GHS分類結果

名称:1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン
CAS番号:119-64-2

結果:
物質ID: 20A2107
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が82℃(Merck(14th, 2006),HSDB(2003))であり、60℃より大きくかつ93℃以下である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が385℃(HSDB(2003),ICSC(2004),NFPA(13th, 2006))であり、70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50が 2860 mg/kg bw(SIDS(access on 8. 2008))はJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)に該当する。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50がca.16800 mg/kg bw(SIDS(access on 8. 2008))、17300 mg/kg bw(PATTY(5th, 2001))、ラットLDLoが7300 mg/kg bwを超える(PATTY(5th, 2001))より区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットの蒸気で試験したLC50値 275ppm(8時間ばく露)(4時間換算:389ppm、2.10 mg/L)(PATTY(2000))は区分2に該当する。なお飽和蒸気濃度は488ppmであることから試験はほとんどミストを含まない蒸気で試験されたと考えられた(気体の評価値を用いて評価)。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、ラットのミストで試験をしたLCLoが1.3 mg/L [4時間換算; 2.6(mg/L)] を超える(区分4または区分外)とのデータがある(PATTY(5th, 2001))。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギを用いた4時間適用の皮膚刺激試験(OECD TG404)において平均ドレイズスコア は紅斑3.11、浮腫1.56で中程度の刺激性とされ14日まで炎症が残る(SIDS(access on 8. 2008))。またEUのリスク警句はR36/38で区分2相当であることから区分2と判断した。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いたDraize試験(OECD TG 405)で平均スコア5.17/110、6日以内に完全に回復しno significant irritatingとされ、他のウサギを用いた試験の結果は0.5 ml処理で、スコア1/10、slightly irritating、no damage(SIDS)とされている(いずれもSIDS(access on 8. 2008))ことから区分外とした。なお、SIDSの結論は動物試験では刺激性がないが、ヒトのデータから高濃度の気相の暴露では刺激により大量の涙が出ることがあるとしている。その他PATTY、HSDBでは同様にヒトで刺激性があるとしているが、症状は記載されていない(専門家判断)。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたmaximization test(OECD TG406)において感作性なしの記載SIDS (access on 8. 2008) より区分外と判断した。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの強制経口投与による小核試験で陰性(SIDS(access on 8. 2008);IUCLID(2000))、マウスの吸入ばく露(6時間・13週)による小核試験で陰性(SIDS(access on 8. 2008)(いずれも体細胞in vivo変異原性試験)の結果より区分外とした。なお、in vitro変異原性試験:エームステストで陰性、マウスリンフォーマ試験で陽性/陰性のいずれとも判定できない結果とされているSIDS(access on 8. 2008)。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた発生毒性試験(OECD TG414)において仔の発生に対する影響は確認されていない(SIDS(access on 8. 2008)。マウスの13週間吸入ばく露(6時間・5日/週)試験において子宮及び卵巣の萎縮が認められているが(SIDS(access on 8. 2008)、性機能および生殖能に関する試験データがないことからデータ不足により分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口投与試験において2,000 mg/kgの用量以上で不活発、prostration、昏睡の症状が認められ(SIDS(access on 8. 2008))、ヒトにおいて頭痛、混迷などの症状が報告されている(SIDS(access on 8. 2008))ことから区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(血液) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた28日間経口投与試験において150 mg/kg/dayで溶血性貧血が見られ、投与終了2週後も持続し、二次的影響として網状赤血球数の増加と脾臓における髄外造血の増強が報告されている(SIDS(access on Aug. 2008))。一方、ラットあるいはマウスに13週間吸入ばく露した試験でも主として0.333 mg/Lおよび0.666 mg/Lの濃度で、再生性貧血あるいは赤血球数減少を含む血液指標の変化が報告されている(SIDS(access on Aug. 2008))。以上の結果により、溶血性貧血またはそれに関連する症状の発現用量、即ち28日間の経口ばく露における150 mg/kg/day(90日補正:46.7 mg/kg/day)、および13週間の吸入ばく露における0.333 mg/L〜0.666 mg/Lがいずれもガイダンス値区分2の範囲に入ることから、区分2(血液)とした。なお、主に高用量群で散見されたその他の変化については毒性学的意義が不明である。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ゼブラフィッシュ)の96時間LC50 = 3.2 mg/L(SIDS, 2008)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分2であるが、急速分解性があり(BODよる分解度:81%(SIDS, 2006))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=3.78(SIDS, 2006))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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