分解グルテンの解析の関係機関

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行政の対応

シャンプーや石けんなどの医薬部外品は、「医薬部外品原料規格2006」に記載されている成分により作られています。上記の各種解析結果を受けて、厚生労働省では「医薬部外品原料規格2006」の別記IIの加水分解コムギ末及び加水分解コムギたん白液の項目について改正を行いました(平成29年3月30日付、薬生発0330第2号、「医薬部外品原料規格2006」の一部改正について)。これにより、医薬部外品として使用できる加水分解コムギの品質が定められ、今回の事故を発生させたような加水分解コムギは医薬部外品では使用できなくなりました。

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解析成果

NITEでの小麦加水分解物の解析結果は、以下の学会で発表されています。

第63回アレルギー学会秋季学術大会 (2013)、MS1-5
「加水分解コムギ末含有石鹸により生じた即時型小麦アレルギーの抗原解析」
中村政志、矢上晶子、佐野晶代、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、松永佳世子
第43回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会 (2013)、67
「小麦グルテンの酸加水分解時間による分子量分布・脱アミド化率の変化」
佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、酒井信夫、手島玲子
第43回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会 (2013)、68
「加水分解コムギ末グルパール19Sの製造工程中試料の分子量分布変化と脱アミド化の確認」
佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、中村政志、矢上晶子、佐野晶代、松永加世子
日本薬学会第134年会 (2014)、28amL-022
「コムギタンパク質酸加水分解物の分子特性解析及び経皮感作性の検討」
安達玲子、酒井信夫、中村里香、木村美恵、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、福冨友馬、最上知子、手島玲子
第53回米国毒性学会年会 (2014)、988
「Molecular Profile Analysis of Allergenic Acid Hydrolyzed Wheat Protein」
酒井信夫、安達玲子、中村里香、木村美恵、中村亮介、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、福冨友馬、最上知子、手島玲子
第26回日本アレルギー学会春季臨床大会 (2014)、MS5-1
「抗原性を呈する加水分解コムギの分子プロファイリング」
酒井信夫、安達玲子、中村亮介、木村美恵、山本幸子、菊地博之、渡邉敬浩、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、福冨友馬、最上知子、手島玲子
臨床免疫・アレルギー科(2014)、第62巻第5号pp.492-495
「抗原性を有する加水分解コムギの分子プロファイリング」
酒井信夫、安達玲子、中村亮介、菊地博之、渡邉敬浩、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、最上(西巻)知子、手島玲子
第12回欧州接触皮膚炎学会議 (ESCD2014)、187
“Analyses on antigens and epitopes of Glupearl 19S”
(グルパール19Sの抗原及びエピトープの解析)
 Masashi Nakamura, Akiko Yagami, Kazumi Sasaki, Akiyo Sano, Kazuhiro Hara, Tsukane Kobayashi, Keiko Nishijima, Hanako Ataku, Kayoko Matsunaga
第64回日本アレルギー学会学術大会 (2015)、MS17-1 (FP-22)
「各種加水分解コムギ末の解析(1) -分子プロファイリング-」
 佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、酒井信夫、中村政志、安達玲子、中村里香、最上知子、福冨友馬、松永佳世子、手島玲子
第64回日本アレルギー学会学術大会 (2015)、P25-9
「各種加水分解コムギ末の解析(2) -経皮感作性試験-」
 酒井信夫、安達玲子、中村里香、最上知子、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、中村政志、福冨友馬、松永佳世子、手島玲子
第127回日本薬理学会近畿部会(2015)
「経皮感作モデルにおける種々の加水分解コムギおよび関連タンパク質の感作性の検討」
 上田創平、佐藤悠介、北野高道、入野俊治、西原 徹、山下弘高、稲垣直樹、田中宏幸、佐々木和実、中村政志、松永佳世子
日本薬学会第137年会 (2017)、27F-am01
「酸加水分解コムギの脱アミド化エピトープを特異的に認識するモノクローナル抗体を用いた抗原性の解析」
 酒井信夫、田原麻衣子、中村里香、中村亮介、佐々木和実、西嶋桂子、安宅花子、Olivier TRANQUET、Sandra DENERY、佐藤奈由、中村 政志、松永佳世子、手島玲子、安達玲子、五十嵐良明

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