GHS分類結果

名称:メタクリル酸メチル
CAS番号:80-62-6

結果:
物質ID: 204
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2003)による引火点は10℃(開放式)、かつ沸点は100.5℃であり、「区分2」に該当する。国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3、容器等級II(国連番号1247)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。なお国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3(国連番号1247)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点421℃(ICSC,2003))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3(国連番号1247)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットを用いた経口投与試験のLD50 7900mg/kg(ECETOC JACC30(1995))、8500mg/kg(ECETOC JACC30(1995))の低い方の値を用いて区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギを用いた経皮投与試験のLD50 5,000 mg/kg以上(RTECS(2004))より、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分5 - 警告 H333: 吸入すると有害のおそれ P304+P312: 吸入した場合:気分が悪いときは、医師に連絡すること。 ラットを用いた吸入暴露試験(蒸気)のLC50 7,093 ppm(ECETOC JACC30(1995))が得られた。 飽和蒸気圧5.3kPa(26℃)(Verschueren(2001))における飽和蒸気圧濃度は52000 ppmである。今回得られたLC50は、飽和蒸気圧濃度の90%より低い濃度であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」として、ppm濃度基準値では区分外だが、ECETOC JACC30(1995)の記述「ボランティアによるより低濃度の吸入暴露試験で呼吸気道の刺激、脱力、発熱,めまい等の症状が報告されている」より、区分5とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ECETOC JACC30(1995)のウサギ皮膚刺激性試験結果(24時間後の観察で、強度の紅班と中心にくぼみを持った中程度から強度の浮腫、0.2 g/kg適用は3日後で刺激は消失、2、5g/kgは14日後でも刺激性)の記述、及び参考としてEUリスク警句 Xi ;R37/38から、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A-2B 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
EU-RAR No.22(2002)、CERIハザードデータ集 96-35(1997)、ACGIH(7th, 2001)のウサギを用いた眼刺激性試験結果(虹彩及び角膜には影響なかった。24時間後の結膜にグレード2の赤変がみられた。ウサギで軽度から中等度の眼の刺激性がある。)の記述から眼への刺激性はModerate又はMildであり区分2とした。区分2Aと2Bを判断できるデータはないため区分2A-2Bとしたが、安全性の観点から、2Aとしたほうが望ましい。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本産業衛生学会の既存分類(気道感作性 第2群)から、区分1とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
EU-RAR No.22(2002)の記述「アレルギー性皮膚炎が発生」、日本産業衛生学会の皮膚感作性物質及び参考としてEUリスク警句 R43(皮膚接触により感作を引き起こす可能性がある)から、皮膚感作性と考えられ、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - EU-RAR No.22(2002)、ECETOC JACC30(1995)の記述から、生殖細胞in vivo経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性、生殖細胞in vivo変異原性試験なし。体細胞in vivo変異原性試験(染色体異常試験、小核試験)では、ラットの染色体異常試験でギャップタイプの異常出現率の僅かな増加がみられているが、いずれの試験も「信頼性に問題ある」「陽性と判断するには証拠が不十分」等のEU、ECETOC及びCICADの判断が妥当と考えられるため、体細胞in vivo変異原性試験は陰性と判断し区分外とした。
6 発がん性 区分外 - - - - IARC(1994)でGroup3、ACGIH(2001)でA4、EPA(1998)でEに分類されていることから区分外とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
EU-RAR No.22(2002)の記述から、ラットの催奇形性試験で、母体毒性(死亡、体重減少等)が発現する用量で、胎児毒性(早期胎児死亡、頭尻長の減少、血腫の発生)がみられていることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「気道刺激性、脱力、発熱、めまい、吐き気、頭痛、眠気」(EU-RAR No.22(2002))の記載があることから、気道と中枢神経系が標的と考えられ、気道刺激性と麻酔作用がみられている。したがって、分類は区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器、中枢神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、中枢神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「萎縮性鼻炎、喉頭炎、自律神経障害、神経衰弱、頭痛、眩暈、神経過敏、集中力散漫、記憶力の低下」(環境省リスク評価書 第2巻(2003))等の記述があることから、標的臓器は呼吸器、中枢神経系と考えられた。したがって、分類は区分1(呼吸器、中枢神経系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=69mg/L(EU-RAR、2002)他から、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:94.3%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=1.38(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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