名称:1,2,4-トリクロロベンゼン
CAS番号:120-82-1
物質ID: | 1-290-1) |
分類実施者: | 経済産業省、環境省 |
分類実施年度: | 平成20年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関わる原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | Merck(14th,2006)による引火点は110℃であり、区分外に該当する。 |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点571℃(ICSC,2003))。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | フッ素および酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データがなく分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分4 | 警告 | H302: 飲み込むと有害 |
P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P330: 口をすすぐこと。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットを用いた経口投与試験のLD50値として1,107 mg/kg(雄)及び1,019 mg/kg(雌)(OECD TG401)(EU-RAR(2003))、756 mg/kg(EU-RAR(2003)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))、930 mg/kg(EU-RAR(2003)、DFGOT vol.3(1992))、880 mg/kg(EU-RAR(2003)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))との記述がある。OECD TG401準拠試験の結果より、区分4とした。 なお、EU分類はXn; R22(EU-Annex I)である。 | |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットを用いた経皮投与試験のLD50値として、11,356 mg/kg(OECD TG402)(EU-RAR(2003))、6,139 mg/kg(EU-RAR(2003)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))、11,415 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))との記述がある。また、ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値は約5,000 mg/kg(EU-RAR(2003))と記述されている。これらのLD50値に基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データがないので分類できない。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 区分外 | - | - | - | - | ラットを用いた7時間吸入暴露試験において、1,800 ppm(13.6 mg/L)で「有害影響なし」(EU-RAR(2003))との記述がある。本物質の25℃における飽和蒸気圧濃度は2.9 mg/Lよりミスト基準を適用すると、4時間換算LC50値は>17.7 mg/Lと考えられる。以上より、区分外とした。 なお、EU-RAR(2003)には他に、ラットを418 ppm(3.1 mg/L)で4時間吸入暴露した試験において「死亡は見られなかった」との記述、ラットを330 ppm(2.5 mg/L)で7.5時間吸入暴露した試験(4時間換算値:452 ppm(3.4 mg/L))において「症状なし」との記述がある。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | 動物については、EU-RAR(2003)に「OECD TG404準拠試験でslightな発赤、浮腫が見られ、slightな刺激」との記述があり、「単回暴露では通常、mildな炎症しか生じないが、反復接触後の炎症については明確な証拠があり、Xi; R38と分類される」と結論されている。また、DFGOT vol.3(1992)に「非希釈液はウサギ、モルモットに対してmildな刺激性物質である。明らかな皮膚病変は長期暴露でのみ生じ、この物質の脱脂作用によるものと思われる」旨の記述がある。ヒトについては、環境省リスク評価第4巻(2005)に、ヒトへの影響として「皮膚を刺激し、急性症状として皮膚の乾燥、発赤、ざらつきが現れる。また、長期間の暴露により、皮膚の脱脂が現れる可能性がある」と記述されているが、この記述はList3の情報源であるICSCを引用しているため、EU-RAR(2003)及びDFGOT vol.3(1992)の「mildな刺激性」との判断を優先する。以上より、国連GHS皮膚刺激性区分3に相当すると思われるが、国内では不採用区分につき、区分外とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | 動物については、EU-RAR(2003)に、「OECD TG405準拠試験において角膜、虹彩に影響は見られず、結膜では発赤スコアが1、浮腫スコアが0-2」との記述があり、「EUの基準に従うと眼への刺激性はないことが示された」と記述されているので、区分外とした。 なお、EU-RAR(2003)には、「US Federal Registerに記載の方法に従ったウサギを用いた試験において、明らかな痛み、重篤な結膜炎、結膜浮腫が見られ、ウサギの眼に対してirritating」との記述もあるが、この試験については「USとEUではDraizeスコアの解釈が異なり、USの基準を用いると、通常より厳しい評価となる」旨、記述されており、「本物質は何らかの眼刺激性を有するように思われるが、その影響はXi; R36の基準を満たすほどではないと考えられる」と結論されている。ヒトについては、環境省リスク評価第4巻(2005)に、ヒトへの影響として「眼を刺激し、急性症状として眼の発赤や痛みが現れる」との記述があるが、この記述はList3の情報源であるICSCを引用している。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データがないので分類できない。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分外 | - | - | - | - | モルモットを用いたMaximization試験(OECD TG406)において「陽性を示した動物は10%未満であり、感作性は弱いと考えられる」(EU-RAR(2003))と記述されている。また、モルモットを週3回で3週間暴露し、最終暴露の10日後に惹起した試験で「陰性」(EU-RAR(2003))との記述、さらに、別のモルモットを用いた試験で「皮膚刺激の症状を示したが、感作性の症状は示さなかった」(EU-RAR(2003))旨の記述がある。以上から、区分外とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | 体細胞in vivo変異原性試験として、「マウス骨髄赤血球を用いた小核試験(OECD TG474、GLP)で陰性」(EU-RAR(2003))との記述がある。一方、「マウス骨髄赤血球を用いた2つの小核試験で僅かな陽性結果が得られた」(EU-RAR(2003))との記述があるが、「これらは試験プロトコールがあまり適切でないので、陽性結果の妥当性には疑問が残る」旨、記述されている。以上からEU-RAR(2003)では「in vitro試験の陰性結果も合わせて考慮すると、本物質はin vivoでsystemicな遺伝毒性作用を生じるとは考えられない」と結論されているので、区分外とした。 |
6 | 発がん性 | 区分外 | - | - | - | - | EPAでDに分類されている(IRIS(1991))ため、ガイダンスに従い区分外とした。 なお、EHC 128(1991)、ACGIH(7th, 2001)には、「発がん性を評価するに足る十分な情報はない」旨、記述されている。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | EU-RAR(2003)に、ラットへの飲水投与による2世代生殖毒性試験において「F0、F1動物に統計学的に有意な副腎重量の増加が見られたが、受胎能、成長、生存、自発運動、血液生化学的所見に対する影響はなかった」旨、記述されているが、この試験は「親動物の体重に影響が見られておらず、試験用量が低すぎる」ことが指摘されている。また、妊娠6-15日のラットに強制経口投与した試験において、「母動物の肝臓に僅かな影響が認められた150 mg/kg投与群の胎児の眼の水晶体に組織病変が見られた」(EU-RAR(2003))旨の記述があるが、「300 mg/kg投与群ではこの影響は見られず、用量依存的ではなかった」こと等から、「本物質の暴露と関連があるようにはみえない」旨、記述されている(EU-RAR(2003))。この他、妊娠9-13日のラットに強制経口投与した試験において「母動物が2/9匹死亡し、体重増加が抑制された用量で、胚発生の遅れが見られたが、胚吸収率や生存胎児数、奇形発症率などへの影響は見られなかった」(EU-RAR(2003))旨、記述されている。以上より、生殖機能への影響が不明なため、分類できない。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(麻酔作用、気道刺激性) | 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(麻酔作用、気道刺激性) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
動物については、ラットを用いた単回経口投与試験において「250 mg/kg以上の投与群で肝臓の薬物代謝酵素(チトクロームP450等)の誘導、500 mg/kg以上の投与群で肝臓重量増加」(EU-RAR(2003)、DFGOT vol.3(1992))、ラットを用いた別の単回経口投与試験(投与量:750-3,100 mg/kg)で「鎮静、昏睡、虚脱、横臥等を生じ、病理検査で胃粘膜の変化や出血、clay-colored肝臓」(DFGOT vol.3(1992))が認められた旨、記述されている。ヒトについては、「一部のヒトには3-5 ppmで喉の刺激を生じ得ることが、産業経験より示唆される」(ACGIH(7th, 2001)、EU-RAR(2003))との記述、「経口摂取による腹痛、咽頭痛、嘔吐が現れる」(環境省リスク評価第4巻(2005))との記述がある。これらの内、肝臓、消化器については重大な影響とは思われないので採用しない。以上より、区分3(麻酔作用、気道刺激性)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分2(肝臓、腎臓、甲状腺、血液系) | 警告 | H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、腎臓、甲状腺、血液系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
動物については、ラットを用いた混餌投与試験において「肝臓、腎臓の重量の統計学的に有意な増加、組織病理学的検査で肝臓の空胞化や凝集状の好塩基性化(aggregated basophilia)、甲状腺において濾胞サイズの減少、上皮細胞の厚みの増加、コロイド密度の減少が見られ、肝臓、腎臓、甲状腺が標的臓器である」(EU-RAR(2003))旨、記述されており、別の、ラットを用いた混餌投与試験でも「肝臓、腎臓の重量の統計学的に有意な増加、雄で腎臓における尿細管拡張や硝子滴などの病理変化及び、小葉中心性の肝細胞肥大を生じた」(EU-RAR(2003))旨、記述されている。また、ラットを用いた強制経口投与試験において「副腎の重量増加、索状帯の中等度の空胞化」(IRIS(1991))、ウサギを用いた経皮投与試験(被験物質は、本物質以外に1,2,3-トリクロロベンゼン30%を含む)において「雌で赤血球数、ヘモグロビン値、赤血球容積比の用量依存的な減少(高用量群で有意な減少)」(EU-RAR(2003))が見られている。ウサギを用いた吸入暴露試験で「精巣重量が統計学的に有意に増加した。病理学的変化はない」(EU-RAR(2003))旨、記述されている。以上の症状は全て、区分2のガイダンス値範囲内で見られた。副腎、精巣については重大な影響とは思われないので採用しない。 ヒトについては、「トリクロロベンゼンに高濃度で暴露された場合、肝毒性を生じる可能性がある」(ACGIH(7th, 2001))旨の記述、及び「衣類をトリクロロベンゼンに漬けることを介して長期間暴露されていた女性1名に再生不良性貧血が生じた」(EHC 128(1991))との症例報告があるが、いずれも異性体の種類が特定されておらず、詳細も不明である。以上より、区分2(肝臓、腎臓、甲状腺、血液系)とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データがないので分類できない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 | 警告 | H400: 水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
甲殻類(ニセネコゼミジンコ)の48時間EC50/LC50 = 0.308 mg/L(CICADS 60, 2004)から区分1とした。 | |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 | 警告 | H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
急性毒性区分1であり、急速分解性がない(BIOWIN)ことから、区分1とした。 |
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