GHS分類結果

名称:クロム酸ナトリウム(10水塩)
CAS番号:13517-17-4

結果:
物質ID: 1168
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
6 引火性液体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 2001)の無水物に結晶水が結合したものであり、不燃性と考えられ、区分外とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 2001)の無水物に結晶水が結合したものであり、不燃性と考えられ、区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 2001)の無水物に結晶水が結合したものであり、不燃性と考えられ、区分外とした。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に対して安定。(水溶解度の数値が得られている。)
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体。
14 酸化性固体 分類できない - - - - ICSC(J)(2001)およびHSDB(2005)に無水物は「強力な酸化剤」との記載があり、本物質も酸化性が強いと考えられるが、データ不足のため分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
クロム酸ナトリウム無水物(CAS: 7775-11-3)に対する雄ラットLD50 = 87 mg/kg、雌ラットLD50 = 40 mg/kg(いずれもEU-RAR(2005))である。10水和物では分子量(約342)が無水物(約162)の約2倍であるため、換算により雄ラットLD50 = 約175 mg/kg、雌ラットLD50 = 約80 mg/kgとなり、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分5 - 警告 H313: 皮膚に接触すると有害のおそれ P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 クロム酸ナトリウム無水物(CAS: 7775-11-3)に対するウサギLD50 = 1330 mg/kg(EU-RAR(2005))である。10水和物では分子量(約342)が無水物(約162)の約2倍であるため、換算によりウサギLD50 = 約2800 mg/kgとなり、区分5とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。なお、本物質は潮解性のある黄色結晶だが、融点が19.9℃以下(結晶水に溶解)である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ミスト状態で実施されたクロム酸ナトリウム無水物(CAS: 7775-11-3)に対するラットLC50 = 0.104 mg/L/4h(EU-RAR(2005))である。10水和物では分子量(約342)が無水物(約162)の約2倍であるため、換算によりLC50 = 約0.2 mg/L/4hとなり、区分2とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の無水物(Sodium chromate(CAS: 7775-11-3)では、ヒトの皮膚に対して腐食性、重度の刺激性を示す、深部潰瘍を起こすとの記述がある(ICSC(2005); SITTIG(4th, 2002))。さらに、EUリスク警句では、腐食性(C; R34)と分類されている(EU-Annex I(Access on June 2006))ことから、区分1A-1Cとした。なお、本データからの細区分は困難である。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
本物質の無水物(Sodium chromate(CAS: 7775-11-3)では、ヒトの眼に対して腐食性を示す、重度の深部熱傷や視力障害を生じるとの記述がある(ICSC(2005); SITTIG(4th, 2002))ことから区分1とした。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の無水物(Sodium chromate(CAS: 7775-11-3)について、ヒトへの反復あるいは長期の吸入暴露により喘息を引き起こすことがある(ICSC(2005))ことに加え、EUリスク警句では「R42(吸入により感作を引き起こすことがある)」に分類されている。また、日本産業衛生学会では、クロム及びクロム化合物を「第2群(人間に対しておそらく感作性があると考えられる物質)」、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会ではクロムを呼吸器感作性がある物質に分類していることから、本物質は呼吸器感作性を有すると考えられ、区分1とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の無水物(Sodium chromate(CAS: 7775-11-3)について、ヒトの皮膚に対して感作性を示すとの記述がある(ICSC(2005), SITTIG(4th, 2002))ことに加え、EUリスク警句では「R43(皮膚接触により感作を引き起こすことがある)」に分類されている。また、DFGでは六価のクロム化合物を「Sh(皮膚感作の危険性)」、日本産業学会ではクロム及びクロム化合物を「第1群(人間に対して明らかに感作性がある物質)」に分類していることから、本物質は皮膚感作性を有すると考えられ、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質(クロム酸ナトリウム無水物(CAS: 7775-11-3)を含む)のデータとしてはin vitro変異原性試験(Ames、染色体異常)における陽性(IARC 49, 1990)のみであるが、高水溶性六価クロム化合物については、in vivoにおける変異原性知見が示されている(NTP RoC(11th, 2005), IARC49(1990), EU-RAR(2005))ことから、区分2とした。二クロム酸カリウム(ID262, CAS: 7778-50-9)を参照のこと。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
六価のクロム化合物として、NTP(2005)でK(Chromium hexavalent(VI)compoundsとして)、IARC(1990)でgroup 1(Chromium(VI)として)、EPA(1986)でA(Chromium(VI), Inhalation routeとして)と分類されていることから、区分1Aとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 本物質としての具体的なデータがなく、データ不足のため分類できない。 なお、六価のクロム化合物の生殖毒性については、二クロム酸カリウム(ID262, CAS: 7778-50-9)を参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器系、腎臓、肝臓) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Priority 1の文書に記載されているラットに対する吸入試験(ミストと推察)では、クロム酸ナトリウム無水物(CAS: 7775-11-3)の0.028 mg/L/24hで肺水腫、炎症、気管上皮の壊死が見られている(EU-RAR(2005))。この用量は0.17mg/L/4hに相当し、10水和物の量に換算(約0.34 mg/L/4h)した場合区分1のガイダンス値に含まれる。また、ACGIH-TLV(2005)において、水溶性六価クロム化合物は肝臓、腎臓、呼吸器に影響を与えるとあること、さらにPriority 2の文書中、「ヒトの気道に腐食性がある、経口摂取による腐食性を示す、腎臓及び肝臓に影響を与え、組織を損傷する」との記述がある(ICSC(2005))ことから、区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系、腎臓、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Proiority 1の文書中、水溶性六価クロム化合物は肝臓、腎臓、呼吸器に影響を与えるとあること(ACGIH-TLV(2005))、さらにPriority 2の文書中、「ヒトの呼吸器に影響を与え、鼻中隔穿孔を引き起こす、腎臓に障害を与える」との記述がある(ICSC(2005), SITTIG(4th, 2002))ことから、区分1(呼吸器系、腎臓、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データがなく分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データがなく分類できない。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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