GHS分類結果

名称:プロパンニトリル
CAS番号:107-12-0

結果:
物質ID: 21A3567
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点2℃ [密閉式](HSDB(2002))、6℃ [密閉式](ホンメル(1996))はともに < 23℃ であり、かつ、初留点97.2℃(Merck(14th, 2006))は >35℃ であることから、区分2に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は512℃であり(Lide(88th, 2008))、70℃を超える。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含んでいない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値は39 mg/kg、50-100 mg/kg(いずれもPATTY(5th, 2001)vol.4)であり、それぞれ区分2、区分3に該当する。これらのデータから、より危険性の高い区分を採用して区分2とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギLD50値は0.21 ml/kg(比重換算値:163.8 mg/kg)(PATTY(5th, 2001)vol.4)であるとの報告に基づき、区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスLC50値(1時間)は163 ppm(4時間換算値:81.5 ppm)(HSDB(2002))であるとの報告に基づき、区分1とした。なお、LC50値は飽和蒸気圧濃度(62368.4 ppmV)の90%値よりも低く、気体と判断し、ppm単位の基準値で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギの皮膚に適用した試験で「重度の損傷(severe damage)は生じなかった」およびモルモットでは「軽微の刺激性(slightly irritating)であった」(PATTY(5th, 2001)vol.4)との記述に基づき、区分外(国連分類基準の区分3)とした。なお、ウサギを用いた500 mg、24時間適用のドレイズテストで「mild」との結果(RTECS(2002))がある。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ヒトでは、「目に対して刺激性がある」(HSDB(2002))との記載があり、本物質をウサギの眼に適用した試験では、「重度の損傷(severe damage)は生じなかった」(PATTY(5th, 2001)vol.4)と記載されていることから、区分2とした。なお、ウサギのドレイズ試験においては、中等度(Moderate)の刺激性がみられる(RTECS(2002))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivoのデータは無く、in vitroにおけるエームス試験、CHO細胞を用いた染色体異常試験および姉妹染色分体交換試験の陰性結果(いずれもNTP DB(access on Sep. 2009))しかないため、分類できないとした。
6 発がん性 区分外 - - - - 厚生労働省がん原性試験(2006)において、「ラット及びマウスを用いた104週間吸入暴露試験で、プロピオノニトリルの投与によって、F344/DuCrlCrlj(Fischer)ラットでは、雌雄とも、腫瘍の発生増加は認められず、がん原性を示す証拠は認められなかった。またB6D2F1/Crljマウスでは、雌雄とも、腫瘍の発生増加は認められず、がん原性を示す証拠は認められなかった。」との結果が得られていることから区分外とした。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入による発生毒性試験において、親動物に毒性が見られない用量で胚致死と胎児毒性がみられる(PATTY(5th, 2001)vol.4)ため、区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(全身毒性、中枢神経系) 危険 H370: 臓器の障害(全身毒性、中枢神経系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでは、労働者が本物質を皮膚と呼吸器から取り込み、意識喪失、呼吸性アルカローシス、軽度の代謝性アシドーシスを起こした例、また二人の労働者が本物質を吸入し、一人は頭痛、吐気、めまいを2時間後に訴え、もう一人は7時間後に倒れた例が報告されている(いずれもPATTY(5th, 2001)vol.4)ことから、区分1(全身毒性、中枢神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - マウスを用いた14週間吸入暴露試験においては、用量209 ppm(0.47 mg/L)で尿組成および赤血球数の変化、体重減少または体重増加抑制(RTECS(2002): 元文献Toxicologist.(Society of Toxicology の学会予稿集)Vol..5, p.113, 1985)との記載のみであり、詳しい症状の記載が無い。以上より、分類できないとした。なお、NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards(2005)において、標的臓器として呼吸器系、心血管系、中枢神経系、肝臓、腎臓が記載されている。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50 = 1520 mg/L(HSDB, 2002; AQUIRE, 2010)であることから区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、水溶解度 = 100,000 mg/L(PHYSPROP Database, 2010)より難水溶性ではないことから区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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