GHS分類結果

名称:trans-1,2-ジクロロエチレン
CAS番号:156-60-5

結果:
物質ID: 397
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2003)による引火点は2〜4℃(密閉式)、かつLide(84th,2003)による沸点は48.7℃であり、「区分2」に該当する。国連危険物輸送勧告ではクラス3、容器等級II(国連番号1150、1,2-ジクロロエチレン)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 化学構造に不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス3(国連番号1150、1,2-ジクロロエチレン)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点460℃(1,2-ジクロロエチレン(ICSC,2003))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素およびフッ素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない(沸点48.7℃(Lide,84th,2003)、試験温度55℃)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50=1,235 mg/kg(環境省リスク評価 第2巻(2003))、1,275 mg/kg(ACGIH(7th, 2001))、7,900 mg/kg(ATSDR(1997))、10,000 mg/kg(ATSDR(1997))から、計算式を適用して得られた LD50=1,392 mg/kg に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギを用いた経皮投与試験で LD50=5,000 mg/kg(CERI ハザードデータ集 2000-46(2001))が得られているが、ヒト健康に対する急性的な懸念が示唆されるデータが他にないため、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - マウスを用いた吸入暴露試験の LC50(6時間)=21,723 ppm(ACGIH(7th, 2001))から計算式を適用して得られた LC50(4時間)=26,600 ppm は、飽和蒸気圧 26.7 kPa(20℃)における飽和蒸気圧濃度 264,000 ppm の 90% よりも低い値であるため、ppm 濃度基準値に基づいて分類し、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
CERI ハザードデータ集 2000-46(2001)のウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果、4時間適用ではないが「中等度の刺激」がみられたことから、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
環境省リスク評価 第2巻(2003)のヒトの疫学事例および、CERI ハザードデータ集 2000-46(2001)のウサギを用いた眼刺激性試験の結果「中等度の刺激」がみられたことから、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - NTP TR55(2002)、ATSDR(1996)、CERIハザードデータ集2000-46(2001)の記述から、経世代変異原性試験なし、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(小核試験、染色体異常試験)で陰性であることから、区分外とした。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データ不足(生殖影響に関するデータなし。)のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓)、区分2(心臓、呼吸器)、区分3(麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(中枢神経系、肝臓)
H371: 臓器の障害のおそれ(心臓、呼吸器)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「吐き気、眠気、疲労感、眩暈、頭蓋内圧亢進」(ATSDR(1996))の記述、実験動物では「心筋の線維性腫脹及び充血、肝小葉およびクッパー細胞への脂肪蓄積、肺毛細管の充血及び肺胞隔壁の拡張」(ATSDR(1996))等の記述があることから、中枢神経系、心臓、肝臓、呼吸器が標的臓器と考えられ、さらに麻酔作用を有するとした。なお、実験動物に対する影響は、区分1、区分2に相当するガイダンス値の範囲で見られた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、肝臓)、区分2(心臓、呼吸器)、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(呼吸器) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物では、「肺への細胞浸潤」(IRIS(1998))の記述があることから、呼吸器が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分2に相当するガイダンス値の範囲で見られた。 以上より、分類は区分2(呼吸器)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ブルーギル)の96時間LC50=135mg/L(CERIハザードデータ集、2002)から、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度=4520mg/L(PHYSPROP Database、2005))、急性毒性が低いことから、区分外とした。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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