GHS分類結果

名称:硝酸コバルト(II)六水和物
CAS番号:10026-22-9

結果:
物質ID: 21A3700
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団(R-NO3)を含むが、データがなく分類できない。なお、酸素収支は0.00である。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性だが、他の物質の燃焼を助長する(ICSC(J)2001)という情報により区分外とした。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団(R-NO3)を含むが、データがなく分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性だが、他の物質の燃焼を助長する(ICSC(J)2001)という情報により区分外とした。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性だが、他の物質の燃焼を助長する(ICSC(J)2001)という情報により区分外とした。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 金属(Co)を含むが、水溶解度が103 g/ 100 g H2O(25℃)(Lide(88th, 2008))であり安定であると判断した。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含む無機化合物でありこの酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合しているが、データがなく分類できない。なお、この物質は、硝酸塩であり、「他の物質の燃焼を助長する」(ICSC(J)2001)という情報がある。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データ不足で分類できない。なお、ラットLD50値 691 mg/kg(RTECS(2009))とのデータがある。 [健康有害性に関しては塩化コバルト(II)(CAS:7646-79-9)、硫酸コバルト(CAS:10124-43-3)も参照のこと]
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データなし。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
種ーのコバルト化合物に曝露された労働者において、気管支喘息がこれまで認められている(CICADs 69(2006))ことに加え、日本産業衛生学会ではコバルトを気道感作性物質の第1群(「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない」との但し書き有り)としている(日本産業衛生学会勧告(2008))ことから区分1とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本産業衛生学会ではコバルトを皮膚感作性物質の第1群(「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない」との但し書き有り)としている(日本産業衛生学会勧告(2008))ことから区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データなし。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本産業衛生学会でコバルトおよびコバルト化合物として2Bに分類(産衛学会勧告(2008))されていることに基づき区分2とした。なお、IARCでも同物質としてグループ2B(IARC 52(1991))に分類されている。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。なお、塩化コバルト(II)を用いた雄マウスの12週間飲水試験で無処理の雌と交配させた結果、雌の着床数の低下、胎児の生存数の低下が見られたなどの他に動物試験で明確な生殖毒性の報告がある。また硫酸コバルトを用いたラット、マウス、ウサギの器官形成期のに経口投与した試験では、母動物に毒性の示された用量でも仔に対しては悪影響はなかったとの報告がある(以上CICAD69(2006))。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データなし。なお、塩化コバルト(II)のデータとして、ラットによる強制経口試験では4.25 mg/kgにて自発運動、筋力、呼吸の低下が見られ(ATSDR(2004))、ヒトの影響として胸骨後部に痛み、耳鳴り、吐き気および嘔吐、神経性難聴、気管圧迫を伴う甲状腺過形成、粘液水腫、倦怠感などが記述されており(HSDB(2004))、水溶液を摂取した子供で赤血球の生成の抑制によるチアノーゼを起こし、昏睡および死に至ったとの記述がある(HSDB(2004))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系、心臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系、心臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質のデータはないが、コバルトの吸入ばく露による肺への影響(変性、間質性肺炎、X線像異常、肺機能異常など)はヒトで多く報告されている(厚生労働省:コバルト及びその化合物有害性評価書)。また、ヒトの症例で硫酸コバルトの反復による摂取で心筋症で死亡した例が報告されており(CICAD 69(2006))、動物実験においても、金属コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルトなどの吸入ばく露で肺障害、心臓障害、気管支への影響、胸腺への影響、そして喉頭部への影響など数多く報告されている(厚生労働省:コバルト及びその化合物有害性評価書)ことから区分1(呼吸器系、心臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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