GHS分類結果

名称:メタクリル酸
CAS番号:79-41-4

結果:
物質ID: 70
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2004)による引火点は68℃(密閉式)であり、「区分4」に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス8(国連番号2531)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点400℃NFPA(13th,2002))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - ICSC(2004)では、金属を侵すとしているが、データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス8(国連番号2531)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験の LD50=1,060 mg/kg(環境省リスク評価書第2巻(2003))、1,320 mg/kg、2,260 mg/kg、2,224 mg/kg(EU-RAR No.25(2002))から、計算式を適用して得られた 1,210 mg/kg に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50=500-1,000 mg/kg(EU-RAR No.25(2002))、2,000 mg/kg(CERI ハザードデータ集 96-34(1997))に基づき、低い方の値 500-1,000 mg/kg から区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットを用いた吸入暴露試験の LC50(4時間)=7.1 mg/L(2,000 ppmに相当)(EU-RAR No.25(2002))は、飽和蒸気圧 0.09kPa(20℃)における飽和蒸気圧濃度 900 ppm よりも高い値であるため、ミスト暴露であると考えられ、区分外とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERI・NITE 有害性評価書 No.92(2005)の1匹のウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果の記述に「3分間の開放適用で腐食性がみられた」、とあることから、細区分の基準に基づき、区分1Aとした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
CERI・NITE有害性評価書 No.92(2005)のウサギを用いたOECDテストガイドライン405 に準拠した眼刺激性試験の結果の記述に「24 時間後、全てのウサギに角膜混濁、虹彩刺激、結膜充血、結膜浮腫がみられた。」「7 日目でも角膜混濁、虹彩刺激、結膜刺激は回復せず、化学火傷、角膜上皮の壊死脱落、前眼房の蓄膿がみられた」とあることから、腐食性を有すると考えられ、また、皮膚刺激性が区分1Aであるため、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - CERI・NITE有害性評価書 No.92(2005)のモルモットを用いたビューラー法による試験結果で感作性はみられず、Polak adjuvant法の試験結果でも陽性の反応はみられず、ヒトへの疫学事例でも皮膚感作性を示す結果が得られておらず、EU-RAR No.25(2002)で「ヒト症例及び動物試験からメタクリル酸は感作性物質ではない」と結論づけていることから、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データ不足(in vivo変異原性/遺伝毒性試験データなし。)のため分類できない。 なお、メタクリル酸の生殖細胞変異原性については、ID204、メタクリル酸メチル、CAS:80-62-6も参照のこと。
6 発がん性 分類できない - - - - 疫学データはあるが、既存分類がないため、専門家の判断に従い、分類できないとした。なお、メタクリル酸の発がん性については、ID204、メタクリル酸メチル、CAS:80-62-6も参照のこと。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。 なお、メタクリル酸の生殖・発生毒性については、ID204、メタクリル酸メチル、CAS:80-62-6も参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物については、「呼吸器経路の刺激」(EU-RAR No.25(2002))等の記述があることから、気道刺激性を有すると考えられる。 以上より、分類は区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、肝臓、腎臓、副腎)、区分2(呼吸器) 警告
危険
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(呼吸器)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、肝臓、腎臓、副腎)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「頻脈、低血圧、ニトログリセリンとの過度の反応、低体温、加熱・紫外線暴露に対する弱い反応、Ashner反射の病理学的変化、肢端チアノーゼ、手の指の振戦などが見られた」(EU-RAR No.25(2002))等の記述、実験動物については、「肝臓中の酵素の変化、電解質の変化、肝臓、副腎の重量減少、肝臓、腎臓・副腎の萎縮、鼻腔嗅上皮変性」(CERI・NITE有害性評価書 No.92(2005))等の記述があることから、神経系、肝臓、腎臓、副腎、呼吸器が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、肝臓、腎臓、副腎への影響が区分1、呼吸器への影響が区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(神経系、肝臓、腎臓、副腎)、区分2(呼吸器)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セレナストラム)の72時間ErC50=14mg/L(CERI・NITE有害性評価書、2005)から、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:91%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=0.93(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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