GHS分類結果

名称:エタノール
CAS番号:64-17-5

結果:
物質ID: 662
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を有しない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点13℃、沸点78.5℃に基づいて区分2とした。 なお、国連分類はNo.1170、クラス3、PGIIまたはIIIである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性あるいは自己反応性に関わる原子団を有しない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が422.78℃(ACGIH(2001))(>70℃)であるので区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素、塩素を含んでいない。酸素を含んでいるが炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-を有しない。
16 金属腐食性物質 区分外 - - - - 国連分類クラス3(No.1170)に分類されている。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - 「ラット経口LD50 = 6.2 - 17.8 g/kg bw. > 5 g/kg bw」(DFGOT vol.7(1996, p148))および(PATTY(5th, 2005, p385))の記載により区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - 「ラット吸入LC50=20000ppm/10H(RTECS(2004))は、20℃でのエタノール飽和蒸気圧濃度56580ppm以下であるので蒸気による吸入試験と考えられる。さらに、20000ppm/10H *√10/√4= 31600ppm/4h > 12500 ppm(気体 5000 ppm(区分4)*2.5)に基づいて区分外とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - 「ラット吸入LC50(4h)= about 63000ml/m3=63000ppm(DFGの定義による。DFGOT(1996))は、20℃でのエタノール飽和蒸気圧濃度56580ppmを超えているのでミストによる吸入試験として分類した。さらに、63000ppm*1.88mg/m3=118mg/L > 12.5 mg/L(ミスト 5mg/L(ミスト区分4)* 2.5)に基づいて区分外とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 「OECD TG404 および American guidelinesに従った試験により、刺激性でない」(DFGOT(1996))の記載により区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A-2B 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
「OECD TG405 および Draize testに従った試験により、moderateと分類されている」(DFGOT(1996))こと、また「ヒトで角膜上皮の傷害、結膜充血は1、2日間で回復する」(ACGIH(2001))の記載に基づき、区分2A-2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - 「ヒトでは、喘息患者のアルコール吸引による喘息誘発等の症例報告があるが、その起源はアレルギー反応とはみなされていない」(DFGOT(1996))。しかし、それ以外のヒトでの吸入感作性に関する知見、動物の吸入感作性試験データが見られないのでデータ不足により分類できないとした。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - 「ヒトでは、アルコールに対するアレルギー反応による接触皮膚炎等の症例報告がある」(DFGOT(1996))の記載が存在するが、「ヒトでは他の一級または二級アルコールとの交叉反応性が見られる場合があること、動物試験で有意の皮膚感作性は見られないことにより、エタノールに皮膚感作性ありとする十分なデータがない」(ACGIH(2001)、DFGOT(1996)、IUCLID(2000))の記述に基づきデータ不足のため分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分1B 危険 H340: 遺伝性疾患のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットおよびマウスにおける優性致死の報告およびマウス生殖細胞における異数性誘発の報告(DFG(1999), IARC(1988))に基づき、区分1Bとした。
6 発がん性 区分外 - - - - IARCでは「アルコール性飲料としてヒトに発がん性がある」としてグループ1に分類している。これは、アルコール性飲料を習慣的に摂取するヒトの多数の疫学調査に基づいて、アルコール性飲料と食道系および肝臓のがんの因果関係を認めたものである(DFGOT(1996))。 他方、ACGIHは、主として作業環境での有害性因子としてエタノールをA4(ヒト発がん性に分類できない物質、ACGIH(1996))に分類している。ここでは、嗜好品としてのアルコール性飲料の有害性を評価・分類するのではなく、エタノールの有害性を評価すると考え、ACGIHの分類A4および技術指針に従い、区分外とした。
7 生殖毒性 区分1A 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
アルコールの習慣的な大量摂取によりヒト胎児に対する奇形その他の悪影響が多数報告されている(DFGOT(1996))ので区分1Aとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
「ヒトでエタノールの経口摂取により中枢神経系に影響を与え、頭痛、疲労、集中力を低下させ(ICSC(2000))、急性中毒の場合は死に至ることがある」(DFGOT(1996))の記載および「ヒトで5000ppm(9.4mg/L)の吸入により気道刺激性、昏迷、病的睡眠を起こす(ACGIH(2001))との記載に基づき区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓)、区分2(神経) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(神経)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
「ヒトでアルコールの長期大量摂取によりほとんど全ての器官に障害を起こすが、最も悪影響を与える標的器官は肝臓である。障害は脂肪変性に始まり、壊死と繊維化を経て肝硬変に至る」(DFGOT(1996))の記載に基づき区分1(肝臓)とした。また、「アルコール中毒患者の禁断症状(振戦症状、てんかん、精神錯乱)」(HSDB、(2003))の記載に基づき区分2(神経)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=5463.9mg/L(ECETOC TR91、2003)から、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度=1.00×106mg/L(PHYSPROP Database、2005))、急性毒性が低いことから、区分外とした。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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