GHS分類結果

名称:ヒ酸鉛
CAS番号:7784-40-9

結果:
物質ID: 1078
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB, 2003)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB, 2003)。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(HSDB, 2003)。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に対して安定。(文献に「水に不溶」との記載がある。)
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 物質固有の国連番号(1617)によりUNRTDGが6.1、IIに分類されており、酸化性固体を示す5.1が付されていないため、区分外とした。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラット経口LD50値100mg/kg(RTECS, 2004)、80mg/kg(HSDB, 2003)のうち、値の低い80mg/kgを採用し区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - ラット経皮LD50値>2400mg/kg(RTECS, 2004)から、区分5あるいは区分外に該当するものと思われるが、データ不足で分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分3 - 警告 H316: 軽度の皮膚刺激 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 本物質は皮膚の発赤(ICSC, 1997)、粘膜と皮膚の炎症を生ずる(HSDB, 2003)、皮膚を刺激する(HSFS, 2001)との記述から、軽度刺激性を有すると判断し区分3とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
本物質は眼を刺激する(ICSC, 1997; HSFS, 2001)、無機ヒ素化合物粉塵は眼を刺激する(HSDB, 2003)との記述から、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - 本物質ならびに無機鉛化合物の知見はなく、無機ヒ素化合物としてヒトに皮膚感作性を示す可能性があるとしているが確定的な結論ではないこと(ATSDR, 2005; HSG, 1992)、加えて、EHC 224(2001)のヒトにおける記述”無機ヒ素の皮膚感作性の発現はまれである”ことから、データ不足により分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データなし。なお、ドイツDFGではヒ素および無機ヒ素化合物を生殖細胞変異原性カテゴリー3A(GHS区分1B-2相当)に分類しており、そこにはヒ酸鉛の1つである二ヒ酸三鉛(Pb3(AsO4)2, CAS 3687-31-8)が含まれている(MAK/BAT, 2005)。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC Suppl. 7(1987)、ACGHI-TLV(2004)、MAK/BAT(2004)においてヒ素およびヒ素化合物はヒト発がん性物質と分類されているため、区分1Aとした。
7 生殖毒性 区分1A 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトに生殖毒性を示す可能性(ICSC,1997)ならびに無機鉛化合物はヒトに生殖毒性を示す(ACGIH-TLV, 2005; ATSDR draft, 2005)としていることから、区分1Aとした。なお、ACGIH-TLV(2005)では、ヒ酸鉛の1つである二ヒ酸三鉛(Pb3(AsO4)2、CAS 3687-31-8)について、生殖への重大な影響があるとしている。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(消化器系、神経系)、区分3(気道刺激性) 警告
危険
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
H370: 臓器の障害(消化器系、神経系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は短期暴露により胃腸管、神経系に影響を与える、気道を刺激する(ICSC, 1997)、無機鉛化合物は中枢神経系、血液、腎臓に影響を与える(ACGIH-TLV, 2005)、無機ヒ素化合物は胃腸器官の症状、心血管系および神経系機能の障害、骨髄抑制、血液系の変化、腎症をおこす(EHC 224, 2001)との記述から、区分1(消化器系、神経系)、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(消化器系、神経系、血液系、腎臓、肝臓、呼吸器系、皮膚) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(消化器系、神経系、血液系、腎臓、肝臓、呼吸器系、皮膚) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は反復暴露により胃腸管、神経系、腎臓、肝臓、血液に影響を与える(ICSC, 1997)、ヒ酸鉛の1つである二ヒ酸三鉛Pb3(AsO4)2 [3687-31-8]として、中枢神経系、貧血症、腎臓に影響を与える(ACGIH-TLV, 2005)、また、無機ヒ素化合物に関する記述”無機ヒ素の長期経口摂取で、胃腸管障害、神経障害、血液系への影響、心血管系、腎臓、肝臓の異常が見られた。標的臓器は胃腸管、心臓、脳および腎臓である。皮膚、骨髄および末梢神経系も影響を受ける”(EHC 224, 2001; PIM, Poisons Information Monographs G042, WHO/IPCS, 1996)、上部気道および肺へ影響(ACGIH 7th, 2001)、さらに無機鉛化合物には中枢神経系、血液、腎臓への影響がある(ACGIH-TLV, 2005)ことから、区分1(消化器系、神経系、血液系、腎臓、肝臓、呼吸器系、皮膚)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る