GHS分類結果

名称:チオフェン
CAS番号:110-02-1

結果:
物質ID: 21A3570
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-9℃ [密閉式](GESTIS(access on Aug. 2009))は < 23℃ であり、初留点は84.4℃(Merck(14th, 2006))から35℃超であるので区分2に相当する。なおUNRTDG(UN2414)Class3、Packing Group IIである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が395℃であり(ホンメル(1996))、70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含んでいない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットを用いた試験(OECD TG423)において、2000 mg/kgで死亡例なし(0/6)の結果(厚労省報告(access on Aug. 2009))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5または区分外に相当)とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、モルモットLD50>20ml/kg(RTECS(2006))のデータがある。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、マウスLC50: 9500 mg/m3/2H = 6.7 mg/L/4H = 1947 ppm/4H(RTECS(2006))のデータがある。LC50値(9.5 mg/L/2H)が飽和蒸気圧濃度(361 mg/L)の90%より低いので、試験はほとんどミストを含まない蒸気で行われたと考えられる。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
チオフェンはヒトで皮膚刺激を引き起こしているとの報告(HSDB(2003)に基づき区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データなし。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivoの試験データが無く分類できない。なお、in vitroのh試験では、復帰突然変異試験(Ames test)及びCHL細胞を用いる染色体異常試験のいずれも陰性と報告されている(厚労省報告(access on Aug, 2009))。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG422)おいて、100 mg/kg以上あるいは400 mg/kgで一般毒性として自発運動量低下、腹臥姿勢、流涎などの症状が観察されたが、親動物の性機能および生殖能、ならびに仔の発生に対する悪影響は認められなかった(厚労省報告(access on Aug, 2009))。一方、100 mg/kg以上の投与群で哺育行動や泌乳の低下が観察され、400 mg/kg投与群では新生児の4日目生存率が低値傾向にあったことは母動物の哺育行動あるいは泌乳の低下に起因すると考えられている(厚労省報告(access on Aug, 2009))。これらの動物には小脳核神経細胞の変性が認められており、哺育行動の低下、あるいは泌乳状態の不良は、チオフェン投与による二次的変化であると推測されている(厚労省報告(access on Aug, 2009))ので、分類の根拠としなかった。結論としては、催奇形性を含む発生毒性に関するデータがなお不十分であるために、「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - ラットの経口投与試験(OECD TG423)において死亡はなく、300 mg/kgでは眼瞼下垂、流涎及び下腹部の汚れ。体重は概ね順調に増加し、観察期間終了時の剖検において、内部諸臓器の肉眼的変化は認められていない。2000 mg/kgでは自発運動の低下、眼瞼下垂、流涎、口鼻周囲の汚れ及び粗毛。観察4日の体重は減少し、8日には回復傾向を示し、剖検では内部諸臓器の肉眼的変化は認められていない(厚労省報告(access on Aug. 2009))。2000 mg/kgでは重大な毒性の発現は見られていないことから、経口投与では区分外に相当するが、他経路のデータがないため「分類できない」とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肝臓、脳) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、脳) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラット反復経口投与毒性・生殖発生毒性併合試験(OECD TG422)(およそ45日間)において、雌雄ともに死亡例は無く、雄では100 mg/kg以上で雌では400 mg/kgで、不整呼吸、自発運動量低下、腹臥姿勢、流涎などが見られた。雄の病理組織学的検査では100 mg/kg以上の群で小葉中心性肝細胞肥大、マクロファージ浸潤、400 mg/kgでは小葉中心性肝細胞壊死、小葉中心部の肝細胞質均質化/小空胞化が見られ、総ビリルビン濃度や各種酵素活性が高値となり、100 mg/kg以上の群では肝臓毒性を示した。400 mg/kg群では小脳顆粒細胞の核濃縮あるいは壊死が1例に見られ、小脳に対する軽度な毒性を示した。雌の生存例では100 mg/kg以上の群では雄の400 mg/kg群で肝臓に惹起されたのと同質の所見を示し、小脳の顆粒細胞壊死が100 mg/kg以上で認められ、400 mg/kgでは大脳脳室拡張/周囲浮腫も認められた。これらのことから100 mg/kg以上の投与量で肝臓及び小脳に障害を与える毒性量であると考えられている(厚労省報告(access on Aug, 2009))。以上の結果に基づき区分2(肝臓、脳)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)による48時間EC50=21 mg/L(環境省生態影響試験, 1996)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分3であり、急速分解性がない(既存点検, 1982)ことから区分3とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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