名称:リグロイン(低沸点ナフサ)
CAS番号:8032-32-4
物質ID: | 20A2248 |
分類実施者: | 厚生労働省、環境省 |
分類実施年度: | 平成20年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 水素化精製過程で炭化水素からの窒素・酸素のアンモニア・水としての解離、不飽和結合の飽和、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため爆発性に関わる原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分2 | 危険 | H225: 引火性の高い液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること/アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
引火点が-17.8℃以下(安全性DB, 1997)であり、初留点が40〜120℃(Merck 14th, 2006 ; Sax 11th, 2004 ; 安全性DB, 1997)であるため、区分2とした。 | |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 水素化精製過程で炭化水素からの窒素・酸素のアンモニア・水としての解離、不飽和結合の飽和、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため爆発性・自己反応性に関わる原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が550°F(換算値288℃)(Sax 11th, 2004), 288℃(安全性DB, 1997)である。分類指針において発火点70℃以上は区分外である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 水素化精製過程で金属分の触媒上への沈着分離が起こるため金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 水素化精製過程で炭化水素からの酸素の水としての解離、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため酸素又はハロゲンを含まない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 水素化精製過程で炭化水素からの酸素の水としての解離が起こるため分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | ラットにおけるLD50値 >25.0 ml/Kg (比重 0.635 (Sax 11th, 2004)より換算値 >15875 mg/kg 体重)(いずれもEHC 20, 1982) に基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ウサギにおけるLD50値(4h) >5.0 mL/Kg (比重 0.635 (Sax 11th, 2004)より換算値 >3175 mg/kg 体重)(いずれもEHC 20, 1982) に基づき、区分外とした。なお、国連分類の区分5に該当するかどうかは不明である。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | 常温で液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 | 警告 | H332: 吸入すると有害 |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 |
ラットにおけるLC50値(4h)14000-16000 ppm(EHC 20, 1982)が得られた。飽和蒸気圧濃度(蒸気圧40 mmHg(20℃)(HSDB, 2005)より換算)は約 52632 ppmで、得られたLC50値は飽和蒸気圧濃度の90%以下であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」としてppmV濃度基準値で区分した。よって、LC50値(4h)14000-16000 ppmに基づき、区分4とした。 | |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | ラットにおけるLC50値(4h)73680 ppm(EHC 20, 1982)が得られた。飽和蒸気圧濃度(蒸気圧40 mmHg(20℃)(HSDB, 2005)より換算)は約 52632 ppmで、得られたLC50値は飽和蒸気圧濃度以上であるため、「ミスト」として区分した。しかし、分子量が特定できないため、mg/Lに単位換算できず、分類できないとした。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 |
男性3人の前腕皮膚に本物質を10〜30分適用したところ、深刻な刺激をもたらした(EHC 20, 1982 ; HSDB, 2005)との記載がある。また、本物質の毒性について、紅斑、浮腫、角質層の損傷、皮膚剥離の原因として知られている(PATTY 5th, 2001)との記載がある。ウサギを用いた2つの試験(いずれもEHC 20, 1982)では、ドレイズスコア値 1.92より区分外(国連分類の区分3)に相当するものと、ドレイズスコア値1.13より区分外に相当するものがあるが、ヒトへの影響を重視して区分2とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2 | 警告 | H319: 強い眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 |
ウサギを用いた2つの試験(いずれもEHC 20, 1982)において、最小限の刺激性(minimally irritating)がみられる。また、接触は眼と皮膚を刺激する(HSFS, 2007)との記述があることから、区分2とした。眼の回復性に関するデータが無いため、細区分は行わなかった。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | 本物質のデータは無いが、石油系溶剤としての評価において、皮膚への接触が繰り返しおこなわれると極めてまれにアレルギー性接触皮膚炎になる可能性がある(EHC 20, 1982)との記述がある。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | in vivoのデータがなく、in vitro変異原性試験(Ames試験、CHO細胞を用いた染色体異常試験)の陰性結果(IARC vol.47, 1989)のみで分類できないとした。 |
6 | 発がん性 | 区分外 | - | - | - | - | IARCにおいて、「石油系溶剤全体の評価として」はグループ3(区分外に相当)に分類されている(IARC vol.47, 1989)。EUリスク警句はカテゴリ-2;R45(区分1Bに相当)であるが、ベンゼンが0.1%以上含まれる場合との記述がある(EU-Annex I, access on Sep. 2008 ; GESTIS, access on Sep. 2008)。現在ではほとんどベンゼンを含まない(IARC vol.47, 1989)との記載から、IARCの評価に従い区分外とした。 なお、アメリカの5箇所のゴム製造労働者(男性6678人)を対象としたケースコントロール研究において、白人男性で本物質の暴露により前立腺癌とリンパ性白血病の相対危険度が増加したとあるが、これについて、それぞれのカテゴリーの症例数が小さく、複数の暴露が他の暴露とは無関係に評価され、意味のある関連性は示されない、との記述がある(IARC vol.47, 1989)。カナダでのケースコントロール研究(IARC vol.47, 1989)は、暴露物質に本物質以外の物質が含まれるため、分類において考慮しなかった。 |
7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | ラットを用いた吸入試験において、特定の発達異常(Specific Developmental Abnormalities)が筋骨格系でみられ、新生児の行動に影響がみられた(RTECS, 2007元文献:GISAAA Gigiena I Sanitariya. For English translation, see HYSAAV.(V/O Mezhdunarodnaya Kniga, 113095 Moscow, USSR)V.1- 1936- 56(9), 35, 1991)との記述があるが、詳しい試験内容や試験物質についての記載が無く、この他に試験データも無いことから、情報不足により分類できないとした。 |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(気道刺激性、麻酔作用) | 警告 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトでは、一般的な中毒症状として、末梢神経障害と中枢神経系抑制、皮膚と呼吸器への刺激(PATTY 5th, 2001)との記述がある。過剰暴露または吸入暴露時の症状としても中枢神経系抑制と気道の刺激性(HSDB, 2005)が記載されており、急性神経毒性作用として麻酔作用、陶酔感、めまい、手足のしびれ(HSDB, 2005)などが記載されている。また、誤って麻酔剤として使用した場合、可逆的な脳水腫(reversible cerebral edema)の原因となる(PATTY 5th, 2001)との記述がある。動物試験においても、動物種は不明であるが、吸入試験により麻酔作用と気道刺激性がみられる(EHC 20, 1982)。以上の結果より、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(神経系) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
工場での労働者の暴露において、空気中濃度2.25〜5.625 mg/Lで多発性神経障害がみられ、労働者らが不眠症、興奮性、明確ではない中枢神経系症状を訴えた(EHC 20, 1982)との記述がある。また、作業環境の不十分な換気による長期吸入暴露で、労働者に多発性神経障害がみられ、食欲不振、筋力の低下、運動機能の障害、知覚障害などの症状(PATTY 5th, 2001)が記載されている。さらに慢性神経毒性作用として運動性多発性神経障害(motor polyneuropathy)があげられている(HSDB, 2005)。ラットを用いた24週間吸入暴露試験においては、正確な暴露濃度は不明だが、末梢神経機能のわずかな低下がみられる(IARC vol.47, 1989)。以上の結果より、区分1(神経系)とした。 ラットを用いた1-6ヶ月間吸入暴露試験においては、神経関与の影響(伝達速度の減少、不応期の増加、興奮性の減少)がみられるが、実験方法が十分に厳密ではない(EHC 20, 1982)との記述から、考慮しなかった。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 区分1 | 危険 | H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ |
P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 P331: 無理に吐かせないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトにおいて、家具の艶出し剤またはライターオイルに含まれる可能性のある本物質を子供が摂取すると、化学肺炎と気瘤(pneumatoceles)の原因となる(PATTY 5th, 2001)、および、液体の誤嚥は化学肺炎を引き起こす可能性がある(HSDB, 2005)との記述に加え、EUリスク警句がR65(EU-Annex I, Sep. 2008)であることから、区分1とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11 | 水生環境有害性(急性) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 分類できない | - | - | - | - | データ不足のため分類できない。 |
政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
使用マニュアル |
|
解説・用語集(エクセルファイル) |
|
厚生労働省モデルラベル |
職場のあんぜんサイトへ |
厚生労働省モデルSDS |
職場のあんぜんサイトへ |