GHS分類結果

名称:1,1,1-トリクロロエタン
CAS番号:71-55-6

結果:
物質ID: 159
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点なし(ホンメル(1991)Card No.196、Sax(8th、1992)p2287-2288)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性ならびに自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - Nonflammable.(Merck(Access on May 2005))
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - Nonflammable.(Merck(Access on May 2005))
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に金属または半金属原子を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 分子内に酸素またはフッ素を含んでいない。塩素を含むが、この塩素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含んでいない。
16 金属腐食性物質 区分外 - - - - UNRTDG クラス6.1に分類されている。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラット経口LD50値=4640mg/kg(CERIハザードデータ集(1998))、15800mg/kg(CERIハザードデータ集(1998))、11000mg/kg(EHC 136(1992))、10300mg/kg(PATTY(4th, 1994)、ATSDR(2004))および12996mg/kg(ATSDR(2004))に基づき計算値を適用して区分した。LD50計算値=7924.3mg/kg
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギ経皮LD50値=10000mg/kg(CERIハザードデータ集(1998))、16000mg/kg(CERIハザードデータ集(1998))および15800mg/kg(EHC 136(1992))に基づき計算値を適用して区分した。LD50計算値=10706mg/kg
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラット吸入LC50(1時間)値=24000ppm(蒸気圧から蒸気と判断し、4時間暴露換算値は12000ppm、CERIハザードデータ集(1998))およびラット吸入LC50(4時間)値=18400ppm(EHC 136(1992))に基づき、このLC50値では本化合物の状態はほぼ気体相に近い蒸気であると判断されることから、ガスと同じ基準値を用いて区分した。4時間暴露LC50値は区分5(5000〜12500ppm)の上限の約1.5倍の値であり、1時間暴露LC50値から得られた4時間換算値は区分5の上限値とほぼ同じであることから、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
EHC 136(1992)およびATSDR(2004)のヒト暴露例で刺激性を示すとの記述、CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)およびATSDR(2004)のウサギで中等度の刺激性を認めたとの記述、ならびにCERIハザードデータ集(1998)、ACGIH(7th, 2001)およびATSDR(2004)のモルモットで中等度の刺激性を認めたとの記述から、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A-2B 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
EHC 136(1992)およびATSDR(2004)のヒト暴露例で軽度な刺激性がみられたとの記述、ならびにCERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)、PATTY(4th, 1994)およびATSDR(2004)のウサギで軽度または中等度の刺激性が認められたとの記述から、区分2A-2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - アレルギー性接触皮膚炎の1症例の報告があるが添加されている安定剤が原因である可能性には触れられていない(ATSDR(2004))。また、本物質を含む洗剤にアレルギー反応がみられた1症例の報告があるが、原因物質は特定されていない(BUA 156(1994))。一方、50人のボランティアで3週間に18回の皮膚適用では皮膚アレルギー反応はみられなかったとの記述(BUA 156(1994))、ならびにモルモット試験で皮膚感作性はみられなかったとの記述(BUA 156(1994))があることから、皮膚感作性はないと判断し、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスを用いる優性致死試験で陰性(CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992))であること、およびin vivo体細胞変異原性試験(ラット骨髄染色体異常試験およびマウス骨髄/末梢血小核試験で陰性(CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)、IARC 71(1999)、NTP DB(Access on Aug 2005)、ATSDR(2004))であることから、区分外とした。
6 発がん性 区分外 - - - - EPAでD、IARC 71(1999)でグループ3、ACGIH(7th, 2001)でA4に分類されていることから、区分外とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)、PATTY(4th, 1994)、IARC 71(1999)、NTP DB(Access on Aug 2005)、ATSDR(2004)およびACGIH(7th, 2001)のラット、マウスまたはウサギを用いた交配前、妊娠中または授乳中投与試験、あるいはマウスの多世代繁殖性試験において、胎児/生後児に変異・化骨遅延および体重低値などの最小限な影響はみられるものの、生殖機能、生殖能力または発生に対する悪影響は報告されていないとの記述がある。一方、CERIハザードデータ集(1998)およびATSDR(2004)に、ラット妊娠中吸入暴露試験で親動物に一般毒性が発現する用量で出生児死亡率の上昇や児の行動に変化が見られるとの報告があることから、区分2とした。なお、ATSDR(2004)に疫学調査の記述があるが、生殖毒性と暴露との明確な関連は示されていない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、心臓)、区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告
危険
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(麻酔作用、気道刺激性)
H370: 臓器の障害(中枢神経系、心臓)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(4th, 1994)、IARC 71(1999)、産衛学会勧告およびATSDR(2004)のヒト暴露例で中枢神経抑制作用がみられるとの記述、CERIハザードデータ集(1998)、PATTY(4th, 1994)およびATSDR(2004)のヒト暴露例でアドレナリン作用に対する心臓の感受性亢進による不整脈等がみられるとの記述から、標的臓器は中枢神経系及び心臓と考えられ、区分1とした。また、CERIハザードデータ集(1998)、ATSDR(2004)およびACGIH(7th, 2001)のヒト暴露例で麻酔作用が認められたとの記述、およびATSDR(2004)のヒト暴露例で軽度な気道刺激性がみられたとの記述から、区分3とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓、心臓)、区分2(肺) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、肝臓、心臓)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肺)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERIハザードデータ集(1998)、EHC 136(1992)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(4th, 1994)、IARC 71(1999)、産衛学会勧告(1974)およびATSDR(2004)のヒト反復暴露で中枢神経症状がみられるとの記述、ATSDR(2004)のヒト反復暴露例で不整脈がみられたとの記述、ならびにEHC 136(1992)、IARC 71(1999)、ATSDR(2004)のヒト反復暴露例で肝障害がみられたとの記述から、標的臓器は中枢神経系、心臓および肝臓と考えられ、いずれも区分1とした。さらに、CERIハザードデータ集(1998)およびACGIH(7th, 2001)の中等度濃度吸入でモルモットに肺への影響がみられたとの記述から、区分2とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ブラインシュリンプ)の24時間LC50=8000μg/L(環境省リスク評価第2巻、2003)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの(BCF=4.9(既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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