GHS分類結果

名称:エチレンジアミン
CAS番号:107-15-3

結果:
物質ID: 97
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2003)による引火点は34℃(密閉式)であり、「区分3」に該当する。国連危険物輸送勧告ではクラス3およびクラス8(国連番号1604)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点385℃、ICSC(2003))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお、国連危険物輸送勧告では腐食性物質に該当しているが、皮膚腐食性も含む分類なので、金属腐食性に該当するのか判別できない(国連番号1604)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに対する経口投与のLD50=637、1,500、1,850 mg/kg(SIDS(2003))、1,160 mg/kg(ACGIH(7th, 2001))に基づき、計算式を適用して区分した。LD50(計算値)=860mg/kgから、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギに対する経皮投与のLD50=560 mg/kg(SIDS(2003))、657 mg/kg(ACGIH(7th, 2001))に基づき、低い値のLD50=560 mg/kgから、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットを用いた吸入暴露試験(蒸気)のLC50(8時間)=29 mg/L超(SIDS(2003))に基づき、計算式を適用して区分した。LC50(4時間換算値)=58 mg/L超と算出された。飽和蒸気圧1.7kPa(25℃)(SIDS(2003))における飽和蒸気圧濃度は17,000 ppmであり、換算係数 1 ppm=2.46 mg/m3(25℃)を用いると、41 mg/Lである。今回得られたLC50=58 mg/L超は、飽和蒸気圧濃度を超えており、「ミスト」としての吸入が想定され、「粉塵・ミスト」の区分基準値に従って、区分外とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CICAD 15(1999)、SIDS(2003)のウサギに対する皮膚一次刺激性試験結果の記述「70%(6〜12分間)及び100%(24時間)のエチレンジアミンの皮膚適用で皮膚の壊死がみられている」から、4時間適用試験結果ではないが、皮膚腐食性を有すると考えられ、区分1とした。70%を6〜12分間適用して腐食性がみられているので、区分1A-1Cとしたが、安全性の観点から、1Aとした方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ACGIH(7th, 2001)、CICAD 15(1999)、SIDS(2003)のウサギに対する眼刺激性試験結果の記述「100%エチレンジアミンの点眼で永続的な眼損傷を生ずる。」から、エチレンジアミンは眼に対する非可逆的作用を有すると考えられ、区分1とした。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
既存分類として、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会 は呼吸器感作性物質に分類している。また、CICAD 15(1999)、SIDS(2003)のヒトの呼吸器感作性に関する症例報告の記述「エチレンジアミンの職業暴露によって喘息を発症している」からも、エチルベンゼンは呼吸器感作性を有すると考えられ、呼吸器感作性物質(区分1)とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
既存分類として、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会 はエチレンジアミンを皮膚感作性物質に分類している。また、CICAD 15(1999)、SIDS(2003)、環境省リスク評価書第3巻(2004)のヒトの皮膚感作性に関する症例報告の記述「皮膚炎患者のパッチテストの結果、エチレンジアミンに陽性を示した。」と、CICAD 15(1999)、SIDS(2003)のモルモットを用いた皮膚感作性試験結果の記述「陽性の結果を得ている。」からも、エチレンジアミンは皮膚感作性を有すると考えられ、接触感作性物質(区分1)とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - CERIハザードデータ集99-20(1999)、SIDS(2001)に記述から、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性がみられ、生殖細胞 in vivo変異原性試験なし、体細胞 in vivo変異原性試験なしであることから、区分外とした。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(2005)でA4に分類されていることから、区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(血液系、腎臓、呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(血液系、腎臓、呼吸器) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「顔のヒリヒリ感、眼、鼻粘膜に軽度の刺激」、「眼、皮膚、気道に対して腐食性を示し、蒸気あるいは煙霧を吸入すると肺水腫を起こすことがある。」(環境省リスク評価 第3巻(2004))、「紅斑、無尿、頻脈、血中のカリウム濃度上昇、痰を伴う刺激性の咳と下痢を伴う腹痛、嘔吐、溶血と無尿を伴う腎症、致死的な高カリウム血症」(CERIハザードデータ集 99-20(2000))等の記述があることから、血液系、腎臓、呼吸器が標的臓器と考えられた。 以上より、分類は区分1(血液系、腎臓、呼吸器)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肝臓、腎臓、視覚器) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、腎臓、視覚器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物については、「肝臓の混濁腫脹、曲尿細管の混濁腫脹」、「白内障、結膜炎、網膜萎縮などの眼の傷害」(環境省リスク評価 第3巻(2004))等の記述があることから、肝臓、腎臓、視覚器が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分2(肝臓、腎臓、視覚器)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=3mg/L(SIDS、2003)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:94%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=-2.04(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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