GHS分類結果

名称:臭素
CAS番号:7726-95-6

結果:
物質ID: 596
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
6 引火性液体 区分外 - - - - 不燃性。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性および自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 不燃性。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属、半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類できない - - - - 酸素、フッ素、塩素は含まないが、ICSCカードに Enhances combustion of other substances. と記載されており、酸化性液体である。しかし国連危険物輸送勧告では、国連番号1744に副次危険性5.1は付いていない。酸化力が容器等級IIIの下限標準物質である65%硝酸を超えなかったと考えられるが、公表されたデータがないので「分類できない」とした。区分外の可能性が大きいが、MSDSには助燃の危険性に関する記載を付けるべきであろう。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機物。
16 金属腐食性物質 区分1 警告 H290: 金属腐食のおそれ P234: 他の容器に移し替えないこと。
P390: 物的被害を防止するためにも流出したものを吸収すること。
P406: 耐腐食性/耐腐食性内張りのある...容器に保管すること。
アルミニウムと激しく反応することが知られている(Bretherick(J)(1998))ので、国連で定められた試験をするまでもなく、「区分1」と判断される。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口LD50に 1700 mg/kg(RTECS(2004))、2600 mg/kg(IUCLID(2000))という値があり、小さい方を採用して「区分3」とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - 経皮吸収致死毒性のデータがなく、分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - (GHS定義による)液体。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットでの適切なデータがないので、マウスの2データ(ACGIH(2001))を4時間に換算して、LC50: 120ppm, 61.5ppm を得た。小さい方を採って「区分1」とした。EUリスクフレーズではT+;R26を当てている。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - ミストでの吸入致死毒性試験データがなく、分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットでの実験結果(IUCLID(2000))は刺激となっているが、ヒトで皮膚腐食の記載があり(PATTY(5th. 2001), HSDB(2005), HSFS(1998))、EUでもR35のリスクフレーズを当てているので「区分1」とした。A-Cの細区分を行う実験データはないが、国連危険物輸送勧告でクラス8容器等級Iとしているので、「区分1A」と考えられる。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ACGIH(2001)にある動物実験は蒸気への暴露で、液体を眼に投与したものではない。別の個所に激しい眼刺激と記載されている。HSFS(1998)にも激しい眼刺激の記載がある。皮膚刺激の区分が1なので、GHSの規定により、眼も「区分1」となる。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがなく、分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データがなく、分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - 変異原性に関する試験報告がなく、分類できない。
6 発がん性 分類できない - - - - 試験報告がなく、分類機関の評価結果もないので「分類できない」とした。IUCLID(2000)に採録されている白須先生らの実験結果は燻蒸剤・臭化メチルの評価であり、臭素元素についてのものではない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 生殖毒性に関する実験データ、疫学情報がなく、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系、中枢神経系) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器系、中枢神経系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
区分1のガンダンス値(2500ppm)を下回る暴露量(300ppm)の動物実験で、中枢神経機能障害、肺、気管への障害、および消化器粘膜の出血が見られている(ACGIH(2001))。ヒトでも呼吸器系、中枢神経系に関わる症状が記載されている(PATTY(5th. 2001))ので「区分1(中枢神経系、呼吸器系)」とした。気道刺激は呼吸器系にまとめた。消化器系への影響は、この物質の腐食性によるものとして臓器毒性には採用しない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系、神経系、内分泌系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系、神経系、内分泌系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
区分1のガイダンス値(経口10mg/kg/d、吸入(蒸気)50ppm/6h/d)を下回る暴露量の動物実験で、呼吸器系、神経系、内分泌系への影響が報告されている(ACGIH(2001), PATTY(5th. 2001))ので、これらを標的臓器として「区分1」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - 蒸気吸入による化学肺炎の記載はある(IUCLID(2000))が、吸引による影響の報告はなく、分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=1000μg/L(AQUIRE、2003)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、水中での挙動および生物蓄積性が不明であるため、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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