GHS分類結果

名称:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
CAS番号:818-61-1

結果:
物質ID: 20A2057
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が101℃(HSDB(2003))で93℃超である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 不飽和結合として、アクリル基を含む。試験結果情報がなく、分類できない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が370℃(GESTIS(access on 7. 2008))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず酸素を含むが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を有していない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
5件のラットLD50値(540, 650, 540, 610, 1070 mg/kg)が得られ(SIDS(access on 7. 2008))、いずれも300mg/kg〜2000mg/kgの範囲にあることより区分4に分類した。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットとウサギのデータがあり(SIDS(access on 7. 2008))、値の低いウサギのLD50を採用した。4つのLD50値(154, 154, 250, 298mg/kg)のうち、2件が区分2、2件が区分3に該当したので区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットに4時間ばく露により、1.87mg/L で6匹中1匹が死亡、2.37mg/Lでは6匹中5匹が死亡した(SIDS(access on 7. 2008))ことから、LC50値(4時間)は1.87〜2.37 mg/Lと推定され、区分4に該当するので区分4とした。なお、飽和蒸気濃度は69.3ppm(0.329mg/L)であり試験はミストで試験されたと判断される。また、ラットに7時間ばく露の結果として、LC0 = 1.25 mg/L(4時間補正:2.19 mg/L)、LC100 = 10.58 mg/L(4時間補正:18.52 mg/L)が報告されている(SIDS(access on 7. 2008))。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギを用い正常または損傷皮膚に原液を24時間適用の結果、広範囲にわたり壊死(表皮)、皮下出血および圧痕浮腫が認められた(SIDS(access on 7. 2008))が、壊死は24時間適用による複数の試験で観察され、各試験とも「強い刺激性(highly irritating)」と評価されている(SIDS(access on 7. 2008))。しかし、4時間の適用では中等度の紅斑、重度の浮腫および6匹中2匹に表皮壊死が見られ、中等度の刺激性と評価され、本物質は腐食性ではないと結論されている(SIDS(access on 7. 2008))ことから区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギ眼に原液を適用することにより、水疱、腐食および/または潰瘍、また、重度の角膜壊死および眼瞼炎症が認められHighly irritating: とされている(SIDS(access on 7. 2008))。ウサギを用いた別の試験で、広範な結膜の炎症および角膜混濁を生じHighly irritating: Severe injury(Grade 5 reaction on a scale of 1-10)とされ、7日後も維持されていることから永続的視力障害の可能性が示唆されている(SIDS(access on 7. 2008))。以上の結果から、眼に不可逆的作用を示すと考えられ区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットのマキシミゼーション法(Maximization test)あるいはビューラー法(Buehler test)による皮膚感作性試験、およびマウスの局所リンパ節試験(Mouse local lymphnode assay)が実施され、各複数回の試験でいずれも感作性(sensitizing)を示し陽性結果が得られている(SIDS(access on 7. 2008))。さらにヒトの疫学調査あるいは症例報告では、本物質を含むアクリル化合物のばく露歴を有し、パッチテストで陽性反応を示した多数の報告がある(SIDS(access on 7. 2008))。これらのデータおよび報告に基づき区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 体細胞を用いるin vivo変異原性試験(マウスに経口投与後の骨髄細胞を用いた小核試験、及びラットに吸入ばく露後の骨髄細胞を用いた染色体異常試験)でいずれも陰性(SIDS(access on July 2008))の報告に基づき区分外とした。
6 発がん性 区分外 - - - - ラットに18ヵ月間吸入試験で発がん性を示す証拠は得られなかった(SIDS(access on 7. 2008))、またマウスに2年間経口ばく露した試験で腫瘍の発生増加はなく、発がん性を示す証拠は得られなかった(厚生労働省がん原性試験(2005))。しかし、ラットに2年間経口ばく露により、雄に肝細胞腺腫と前腫瘍性病変である好塩基性小増殖巣の増加が認められ、がん原性を示唆する証拠と考えられた(厚生労働省がん原性試験(2005))。ラットの経口による発がん性は明確ではなくラットの吸入試験とマウスの経口試験では陰性の結果が得られていることから区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠ラットの器官形成期に吸入ばく露により母体に毒性を示したが、仔の発生への影響は認められなかった(SIDS(access on 7. 2008))。しかし、交配前からのばく露による親動物の性機能および生殖能に対する影響についてはデータがなく分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(麻酔作用、気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口投与による急性毒性試験の一般症状として、全用量で活動低下が観察され、別の試験では正向反射の消失の記載もある(SIDS(access on 7. 2008))。また、ウサギの経皮投与による急性毒性試験では全用量で嗜眠が観察されている(SIDS(access on 7. 2008))。これらの結果から区分3(麻酔作用)とした。一方、ラットに飽和蒸気圧下で8時間吸入ばく露により死亡はなかったが呼吸困難と重度の粘膜刺激が見られたこと(SIDS(access on 7. 2008))、およびヒトで3 ppmの吸入ばく露で鼻腔刺激を生じ、工場労働者ではこれまでに気道刺激が報告されているとの記述(SIDS(access on 7. 2008))に基づき区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに28日間吸入ばく露(蒸気)の影響は5 ppmでは角膜刺激のみであったが、10 ppm(90日補正:0.015 mg/L)で鼻腔刺激(潰瘍性鼻炎)と息切れが見られ、さらに25 ppm(90日補正:0.037 mg/L)になると重度の呼吸困難を呈し、急激な体重減少とともに呼吸不全で死亡した(SIDS(access on 7. 2008))。その結果、ばく露の影響として呼吸器系と眼が示唆されたこと、かつ発現用量である10〜25 ppm(90日補正:0.015〜0.037 mg/L)がガイダンス値区分1に該当することから区分1(呼吸器系)とした。なお、イヌに97日間およびラットに100日間経口ばく露した試験ではいずれも試験物質の影響は認められていない(SIDS(access on 7. 2008))。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)による48h-EC50=5.2mg/L(環境省生態影響試験, 1998)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性分類は区分2であるが、急速分解性があり(28日でのBOD分解度=78%(既存化学物質安全性点検データ, 1991))、生物濃縮性が低いと推測されることから(LogPow=-0.21(PHYSPROP Database, 2008))区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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