GHS分類結果

名称:イソブチルアルデヒド
CAS番号:78-84-2

結果:
物質ID: 1-035
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Lide(88th,2007)による引火点は-18℃、沸点は64.5℃であるので区分2に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点196℃(Lide,88th,2007))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50値3,730 mg/kg(SIDS(2004))、1,600-3,700 mg/kg(SIDS(2004))、960 mg/kg(NTP TR 472(1999))のうち最小値960 mg/kgから区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値7.1 mL/kg(換算値5,635 mg/kg)(SIDS(2004))から区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - 25℃における飽和蒸気圧濃度は227,632 ppmである。ラットを用いた30分吸入暴露試験のLC50値6,000 ppm(NTP TR 472(1999))なので気体基準を適用し、4時間換算値21,213 ppmから区分外とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験においてPII=0.13(ECETOC TR66(1995))であることから刺激性なしと考えられ、また、not irritatingのデータ(IUCLID(2000))がGLP: yesで2件あることから、区分外とした。 なお、ウサギを用いた皮膚刺激性試験で、「ウサギにmoderateからsevereの刺激及び火傷があり、6匹中1匹に紅斑が生じる」(SIDS(2004))、及び「皮膚に対する刺激性を含む」(NTP TR472(1999))、「他のアルデヒドと類似の刺激」(PATTY(5th, 2001))の記述があるが、いずれも1952年のデータで、GLP不明であり、試験条件が不明である。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - ウサギを用いた眼刺激性試験で、「severe eye irritation」(SIDS(2004))及び「irritation」(NTP TR472(1999)、PATTY(5th, 2001))との記述があるが、いずれもGLP不明であり、試験条件が不明である。また、IUCLID(2000)には、ウサギを用いた眼刺激性試験(いずれもGLP: yes)で「not irritating」と、「slightly irritating」の記述がある。「severe eye irritation」から「not irritating」まで評価が分かれているため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - マウスを用いた皮膚感作性試験のデータ(SIDS(2004)、NTP TR 472(1999))で、「20 mLのイソブチルアルデヒドを除毛した耳にアジュバント有無で、5日間連続で投与したところ、ともに炎症や過敏症は見られなかった」との記述から区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
体細胞in vivo変異原性試験(マウスの骨髄細胞を用いた染色体異常試験)で陽性(SIDS(2004))であることから、区分2とした。 なお、体細胞in vivo変異原性試験(ラットやマウスの骨髄細胞を用いた小核試験)はともに陰性(SIDS(2004))であるが、体細胞in vivo遺伝毒性試験(CHO細胞を用いた染色体異常試験及び姉妹染色分体交換試験)はともに陽性(NTP DB(Access on September 2008))である。
6 発がん性 区分外 - - - - 主要な国際的評価機関による評価がなされていないが、雌雄ラットを用いた105週間吸入暴露の発がん性試験結果は「暴露群と非暴露群とで差異が見られなかった」(SIDS(2004)、NTP TR 472(1999))と記述されている。また、ラット及びマウスの雌雄を用いた2年間吸入暴露試験で、「発がん性の兆候はなかった」(SIDS(2004)、NTP TR 472(1999))との記述がある。また、「ラットやマウスで発がん性はない」(PATTY(5th, 2001))との記述がある。以上より、区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いたOECD発生毒性ガイドライン吸入暴露試験で、「母動物については、体重増加の抑制や鼻粘膜の損傷が起きた用量で、発生毒性は生じない」(SIDS(2004))との記述がある。また、ラットやマウスを用いたNTPの13週間吸入毒性試験で、「雄ラットでの精子の運動性や精子密度、精子形態への本物質の影響はない」(SIDS(2004))、また、「雄マウスの生殖器官の重量や精子への影響は見られなかった」(SIDS(2004))と記述されているが、雌動物の生殖機能への影響が不明なため、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与、腹腔内投与、吸入暴露試験のデータで、「肺への損傷、胃腸管の壊死」(NTP TR472(1999))とあるが、一次文献が確認できなかったため投与量や回復性が不明であり、肺と消化器については分類できない。急性毒性としての「呼吸器刺激」(PATTY(5th, 2001))の記述から区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットやマウスを用いた90日間吸入暴露試験で、「ラットでは鼻甲介扁平上皮化生や骨形成異常症がみられた。マウスでは、鼻腔内の非腫瘍性の炎症、腎臓重量の著しい減少、活動の低下、振戦、虚弱、呼吸困難などがみられたが、剖検では肉眼的病変は認められなかった」(NTP TR472(1999))との記述がある。また、「ラットでは鼻腔上皮の壊死、咽喉や気管の炎症がみられた」(PATTY(5th, 2001))との記述がある。いずれも区分2のガイダンス値の範囲外で見られた影響であるが、ガイダンス値の範囲内での毒性は不明であり、他の暴露経路による試験データもないので、分類できない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。 なお、28℃における動粘性率は0.678(mm2/s)であるが、炭化水素ではないので該当しない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50 = 2 mg/L(IUCLID, 2000)から区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分2であるが、急速分解性があり(良分解;4週間標準法でのBOD:81%(既存点検, 1980))、生物濃縮性がないと推定される(log Kow = 0.74(PHYSPROP Database, 2008))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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