GHS分類結果

名称:2, 6, 6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エン(α-ピネン)
CAS番号:80-56-8

結果:
物質ID: 21A3601
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点33℃ [密閉式](HSDB(2009))は ≧ 23℃ かつ ≦60℃ であることから、区分3に該当する。UNRTDG(UN2368)で Class 3PGIIIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は255℃(Chapman(Ver. 17:1, 2009))であり、70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含んでいない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値 3700 mg/kg(PATTY(5th, 2001))に基づき、分類JIS基準の区分外(国連分類基準の区分5に相当)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値 >5000 mg/kg(IUCLID(2000))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットLCLo値 625 μg/m3)(PATTY(5th,(2001))があるが、区分を特定できないので分類できない。なお、毒性値(LCLo: 625 ug/m3)が飽和蒸気圧濃度(34.8 mg/L)の90%より低いので、ミストがほとんど混在しない蒸気とみなし気体の基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギの皮膚に4または24時間適用した試験でいずれも中等度の刺激性(moderately irritating)の結果(農薬安全情報 vol. 17(1994)、IUCLID(2000))、また、4時間適用試験の皮膚一次刺激指数が4.7との報告(農薬安全情報 vol. 17(1994))に基づき区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギ6匹を用い未希釈の試験物質0.1 mLを適用した試験で、角膜に対する作用は認めず、点眼1時間後に、1匹に虹彩炎、6匹の結膜に最小限度から中等度の刺激性が認められたが、48時間後には全て正常となり、最小限度の刺激性との評価(農薬安全情報 vol. 17(1994))に基づき、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Frosch接触アレルゲンリスト(FROSCH, TEXTBOOK OF CONTACT DERMATITIS)に収載されているため区分1とした。尚、List2でモルモットを使用した試験(Open epiqutaneous test)で陽性の報告(IUCLID(2000))がある。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに13週間吸入ばく露による末梢血を用いた小核試験(体細胞in vivo 変異原性試験)で陰性(NTP DB(access on Sep. 2009))により区分外とした。なお、in vitro試験では、エームズ試験の陰性結果(NTP DB(access on Sep. 2009))が報告されている。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH によりA4に分類されている(ACGIH-TLV(2001))ことから区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠動物を用い、マウスは妊娠6〜15日、ラットは妊娠9〜14日、ハムスターは妊娠6〜10日にそれぞれ経口投与した試験で、ラットの場合に高用量群で母動物の体重抑制、胎盤および胎仔重量の低下が報告されていることを除き、その他にはいずれの動物種とも親動物への影響は見られず、また、仔の発生に関する全ての指標で対照群との間に有意な差はなく催奇形性も認められなかった(HSDB (2009))。しかし、親動物の交配前からのばく露による性機能及び生殖能に対する影響に関してはデータがなく明らかでないので「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(呼吸器系) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(呼吸器系) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスに(+)異性体100〜3691 ppmの吸入ばく露により上気道に持続的感覚刺激を示し、200 ppm以上で有意な呼吸障害を起こし、作用の弱い(-)異性体でも2900 ppm以上で短時間の感覚刺激と2000 ppm以上で呼吸障害が現れた(HSDB(2009))との報告があり、上記の所見は区分1のガイダンス値内であるがリスト2の情報であることから区分2(呼吸器系)とした。なおボランティア8人にばく露した試験では5人に眼、鼻、咽喉に刺激性が見られ、統計学的に有意な反応であったとの報告(ACGIH(2003))がある。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系、神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系、神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトへの影響として、長期ばく露が動悸、めまい、神経障害、気管支炎、胸痛、腎症をもたらすとの記述(PATTY(5th, 2001))があり、α-ピネンを含むモノテルペン類の長期間ばく露で、呼吸器の損傷起こしたとの多数の報告の記載があり、また中枢神経抑制の記載(ACGIH(2003))があることから区分1(呼吸器系、神経系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。なお、本物質は炭化水素で、25℃における動粘度率は1.525 mm2/sであり、吸引により化学性肺炎を起こすおそれがあるとの記載がある(ACGIH(2003))。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)による96時間LC50=0.18 mg/L(HSDB, 2009)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、LogPow=4.83(PHYSPROP Database, 2010)より生物濃縮性が高いことが疑われることから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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