GHS分類結果

名称:イソチオシアン酸アリル
CAS番号:57-06-7

結果:
物質ID: 21A3691
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点46℃ [密閉式](ICSC(1997))は ≧ 23℃ かつ ≦60℃ であることから、区分3に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 分子内に自己反応性に関連する原子団(C-C不飽和結合)を含むが、UNRTDG(UN1545)でクラス6.1副次危険3PGIIで、これは安定剤を含む。これが流通しているのでタイプGと判断した。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - UNRTDG(UN1545)でクラス6.1副次危険3PGIIに分類されていることから、上位のクラス4.2PGIには該当しない。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立されていない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。なお、UN1545のERGは155に該当するがGHSの区分に入る水反応性ではない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素および塩素を含んでいない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値 339 mg/kgおよび490 mg/kg(NTP TR No.234(1982))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギLD50値 88 mg/kg(RTECS(2008)、元文献:TXAPA9 Toxicology and Applied Pharmacology. 42, 417, 1977)に基づき、区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ヒトに対し「粘膜を刺激し、湿疹様または小水疱性皮膚反応を生じる」および「本物質は皮膚、粘膜に対し強い刺激性を起こす」(IARC 73(1999))との記述に基づき区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足。なお、本物質は非常に強い刺激臭を有し、その蒸気は視力障害を伴う角膜炎を引き起こす可能性があると記述されている(HSDB(2003))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Frosch接触アレルゲンリスト(FROSCH, TEXTBOOK OF CONTACT DERMATITIS)に収載されているため区分1とした。尚、List2でモルモットを使用した試験(Open epiqutaneous test)で陽性の報告(IUCLID(2000))がある。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに腹腔内投与による優性致死試験およびラットに経口投与による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)においていずれも陰性(IARC 73(1999))、ラットに経口投与による骨髄細胞を用いた染色体異常試験、マウスに腹腔内投与による骨髄細胞および末梢血を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)においていずれも陰性(NTP DB(access on Sep. 2009))であり、以上の結果に基づき区分外とした。なお、in vitro試験では、エームス試験で陰性、マウスリンパ腫を用いた遺伝子突然変異試験およびCHO細胞を用いた染色体異常試験では陽性結果が報告されている(NTP DB(access on Sep. 2009))。
6 発がん性 区分外 - - - - IARCによりグループ3に分類されている(IARC 73(1999))ことから区分外とした。なお、ラットおよびマウスの103週間経口投与試験が実施されており、ラットでは、雄の膀胱に対照群では認められなかった移行上皮性乳頭腫の発生、および雌の皮下組織に線維肉腫の発生増加傾向を示したが、マウスでは腫瘍発生頻度の増加は認められなかった。その結果、試験条件下においてラットで雄は発がん性があり、雌は発がん性が曖昧、マウスでは雌雄とも発がん性なしと結論されている(NTP TR234(1982))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた器官形成期の経口投与試験で母体に毒性が見られた用量で胎児への影響は認められなったとの結果がある(IARC 73(1999))。一方、マウス、ラット、ハムスター、ウサギを用いた器官形成期の経口投与試験で、いずれの動物種でも投与に関連した母体の毒性および催奇形性は認められなかったが、マウスのみ最高用量群で胎仔の死亡および吸収胚の増加が見られたとの結果があり(IARC 73(1999))、母体に毒性が認められていない用量での発現により区分1Bに相当するが、マウスでのみ影響が認められていることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(全身毒性) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(全身毒性) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに200〜400 mg/kgを経口投与により不活発、流涙、被毛の乱れが観察された。マウスに経口投与後400 mg/kg以上で死亡が発生し、100 mg/kg以上で毒性症状として不活発、被毛の乱れなどがあり、用量に相関した胃粘膜表面の肥厚と壊死が見られた(NTP TR(1982))。ラット経口投与による別の試験(HSDB(2003))では、衰弱状態となり4時間〜15日に死亡し、LD50は339 mg/kgと報告されている。以上の結果から、ガイダンス値範囲区分2に相当しているほぼ300〜400 mg/kg乃至それ以上の用量における死亡の発生、さらに不活発、被毛の乱れ、衰弱などの症状、胃粘膜の肥厚と壊死の剖検所見に基づき、標的臓器の特定困難なことを考慮し、区分2(全身毒性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(全身毒性) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(全身毒性) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットおよびマウスに14日間の経口投与により、ラットでは200または400 mg/kg/day(90日補正:31.1または62.2 mg/kg/day)で全例が死亡し、50〜400 mg/kg/day(7.8〜62.2 mg/kg/day)では剖検で胃粘膜の肥厚と胃の腹膜への癒着、毒性症状として不活発、被毛の乱れが見られ(NTP TR 234(1982))、マウスでは50 mg/kg/day(7.8 mg/kg/day)で1例が死亡、剖検ではラットと同様な胃の変化に加え、膀胱壁の肥厚が見られた(NTP TR 234(1982))。一方、ラットおよびマウスの13週間経口投与試験において、両動物種ともばく露に起因する影響は見出されず、NOALはいずれも最高用量の25 mg/kg/dayと報告されている(NTP TR 234(1982))。以上の結果から経口用量として、ラットで200 mg/kg/day(90日換算:31.1 mg/kg/day)以上で死亡、50 mg/kg/day(90日換算:7.8 mg/kg/day)以上で胃の変化と症状の発現があり、マウスでは50 mg/kg/day(90日換算:7.8 mg/kg/day)で1例の死亡と胃および膀胱の変化が見られたことから、標的臓器については特定困難なため、区分2(全身毒性)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(メダカ)での96時間LC50=0.077 mg/L(AQUIRE, 2010)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性がない(BIOWIN)ことから区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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