名称:N‐(ホスホノメチル)グリシン(別名グリホサート)
CAS番号:1071-83-6
物質ID: | 20A2213 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成20年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関わる原子団を含んでいない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 自己反応性に関連する原子団(P-O)を含んでいるが、自己反応性に関するデータが無く分類できない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 文献に水溶解度(Merck 14th,2006 ; HSDB,2006 ; Ullmanns(E)6th,2003)があり、水に対して安定である。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | List1におけるラットのLD50値は、>5000 mg/kg 体重(EHC,1994 ; JMPR,2004)のデータが5つ、5600 mg/kg 体重(JMPR,2004)のデータ が1つある。これらに基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値 は>2000 mg/kg 体重(EHC,1994)であり、ウサギのLD50値は3つのデータがともに>5000 mg/kg 体重(EHC,1994 ; JMPR,2004)である。これらに基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | ラットのLC50値(4h)>4.98 mg/L(死亡なし), >4.43 mg/L(雌雄ともに2/5匹で死亡または瀕死)(いずれもJMPR,2004)があり、飽和蒸気圧2.6×10^-9 mg/L(蒸気圧:2.89×10^-10 mmHg、Howard, 1997)より、「粉塵」と考えられる。これらのLC50値は、区分4または区分外のどちらか判断できないため、分類できないとした。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | ウサギを用いた試験(US EPA guidelineまたはOECD TG 404、GLP)において「軽度の刺激性(slightly irritating)」(EHC,1994)がみられるが、ドレイズスコア値0.8より区分外に相当する。その他のウサギを用いた4つの試験(US EPA guidelineまたはOECD TG 404、GLP)は全て「刺激性なし」(EHC,1994 ; JMPR,2004)であり、区分外とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | 危険 | H318: 重篤な眼の損傷 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P310: 直ちに医師に連絡すること。 |
ウサギを用いた3つの試験(US EPA guidelineまたはOECD TG 405、GLP)において、21日間の観察期間中に回復しない症状が認められる。1つ目の試験では、角膜混濁と結膜の水疱形成(6/6匹)、角膜パンヌス(3/6匹)、結膜への血管形成(1/6匹)と血液様分泌物(blood like discharge)(1/6匹)がみられ、5匹中3匹で21日間継続している(EHC,1994)。2つ目の試験(US EPA guidelineまたはOECD TG 405、GLP)でも、結膜混濁、結膜の発赤、結膜浮腫が全ての動物でみられ、6匹中2匹で21日間継続している(JMPR,2004)。また3つ目の試験でも、角膜と虹彩、結膜の症状がみられ、そのうち軽度の角膜での反応が21日間継続している(EHC,1994)。以上のことから、区分1とした。なお、EU分類においてもR41であり、これは区分1に相当する。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分外 | - | - | - | - | モルモットのBuehler Test(GLP)において「感作性なし」(JMPR,2004)であり、その他2つのMaximization Test(US EPA and the OECD TG 406, GLP)においても同様に感作性はみられなかった(JMPR,2004 ; EHC,1994)ことから、区分外とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | マウスの複数の小核試験(経口で3例、腹腔内で1例)(体細胞in vivo変異原性試験)で陰性、マウスの優性致死試験(生殖細胞in vivo継世代変原性試験)で陰性結果(いずれもJMPR(2004))に基づき区分外とした。なお、マウスの腹腔内投与による小核試験の1データで弱陽性であり、マウスのDNA損傷試験でも陽性での結果がある(いずれもJMPR(2004))、が、in vitroでは、エームス試験(JMPR(2004))、マウスリンフォーマ試験(JMPR(2004))、CHO細胞を用いたHGPRT試験(HSDB(2006))、ヒトリンパ球を用いた細胞遺伝学的試験(JMPR,2004)で多数の陰性結果がある。 |
6 | 発がん性 | 区分外 | - | - | - | - | ラット(SD)を用いた2年間混餌試験(US EPA guideline, OECD TG 453、GLP)において、統計的に有意な脾島細胞腺腫の発生率増加が雄の低用量からみられたが、「コントロールの発生率はヒストリカルコントロールの範囲より下であり、発生率の増加は傾向検定では否定的であった。脾臓にがんはみられない。」(EHC,1994)との記述があり、同じ試験についてJMPRでは「発がん性の徴候を引き起こさない。」 と結論づけている(JMPR,2004)。同じくラット(Alpk:APfSD(Wistar-derived))を用いた2年間混餌試験(US EPA guideline, OECD TG 453、GLP)において、用量依存性の統計的に優位な腫瘍の発生率増加はみられない(JMPR,2004)。マウスを用いた104週間混餌試験(US EPA guideline, OECD TG 451、GLP)においても、統計的に有意な腫瘍の発生率増加はどちらの性別でもみられない(JMPR,2004)。また、EPAによる発がん性分類はDであり、これは区分外に相当する。以上の結果から、区分外とした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 | 警告 | H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ウサギを用いた2つの催奇形性試験(OECD TG 414、GLP)において、一方は、親動物への一般毒性(摂餌量の減少、軟便・液状便、体重増加抑制)が発現する用量(150, 450 mg/kg 体重/日)で、胚死亡と着床後死亡の発生率が増加し、胎児に心室中隔欠損など心臓に対する異常がわずかにみられる(JMPR,2004)。他方は、親動物への一般毒性(摂餌量の減少、下痢、体重増加抑制)が発現する用量(300 mg/kg 体重/日)で、胎児に部分的骨化(脊椎骨、胸骨分節)と骨化減少(四肢)がみられるが、これは中間用量ではみられず、低用量と高用量のみである(JMPR,2004)。ラットを用いた2つの2世代生殖毒性試験(US EPA guideline, OECD TG 416、GLP)においては、親動物への一般毒性(摂餌量と摂水量の減少、体重減少、唾液腺の細胞変化)が発現する用量で、性機能(sexuality)と生殖能(fertility)に影響はみられない(JMPR,2004)。ラットを用いた催奇形性試験(US EPA guideline, OECD TG 414、GLP)において、親動物への一般毒性(体重増加抑制、呼吸の変化)が発現する用量(1000 mg/kg 体重/日)で、胎児に骨化遅延と骨変異(skeletal variation:助骨の歪曲)のわずかな増加がみられる(JMPR,2004)。しかし、同じくラットを用いた催奇形性試験(OECD TG 414、GLP)において、同じ用量(1000 mg/kg 体重/日)で親動物にも胎仔にも影響はみられなかった。JMPRでは、コメント欄において「グリホサートは胎児、乳幼児、子供にとって十分な潜在的危険性をもっている」との記載がある。以上の結果から、区分2とした。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(麻酔作用) | 警告 | H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
経口経路では、ラットを用いた2つの試験で不活発がみられ、マウスを用いた2つの試験でも不活発と沈静状態がみられる(いずれもJMPR,2004)。経皮経路ではラット、ウサギを用いた試験でこれらの症状(不活発・沈静状態)はみられない(いずれもJMPR,2004)。吸入経路では、ラットを用いた2つの試験で、一方ではわずかに不活発性がみられるのみであるが、他方では聴覚過敏、立ち直り反射の減少に加えて、不規則な呼吸もみられ、投与量4.43 mg/L(4 h)の死亡例(雄2/5匹)では肺の暗色化がみられた(いずれもJMPR,2004)。以上の結果から、経口、吸入経路において区分3(麻酔作用)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分2(唾液腺) | 警告 | H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(唾液腺) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットを用いた13週間反復経口投与試験(US EPA guideline, OECD TG 408、GLP)において、投与量30 mg/kg 体重/日以上で耳下腺(唾液腺)の細胞変性がみられ、その発生率と重症度は用量依存的に増加している(JMPR,2004)。他のラットを用いた104週間反復経口投与試験(US EPA guideline、GLP)においても、投与量100 mg/kg 体重/日以上で耳下腺と顎下腺(唾液腺)の細胞変性が用量依存的にみられる(JMPR,2004)。よって経口経路では、区分2(唾液腺)とした。 ウサギを用いた3週間反復経皮投与試験(GLP)において、投与量100 mg/kg 体重/日以上で血液学、血液生化学、臓器重量、病理学検査に影響はみられなかった。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
珪藻類(スケレトネマ)の96時間EC50=1.2 mg/L(EHC 159, 1994)から区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分2 | - | H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
信頼性のある急速分解性データが得られておらず、急性毒性区分2であることから、区分2とした。 |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
使用マニュアル |
|
解説・用語集(エクセルファイル) |
|
厚生労働省モデルラベル |
職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS |
職場のあんぜんサイトへ |