GHS分類結果

名称:1,2,3-トリクロロベンゼン
CAS番号:87-61-6

結果:
物質ID: 1-290-2)
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 危険物輸送勧告がクラス・区分6.1III(国連番号2321(HSDB(2008))で区分外とした。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 危険物輸送勧告がクラス・区分6.1III(国連番号2321(HSDB(2008))で区分外とした。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 試験温度の140℃において、液体または気体となる物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 塩素を含み、酸素、フッ素含まない有機化合物であるが、塩素は炭素とのみ結合している。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50値として、1,830 mg/kg(環境省リスク評価第4巻(2005)、DFGOT vol.3(1992))、>5,000 mg/kg(DFGOT vol.3(1992))、756 mg/kg(HSDB(2004))との記述がある。複数のデータが該当する区分を採用し、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ウサギの皮膚に本物質500 mgを4時間投与した試験において、「刺激性なし」(DFGOT vol.3(1992))との記述がある。一方、HSDB(2004)には、ヒトへの健康影響として「皮膚に対しmoderately irritating」との記述がある。他にデータがないので、データ不足のため分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
動物については、ウサギの眼瞼の結膜嚢に本物質100 mgを投与した試験で「mildな角膜混濁、moderateからsevereな結膜の発赤と腫脹が2/3匹に見られ、これらの症状は72時間後に消失」(DFGOT vol.3(1992))と記述されている。ヒトについては、HSDB(2004)のヒト健康影響の項に「一部の人では3-5 ppmでminimalな眼刺激が生じ得る」との記述、環境省リスク評価第4巻(2005)に「眼を刺激し、急性症状として眼の発赤や痛み」との記述がある。以上から、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - 体細胞in vivo変異原性試験(マウス赤血球を用いた小核試験)で「弱陽性」(DFGOT vol.3(1992))との記述があるが、この試験については、異性体1・2・4-トリクロロベンゼンに関するEU-RAR(2003)に、「試験プロトコールがあまり適切でないので、陽性結果の妥当性には疑問が残る」旨、記述されている。一方、in vitro変異原性試験(チャイニーズハムスター細胞を用いた染色体異常試験、ネズミチフス菌を用いたAmes試験)は「陰性」(CaPSAR(1993)、NTP DB(Access on December 2008)、DFGOT vol.3(1992))との記述がある。以上より、分類するための十分なデータがないので、分類できない。
6 発がん性 分類できない - - - - 主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 環境省リスク評価第4巻(2005)に、妊娠6-15日のラットに強制経口投与した試験で「母動物に肝臓重量の有意な増加、ヘモグロビン濃度及びヘマトクリット値の減少が見られたが、胎児数、胎児の体重、骨格及び内臓の奇形はみられなかった」旨、記述されており、同じ試験についてHSDB(2004)にはさらに、「妊娠結果の異常は暴露と関係ないようである」との記述もある。また、妊娠6-15日のラットに強制経口投与した試験において「母動物に肝臓、甲状腺の病変、ヘマトクリット値及びヘモグロビン濃度の減少が見られた。胎児に軽度な骨形成の変化(osteogenic changes)が見られたが、重大な奇形は見られない」(PATTY(5th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))との記述があり、DFGOT vol.3(1992)には、「催奇形性試験により胚毒性、胎児毒性はないことが示された」旨、記述されている。この他、ラットを用いた13週間混餌投与試験で「雌雄の生殖器官の重量及び組織への影響はみられなかった」(環境省リスク評価第4巻(2005))との記述がある。しかし、生殖機能への影響に関するデータがなく、データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(消化器系)、区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
H371: 臓器の障害のおそれ(消化器系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、HSDB(2004)の臨床影響の項に、「吸入暴露の結果、頭痛、鼻漏、咳、息切れ、胸痛、気管支痙攣、稀には上気道の腫脹や急性肺障害を生じるかもしれない」、「吸入後の咳、頻呼吸、喘鳴は一般的」、「経口摂取した場合、吐き気、嘔吐、下痢の可能性がある」との記述がある。また環境省リスク評価第4巻(2005)のヒトへの影響の項に「気道を刺激し、急性症状として咳、咽頭痛、経口摂取による腹痛、下痢、吐き気、嘔吐が現れる」と記述されている。以上より、区分2(消化器系)、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肝臓、甲状腺) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、甲状腺) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた13週間混餌投与試験において「雄で肝臓、腎臓の重量増加、雌雄で肝細胞容積の増大や核大小不同の増加、甲状腺で濾胞の縮小、濾胞上皮細胞の高さの増大、コロイド密度の低下がみられた」(環境省リスク評価第4巻(2005)、CaPSAR(1993)、PATTY(5th, 2001)、DFGOT vol.3(1992))旨、記述されている。これらの症状は区分2のガイダンス値の範囲内で見られているので、区分2(肝臓、甲状腺)とした。 なお、ヒトについては、「長期間、クロロベンゼン類に作業着を浸して洗濯していた女性が再生不良性貧血を発症した」(環境省リスク評価第4巻(2005)、PATTY(5th, 2001))旨の記述、「トリクロロベンゼン類に暴露された労働者28人の中に、頭痛、めまい、嗜眠、消化不良を訴える者が現れた」(環境省リスク評価第4巻(2005))旨の記述があるが、異性体が特定されておらず、本物質による影響かどうか不明なため、採用しない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) - - - - - -
11 水生環境有害性(長期間) - - - - - -


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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