GHS分類結果

名称:ヒドラジン一水和物
CAS番号:7803-57-8

結果:
物質ID: 57
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - ヒドラジン類であり、爆発性に関わる原子団を含むが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告が、クラス・区分6.1およびクラス8(ヒドラジン水和物は、国連番号2030(水溶液で濃度が37質量%以上のものに限る)を参照としている)。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
BUA205(1996)による引火点は75℃(開放式)であり、「区分4」に該当する。なお、国連危険物輸送勧告では、クラス・区分6.1およびクラス8 容器等級I〜III(ただし、容器等級がIのもので「引火点が60℃以下の物質は引火性液体の副標札を貼付しなければならない」との特別規定あり)(ヒドラジン水和物は、国連番号2030(水溶液で濃度が37質量%以上のものに限る)を参照としている)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - ヒドラジン類であり、爆発性に関わる原子団を含むが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告が、クラス・区分6.1およびクラス8(ヒドラジン水和物は、国連番号2030(水溶液で濃度が37質量%以上のものに限る)を参照としている)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告が、クラス・区分6.1およびクラス8(ヒドラジン水和物は、国連番号2030(水溶液で濃度が37質量%以上のものに限る)を参照としている)。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - ハロゲンを含まず酸素を含む無機化合物であるが、この酸素が水和物として付加する水分子以外と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 有機化合物でない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - Merck(13th,2001)ではステンレス鋼に対する腐食性では、V2A、SUS304、SUS347は侵さないが、SUS316のようなモリブデン系は使用すべきでない、としているがデータがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では腐食性物質に該当しているが、皮膚腐食性も含む分類なので、金属腐食性に該当するのか判別できない(ヒドラジン水和物は、国連番号2030(水溶液で濃度が37質量%以上のものに限る)を参照としている)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50 262 mg/kg、169 mg/kg、220 mg/kg(厚労省報告(2003))に基づき、計算式を適用して得られたLD50 172 mg/kgから、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NITE初期リスク評価書 No.73(2005)のウサギを用いた4時間適用試験結果において「55%溶液を適用したところ、7/11 匹にて皮膚適用部位に腐食がみられた」との報告が得られたことから、区分1A-1Cとした。細区分の必要がある場合は、安全性の観点から、1Aとした方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
有害性情報「2.皮膚腐食/刺激性」において、区分1A-1Cと判断していることから、技術指針に従い、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NITE初期リスク評価書 No.73(2005)のヒトへの健康影響の記述にて、「感作性については、ヒドラジンとその塩はヒトに接触アレルギーを発症する」という報告が得られていること。また、日本産業衛生学会では、皮膚感作性「第2群」注)と分類していることから、区分1とした。 注)ヒドラジン自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERI・NITE有害性評価書 No.73(2004)、EHC 68(1987)の記述から、経世代変異原性試験なし、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(マウススポット試験)で陽性、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験なし、であることから「区分2」とした。 健康有害性については、【ID56、ヒドラジン、CAS:302-01-2】も参照のこと。
6 発がん性 分類できない - - - - 毒性情報はあるが 既存分類がないため、専門家の判断に従い、分類できないとした。なお、本物質の発がん性については、【ID56、ヒドラジン、CAS:302-01-2】も参照のこと。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足により、分類できない。 健康有害性については、【ID56、ヒドラジン、CAS:302-01-2】も参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓、腎臓) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、肝臓、腎臓) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「急性暴露によって中枢神経系、肝臓、腎臓に影響を及ぼすことが知られている。」(環境省リスク評価第1巻(2002))の記述があることから、中枢神経系、肝臓、腎臓が標的器官と考えられた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、肝臓、腎臓)とした。 本物質の分類に際しては、評価書にヒドラジン水和物で試験を行ったとする明確な記述がある報告に限定し、それを分類の資料として採用した。しかし、本物質はヒドラジン(ID: 0056、CAS No.302-01-2)と水が反応して容易に形成される。そのため動物を用いた試験等でヒドラジンを水に溶解して暴露する場合はヒドラジン(一)水和物の状態であると考えられる。よって、ヒドラジン(ID: 0056、CAS No.302-01-2)の分類結果も合わせて参照し、評価すること。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、神経系、消化管、腎臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、神経系、消化管、腎臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「肝毒性、神経症状、心臓症状」、「黄疸、死後の剖検で重度腎炎、尿細管壊死、糸球体腎炎、限局性肝細胞壊死がみられた。」(CERI・NITE有害性評価書 No.78(2004))、「胃炎、振戦, 嗜眠, 言動の一貫性喪失, 黄疸, 肝臓の肥大で易触診, 血中ビリルビン量の上昇, 血中クレアチニン量の上昇, 蛋白尿、剖検所見:重度の尿細管壊死」(IARC(1987))等の記述があることから、肝臓、神経系、消化管、腎臓が標的臓器と考えられた。なお、消化管への影響については、経皮暴露試験での影響のため、標的臓器として採用した。 以上より、分類は区分1(肝臓、神経系、消化管、腎臓)とした。 本物質の分類に際しては、評価書にヒドラジン水和物で試験を行ったとする明確な記述がある報告に限定し、それを分類の資料として採用した。しかし、本物質はヒドラジン(ID: 0056、CAS No.302-01-2)と水が反応して容易に形成される。そのため動物を用いた試験等でヒドラジンを水に溶解して暴露する場合はヒドラジン(一)水和物の状態であると考えられる。よって、ヒドラジン(ID: 0056、CAS No.302-01-2)の分類結果も合わせて参照し、評価すること。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セレナストラム)の72時間ErC50=0.19mg/L(環境省生態影響試験、2001)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、生物蓄積性が低いと推定されるものの(log Kow=-2.07(PHYSPROP Database、2005))、急速分解性がない(ヒドラジンのBODによる分解度:2%(既存化学物質安全性点検データ)から類推)ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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