GHS分類結果

名称:塩化水銀(II);塩化第二水銀
CAS番号:7487-94-7

結果:
物質ID: 285
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2004)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2004)。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2004)。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に対して安定(水溶解度7.4g/100mL(20℃)、ICSC(2004))。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 塩素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号1624)。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 有機化合物でない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50が25.9-77.7mg/kg(ATSDR(1999))から、最小値のLD50 25.9 mg/kg から、区分2とした。
1 急性毒性(経皮) 区分1 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50 41 mg/kg(ATSDR(1999))から区分1とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義による固体のため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
分類の対象となっている4時間適用試験と異なるが、ウサギを用いた皮膚刺激性試験(CERIハザードデータ集 2001-58A(2002))で、重度の皮膚刺激性がみられるとの報告があり、またヒトに対して刺激性がみられるとの報告(ATSDR(1999))もあることから、重度の皮膚刺激性があると判断し、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
適用期間が24時間と通常の眼刺激性試験と異なる方法で行われているが、ウサギを用いた眼刺激性試験(CERIハザードデータ集 2001-58A(2002))で、重度の刺激性がみられるとの報告があり、またヒトに対して刺激性がみられるとの報告(ATSDR(1999))もあることから、重度の眼刺激性があると判断し、2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERIハザードデータ集 2001-58A(2002)の動物を用いた感作性試験結果の記述「陽性」及び、DFGOT vol.15(2001)のヒトへの健康影響の記述「皮膚感作性が認められた」。また、既存分類情報によれば、本物質を明示していないものの、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会は水銀を皮膚感作性がある物質、日本産業衛生学会は水銀(注)を皮膚感作性物質「第1群」に分類していることから、区分1と判断した。 (注)「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない。」という但し書きがある。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
(水銀化合物として)経世代変異原性試験および生殖細胞in vivo変異原性試験で陽性結果があるものの評価に用いられない、体細胞in vivo変異原性試験は陽性、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験のデータがないことから、区分2とした。
6 発がん性 区分外 - - - - EPA(1995)でC、ACGIH(2001)でA4(金属水銀及び無機水銀化合物として)、IARC(1993)でGroup 3(金属水銀及び無機水銀化合物として)に分類されていることから、区分外とした。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ATSDR(1999)、EHC 118(1991)、IARC 58(1993)、CERIハザードデータ集2001-58(2002)の記述から、親動物に一般毒性がみられない用量で、生殖機能(交尾率低下)や精子への影響がみられることによる。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、腎臓、心血管系、肝臓、骨格筋) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器、腎臓、心血管系、肝臓、骨格筋) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「重篤な肺水腫、肝臓の酵素増加、肝腫大と軟化」、「ラ音、肝臓腫大、急性腎不全」、「心電図のP波の消失、QRS 部分の延長、T 波の増高」、「骨格筋の変性」(CICAD 50(2003))、「アルブミン尿、無尿、尿毒症」との記載があり、実験動物について、「尿細管上皮細胞の変性、近位尿細管の壊死がみられている」(CERIハザードデータ集 2001-58A(2002))との記載があることから、標的臓器は呼吸器、腎臓、心血管系、肝臓、骨格筋と考えられた。なお、実験動物での影響は区分1のガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(呼吸器、腎臓、心血管系、肝臓、骨格筋)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、腎臓、甲状腺、精巣、心血管系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、腎臓、甲状腺、精巣、心血管系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「易刺激性、いらだち、不眠、頻脈と血圧上昇」(CICAD 50(2003))との記載があり、実験動物について、「腎障害(ヒアリン円柱を伴う尿細管の拡張、尿細管の再生巣、尿細管基底膜の肥厚)、尿細管壊死」(CICAD 50(2003))、「甲状腺重量の増加、甲状腺のヨウ素取り込みと血清中のたん白質結合ヨウ素の増加、トリヨードチロニン及びモノヨードチロシンの減少、精巣重量の減少、精巣上体中の精子数の減少、小脳顆粒細胞の凝固壊死、脊髄背根神経節のニューロンの変性や空胞化、重度の運動失調と感覚消失、血圧上昇、心収縮力低下」(CERIハザードデータ集 2001-58A(2002))との記載があることから、中枢神経系、腎臓、甲状腺、精巣、心血管系が標的臓器と考えられた。なお、実験動物でみられた影響は中枢神経系、腎臓、甲状腺、精巣については区分1のガイダンス値の範囲、心血管系については区分2のガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、腎臓、甲状腺、精巣、心血管系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=1.8-4.3μg/L(EHC86、1989)(塩化水銀(II)濃度換算値:2.4-5.8μg/L)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、金属化合物であり水中での挙動が不明であり、生物蓄積性がある(BCF=4620(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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