GHS分類結果

名称:ブチルアルデヒド
CAS番号:123-72-8

結果:
物質ID: 20A2110
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が-6.67℃(密閉式)(Merck 14th(2006)No.1591)で、初留点が74.8℃(Merck 14th,2006 No.1591、Ullmanns(E)6th,2003 vol.5)であることから区分2とした。また、TDG分類においてもクラス3、パッキンググループIIであるので区分2である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない、かつ自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が190℃〜230℃(Chapman Ver.16:1,2008、NFPA 13th,2006、ホンメル,1996)で70℃以上であり、TDG分類がクラス3(UN No.1129)であることから区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値2490、2500、4160、5890、5900 mg/kg 体重(IUCLID,2000)に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値5730μL/kg(比重換算値4584 mg/kg)(PATTY 5th vol.5,2001)により、JISにおける区分外とした。また国連分類基準では区分5に相当する。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - 飽和蒸気圧濃度は、蒸気圧111mmHg(換算値 14796Pa, 25℃)(HSDB,2003)より換算すると約146495 ppmとなる。ラットの30分吸入試験におけるLC50値が60000 ppm(PATTY 5th vol.5,2001)であり、飽和蒸気圧濃度の90%より低く「ミストがほとんど混在しない蒸気」として区分した。LC50値60000 ppmを4時間に換算すると21213 ppmとなり、区分外に該当する。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - IUCLID(2000)におけるウサギを用いた二つの試験(いずれもOECD TG404、GLP)で「刺激性なし」および「軽度の刺激性(slightly irritating)」とあり、JIS分類基準の区分外(国連分類の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ヒトで、労働現場でのブチルアルデヒドによる角膜損傷が起きたが完全に回復した(HSDB,2003)とあり、IUCLID(2000)におけるウサギを用いた試験(OECD TG405、GLP)で「軽度の刺激性(slightly irritating)」とあるため区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 体細胞 in vivo 変異原性試験であるマウスの末梢血小核試験(食品健康影響評価,2007)において陰性であるため区分外とした。なおin vitroでは、二つのエームス試験で陰性(PATTY 5th vol.5,2001 ; 食品健康影響評価,2007)、CHO細胞を用いた細胞遺伝学試験で陰性(IUCLID,2000)、ヒトのリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性(IUCLID,2000)、ヒト肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で陰性(IUCLID,2000)であり、HGPRT試験で陽性(IUCLID,2000)、CHO細胞を用いた姉妹染色分体交換試験で陽性(IUCLID,2000)、CHL/IU細胞を用いた染色体異常試験で陽性(食品健康影響評価,2007)、ラット肝細胞を用いた不定期DNA合成試験で弱陽性(PATTY 5th vol.5,2001)である。
6 発がん性 分類できない - - - - ヒトへの影響において、「ブチルアルデヒドの暴露は労働者における気道上皮のがんと高温での処理に関する肺がんに関係しているかもしれないが、他の反応性の高いアルデヒド類の暴露可能性もあり、ブチルアルデヒド単独の反応かは不明である」(PATTY 5th vol.5,2001)とあり、分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで「粘膜や上部気道に極めて有害」(PATTY 5th vol.5,2001)とあり、げっ歯類の吸入試験(PATTY 5th vol.5,2001)において6000ppm(17.7mg/l:蒸気)以上で「気管支の浮腫と肺胞水腫」がみられるため区分1(呼吸器)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットを用いた90日間強制経口投与試験(食品健康影響評価,2007)において「300 mg/kg 体重/日投与群で前胃/腺胃の境界縁または前胃に軽度の扁平上皮過形成が認められた。」および「1,200mg/kg体重/日投与群で前胃/腺胃における潰瘍性病変が、雄の300mg/kg体重/日以上の投与群及び雌の600mg/kg体重/日以上の投与群の鼻腔に炎症が観察された。」との記述があり、NOAELをそれぞれ100 mg/kg体重、150 mg/kg体重(雄)・300 mg/kg体重(雌)としている。このNOAEL値は、ガイダンス値の上限と一致またはガイダンス値の範囲外であるので区分外(経口)に該当するが、他経路のデータが十分でなくデータ不足で分類できないとした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50が13.4 mg/L(AQUIRE, 2008)から区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分3であるが、急速分解性があり(良分解性、BODによる分解度:100%(既存点検, 1979))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow= 0.88(SRC, 2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る