GHS分類結果

名称:N-メチル-2-ピロリドン
CAS番号:872-50-4

結果:
物質ID: 20A2059
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が密閉式で92.78℃(換算値)(Merck 14th,2006)または86℃(溶剤ポケットブック,1994)であり、区分4の範囲内である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が346℃(Chapman ver.16:1,2008)、または245℃(DIN51794)(Ullmanns(E)6th,2003,vol.30)であり、概ね70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値は、4150 mg/kg 体重(CICADs(J)No.35,2001)、3500、3600、3800、4850、7900 mg/kg 体重(いずれもDFGOT vol.10,1998)、4320 mg/kg 体重(PATTY 5th vol.4,2001)であり、全て区分外(JIS)である。 この7つのデータのうち、7900 mg/kg 体重を除いて全て国連分類基準の区分5に該当することから、国連分類の区分5である。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値は7000 mg/kg 体重(DFGOT vol.10,1998)、ウサギのLD50値は6000 mg/kg 体重(DFGOT vol.10,1998)、ラットおよびウサギ(詳細不明)のLD50値は4000-10000 mg/kg(CICADs(J)No.35,2001)であり、またウサギおよびモルモットにおいて投与量2000 mg/kg で死亡なし(PATTY 5th vol.4,2001)との記述から区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - CICADs(J)(No.35,2001)の試験データより、ラットにおいてエアロゾル、熱蒸発、飽和蒸気の3 種それぞれの全身暴露の致死濃度が1.7 mg/l(元文献E.I. du Pont de Nemours and Company. Four week inhalation range-finding test on 1-methyl-2-pyrrolidone(Haskell Laboratory Report No. 582-77).1977)であるが、この濃度が飽和蒸気圧であるために実際はミストの状態と考えられ、分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットの頭部限定吸入暴露(4時間)において、5.1mg/Lで「死亡はみられなかった」(CICADs(J)No.35,2001)との記載があり、飽和蒸気圧濃度約1.7mg/Lよりミストと判断して区分外とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ヒトにおいて、「ヒト被験者(n = 50)に擦傷皮膚への24 時間貼付試験を計15 回実施すると、軽度〜中等度の一過性刺激が引き起こされた」(CICADs(J)No.35,2001)との記述がある。同じくヒトにおいて、「肌への刺激と接触性皮膚炎」(DFGOT vol.10,1998 ; PATTY 5th,2001,vol.4)の記載がある。ウサギのドレイズテストでは軽度の紅斑(ドレイズスコア0.5;区分外に相当)(CICADs(J)No.35,2001)がみられ、モルモットに水溶液を塗布した試験では、50%水溶液のみ軽度の紅斑(10匹中2匹)(CICADs(J)No.35,2001)がみられている。しかし、ウサギの皮膚に本物質を5-15分接触させた試験では重度の浮腫(DFGOT vol.10,1998)がみられており、ヒトでの皮膚刺激性を考慮して区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ヒトへの影響において、「重篤な眼刺激」(CICADs(J)No.35,2001)、「長期の眼刺激」(PATTY 5th,2001,vol.4)との記述がある。ウサギのドレイズテストでは、角膜混濁、虹彩炎、結膜炎がみられ、21日以内に消退している(CICADs(J)No.35,2001)。別のウサギを用いた試験でも、角膜混濁、紅斑、腫れがみられ、8日後も症状が続いた(DFGOT vol.10,1998)とある。その他ウサギを用いた試験でも、中等度(PATTY 5th vol.4,2001 ; IUCLID,2000)との記述があり、これらヒトと動物への影響から区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - ヒトで50人に擦傷皮膚への24 時間貼付試験を計15 回実施し、「接触感作の徴候は観察されなかった」(CICADs(J)No.35,2001)とあり、ヒトのパッチテストにおいても「感作性なし」(IUCLID,2000)との報告がある。またモルモットを用いた試験において、「24 および48 時間後の検査で感作は認められなかった」(CICADs(J)No.35,2001)との記述があり、ヒトおよび動物への皮膚感作能はないとの最終評価(CICADs(J)No.35,2001)から区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの小核試験、チャイニーズハムスターの染色体異常試験で陰性(いずれもCICADs(J) No.35,2001)であることから区分外とした。Ames試験においても陰性(CICADs(J) No.35,2001; NTP DB,2008)である。なお、マウスの優性致死試験で毒性徴候が報告されている濃度において「着床後胚損失が対照群に比べ有意に増加した」(CICADs(J)No.35,2001)とあるが、「十分な検証はできなかった」ことから考慮しなかった。
6 発がん性 分類できない - - - - ラットを用いた2年間吸入試験(DFGOT vol.10,1998 ; PATTY 5th,2001,vol.4 ; IUCLID,2000)において高用量のグループに腫瘍の発生は無く、マウスの17ヶ月間皮下注射試験(PATTY 5th,2001,vol.4 ; IUCLID,2000)では発生率がコントロールと同程度との記述がある。しかし、吸入経路(ラット)、経皮経路(マウス)ともに一種類の動物データしかないため、分類できないとした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口試験においては、母体重減少、子の生存率・成長率の低下、精巣・卵巣サイズの減少、内臓と骨格の奇形、停留精巣(CICADs(J)No.35,2001)がみられる。また、ラットの経皮試験では母体重増加の減少、胚吸収の増加、骨格異常(胸骨分節欠如、融合・分裂・過剰肋骨、頭蓋の閉鎖不全、脊椎の骨化不全、環椎および後頭骨の融合、減数または不完全な舌骨など)がみられたが、ウサギの経皮試験では母体毒性徴候はみられず、軽度の胎児毒性(骨格変異:副助骨の出現)がみられたのみである(いずれもCICADs(J)No.35,2001)。ラットの吸入試験では11データのうち8データにおいて親動物の体重、精巣・子宮重量や繁殖能への影響はみられず、生存同腹児・黄体・着床・死亡胎児・胚吸収・同腹児の数、胎児の奇形や変異(軽度の骨格変異を除く)の発生率にも影響はみられなかったが、母体毒性がみられない用量で着床前胚損失、骨化遅延がみられるデータとわずかな母体毒性と胎児毒性がみられるデータがある(いずれもCICADs(J)No.35,2001)。以上より、経口、経皮経路において子の発生に対する影響がみられ、吸入経路においても発生毒性を示すデータがあることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの症例は「重篤な眼刺激と頭痛」(CICADs(J)No.35,2001)であり、特定臓器・全身毒性とは分類できない。ラットの4時間吸入試験においては「速く不規則な呼吸、息切れ、疼痛反射の抑制、わずかな血性鼻分泌が認められた。暴露後は、多呼吸、鼻周囲被毛への軽度の出血痕」(CICADs(J)No.35,2001 ; DFGOT vol.10,1998)との記述があり、またマウスの2時間吸入試験においても「眼と上気道の刺激」(DFGOT vol.10,1998)との記述があるので区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(骨髄、脾臓、肝臓、呼吸器、副腎、腎臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(骨髄、脾臓、肝臓、呼吸器、副腎、腎臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの90日間経口試験(CICADs(J)No.35,2001)のNOAEL値が、169 mg/kg体重(雄)、217mg/kg体重(雌)であり、28日間経口試験(CICADs(J)No.35,2001 ; DFGOT vol.10,1998 ; PATTY 5th,200,vol.4)のNOAEL値が、514 mg/kg体重(90日補正用量:約160 mg/kg体重)、429 mg/kg体重(雄)(90日補正用量:約133 mg/kg体重)、1548mg/kg体重(雌)(90日補正用量:約482 mg/kg体重)でいずれもガイダンス値の区分外である。ウサギの20日間経皮試験(DFGOTvol.10,1998)では臓器に影響はみられず、ラットの13週間吸入試験(エアロゾル;ミスト)(CICADs(J)No.35,2001; DFGOT vol.10,1998)では精巣、血液に影響がみられたが、投与量が3 mg/Lであり、ガイダンス値の区分外。4週間吸入試験(エアロゾル;ミスト)(CICADs(J)No.35,2001 ; DFGOT vol.10,1998 ; PATTY 5th,200,vol.4)でも同様に投与量(90日補正用量:約0.3mg/L)がガイダンス値の区分外である。しかし、同じくラットの2週間吸入試験(投与量1.0mg/Lより蒸気と考えられる)(CICADs(J)No.35,2001)では、90日補正用量:約0.16mg/L(区分1の範囲内)で、骨髄細胞と脾臓(リンパ球)の減少と壊死、肝臓の壊死、多発性膿状肺炎(multifocal purulent pneumonia)、腺胃の潰瘍、副腎重量増加がみられ、5ヶ月間吸入試験(投与量0.1-0.15mg/Lより蒸気と考えられる)(DFGOT vol.10,1998)でも区分1の範囲内で肺と腎臓に変化がみられる。よって、吸入経路でのみ区分1(骨髄、脾臓、肝臓、呼吸器、副腎、腎臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 藻類(セネデスムス)、甲殻類(オオミジンコ)及び魚類(ニジマス)の毒性値はいずれも>100 mg/Lである(SIDS, 2007)ことから区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度:1000000 mg/L(SRC, 2005))、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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