GHS分類結果

名称:4-(1, 1, 3, 3-テトラメチルブチル)フェノール
CAS番号:140-66-9

結果:
物質ID: 21A3512
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 発火点が410℃(SID(2009))で70℃を越えている。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含くまず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50 = 4600 mg/kg(環境省リスク評価vol.2(2003))に基づきJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値=1880 mg/kg(SIDS(1995))に基づき区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、ラットに純度89%の4-(1, 1, 3, 3-テトラメチルブチル)フェノールを24時間暴露したLC100値が116 mg/L以下 [4時間換算で700 mg/L以下](SIDS(1995))とのデータがある。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験で軽度の刺激性があり、腐食性はなかった(OECD TG404準拠)との報告がある(SIDS(1995))。この他に、ウサギを用いた試験で「腐食性あり」、「刺激性あり」あるいは、「刺激性なし」(何れもIUCLID(2000))とされているが、List1のデータに基づいて、JIS分類基準の区分外(国連分類基準で区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた試験で角膜混濁、虹彩炎、重度の結膜刺激などが見られ、24時間後のスコアが63(OECD TG405準拠)(SIDS(1995))、刺激性指数が38.42(最大110)(OECD TG405準拠)(IUCLID(2000))、あるいは刺激性指数が76.3(最大110)との報告(IUCLID(2000))があり、いずれのスコアも区分2Aに該当する。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーションテスト(OECD TG406準拠)で感作性なし(陽性率0%)とのデータ(SIDS(1995))に基づき区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivo のデータがなく分類できない。 なお、in vitro変異原性試験ではCHL細胞染色体異常試験で陰性結果(SIDS(1995))、エームズ試験で複数の陰性結果(SIDS(1995))がある。また、当該物質は労働安全衛生法第57条の3に基づき変異原性が認められた既存化学物質である。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いたOECD TG421準拠のスクリーニング試験において、用量500 mg/kg/dayで交尾行動と胎仔の発育に軽微な障害が、受胎と着床数の減少、妊娠期間の延長、発育遅延として観察された。親の毒性影響が顕著で24匹中13匹が死亡したデータ(SIDS(1995))であることから、親動物で見られた影響は一般毒性による二次的影響とも考えられるが、ラットに妊娠0日目から8日目まで投与して、用量31.3 mg/kg/day以上で着床後死亡率が有意に増加したとの報告(Teratogenic(12th, 2007))もあることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた急性経口毒性試験(OECD TG401)で、投与30分後に軽度の鎮静作用、運動失調、猫背の姿勢、呼吸困難、チアノーゼ、目まい、利尿が見られ、剖検で胃腸管、腹膜、肋膜の充血及び、一部のラットに腎、肝、肺の斑点が見られている(IUCLID(2000))。他のラット雄を用いた試験で鎮静作用、被毛粗剛, 利尿, 鼻血が観察されたが、剖検での異常所見は見られていない(IUCLID(2000))。LD50値は各ー4040、2760 mg/kgであり、いずれもガイダンスの区分2を超える用量での所見であるが、軽度の鎮静作用、運動失調が見られることから区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(腎臓、肝臓) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(腎臓、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた混餌による90日間反復投与試験において、300 ppm (15mg/kg/day)の用量で軽度の体重抑制、3000 ppm (150 mg/kg/day)の用量で雌2/20にチロキシン濃度の低下が見られたが組織病理学的影響はみられていない(環境省リスク評価vol.2 (2003))。 一方、ラットの混餌による28日間反復投与試験において、ガイダンスの区分2に該当するの300 mg/kg/day(90日間算93 mg/kg/day)の用量で腎臓の尿細管上皮の再生性変化及び、血清アルブミンの減少とA/G比の低下、尿素窒素の増加が見られ(厚労省報告(access on July.2009))、他の ラットの28日間反復経口投与試験(OECD TG407、GLP)においてガイダンスの区分2に該当するの250mg/kg/day(90日間算 78mg/kg/day)の用量で腎臓の尿細管上皮の再生性変化及び、肝臓小葉中心性の軽度の肝細胞肥大がみられている(SIDS (1995))。腎臓の尿細管上皮の再生性変化、肝臓小葉中心性の軽度の肝細胞肥大と血清アルブミンの減少とA/G比の低下、尿素窒素の増加が見られることから区分2(腎臓、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(Mysid)の96時間LC50 = 0.0479 mg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性がない(難分解性、BODによる分解度:0%(SIDS, 2005))ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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