GHS分類結果

名称:tert-ブチル=ヒドロペルオキシド
CAS番号:75-91-2

結果:
物質ID: 550
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - ペルオキシド類であり、酸素収支の計算値は-195であり、また、HSDB(2006)では加熱により爆発することがあるとしているが、分解開始温度および分解エネルギーのデータがなく分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点データがなく分類できない。なお、NFPA(13th,2002)による引火点は<27℃(密閉式)、かつLide(84th,2003)による沸点は89℃(分解)であることから、「区分2」または「区分3」のいずれかに該当する。GHS分類では安全性の観点から「区分2」とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - ペルオキシド類であり、爆発性に関わる原子団を含むが、有機過酸化物に分類されている。国連危険物輸送勧告がクラス・区分5.2(希釈したしたものに限り濃度および稀釈剤の割合に応じ国連番号(3103,3105,3107,3109)を割当てており、希釈しないものは輸送が認められないので国連番号は付かない)。
9 自然発火性液体 分類できない - - - - HSDB(2006)では加熱により着火することがあるとしているが、データがなく分類できない。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類できない - - - - 炭素、水素以外の元素と化学結合している酸素を含む有機化合物であり、HSDB(2006)では強力な酸化剤としているが、データがなく分類できない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 タイプA 危険 H240: 熱すると爆発のおそれ P411+P235: ...℃以下の温度で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P220: 衣類/.../可燃物から遠ざけること。
P234: 他の容器に移し替えないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P410: 日光から遮断すること。
P420: 他の物質から離して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
-O-O-構造を含む有機化合物であり、かつ活性酸素量の計算値が35.5%であり、有機過酸化物に該当するが、データがないのでタイプの分類はできない。国連危険物輸送勧告では輸送が許可される有機過酸化物に包括エントリーを割当てており、tert-ブチル=ヒドロペルオキシドについては希釈したしたものに限り、濃度および稀釈剤の割合に応じ国連番号を付与し、「タイプC」、「タイプD」、「タイプE」、「タイプF」に細分されることから、希釈しないものは輸送が認められない「タイプA」と解釈できるので、GHS分類を「タイプA」とした。希釈したものの国連危険物輸送勧告がクラス・区分5.2(国連番号3103 有機過酸化物タイプC(液体)、国連番号3105 有機過酸化物タイプD(液体)、国連番号3107 有機過酸化物タイプE(液体)、国連番号3109 有機過酸化物タイプF(液体))。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお、国連危険物輸送勧告ではなお、希釈したもので有機過酸化物に分類されるものは「腐食性物質」の副標札が必要としているが、皮膚腐食性も含む分類なので、金属腐食性に該当するのか判別できない(希釈したものの国連番号:3103 有機過酸化物タイプC(液体)、3105 有機過酸化物タイプD(液体)、3107 有機過酸化物タイプE(液体)、3109 有機過酸化物タイプF(液体))。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50=560 mg/kg(SIDS(1995))に基き、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50=628 mg/kg(SIDS(1995))と、ラットを用いた経皮投与試験のLD50=470 mg/kg(PATTY(4th, 1999))に基づき、低い方の値である 470 mg/kg から、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入暴露試験のLC50=502 ppm(PATTY(4th, 1999))は、飽和蒸気圧2.7kPa(20℃)における飽和蒸気圧濃度 27,000 ppm の90% よりも低い値であるため、ミストがほとんど混在しない蒸気として、ppmの基準値に基づいて分類し、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
PATTY(4th, 1999)のラットを用いた皮膚刺激性試験の結果の記述に「きわめて強い刺激がみられた」とあることから、区分1A-1Cとしたが、細区分が必要な場合は、安全性の観点から区分1Aとする方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
PATTY(4th, 1999)のラットを用いた眼刺激性試験の結果の記述に「きわめて強い刺激」とあり、ICSC(1999)のヒトへの影響に「発赤、痛み、重度の深い火傷」とあることから、眼に腐食性を与えるものと判断し、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
SIDS(1995)、DFGOT Vol. 3(1992)、NTP DB(Access on June, 2006)の記述から、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性ならびに陽性、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(染色体異常試験)で陽性ならびに陰性であった。優性致死試験の結果は不十分な知見に基づくものであり、また、in vivo染色体異常試験結果も陽性を断定的なものとは判断されなかったが、いずれのin vitro変異原性試験(Ames、染色体異常、マウスリンフォーマ)においても陽性結果が得られていることから、区分2とした。
6 発がん性 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 区分外 - - - - SIDS(1995)の記述から、併合試験、催奇形性試験で、親動物の生殖、児動物の発生への影響がみられていないことから、区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(神経系、血液系、呼吸器)、区分3(麻酔作用) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(神経系、血液系、呼吸器)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物については、「行動抑制と流涙の徴候…立ち直り反射の喪失、・・・血尿などの徴候」(PATTY(4th, 1999))、「行動抑制、…立ち直り反射の喪失、流涙、・・・血尿」(IUCLID(1999))、「メトヘモグロビン血症もしくはカルボキシヘモグロビン」、「チアノーゼ」(RTECS(2006))等の記述があることから、神経系、血液系に影響があり、麻酔作用を有すると考えられた。また、「呼吸数の低下、無呼吸」(IUCLID(1999))等の記述があることから、呼吸器も標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、神経系、血液系については区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。呼吸器については、ガイダンス値から判断すると区分1相当であるが、Priority 2のデータであり、「GHSによる健康有害性分類にかかる技術上の指針」の判断基準1bB を満たさないため、区分2とした。 以上より、分類は区分2(神経系、血液系、呼吸器)、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓)、区分2(血液系) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液系)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
実験動物については、「網状赤血球の減少、ビリルビン値の増加、ネフローゼ」(SIDS(1995))等の記述があることから、腎臓、血液系が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、腎臓については区分1、血液系については区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(腎臓)、区分2(血液系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セレナストラム)の3日間ErC50=2.1mg/L(IUCLID、2000)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの(BCF=1.8(既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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