GHS分類結果

名称:シクロスポリン
CAS番号:79217-60-0

結果:
物質ID: 21A3733
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データなし。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 酸素を含んでいるが、炭素及び水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値は1500 mg/kg(IARC 50(1990))であるとの報告に基づき、区分4とした。 (分類対象のシクロスポリン混合物は主要成分としてシクロスポリンAを含み、得られたデータの多くはシクロスポリンAに関するものである。したがって、以下の分類も主としてシクロスポリンAのデータを使用した。)
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データなし。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスを用いた優性致死試験、マウス又はハムスターの骨髄細胞を用いた染色体異常試験及び小核試験において、いずれも陰性の結果が報告されている(IARC 50(1990))ことから区分外とした。なお、マウスを用いた不定期DNA合成試験で陰性(IARC 50(1990))、In vitro試験ではAmes試験及びハムスター V79細胞を用いたHPRT突然変異試験(IARC 50(1990))で陰性の報告がある。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCでGroup 1に分類(IARC vol.100A (2008)、IARC vol.50 (1990))及びNTPでKに分類(NTP ROC 11th (2004))されていることから、区分1Aとした。 なお、当該薬剤(シクロスポリン)のみを投与された臓器移植受容者に発生した腫瘍に関する症例報告は数多く公表され、その大部分はリンパ腫であり、部位は通常消化管であるが、他の部位にも悪性腫瘍も見られている(IARC 50 (1990))。一方、実験動物ではマウス及びラットにそれぞれ78週及び95-105週間混餌投与した試験において、高用量群で死亡率は増加したものの、腫瘍発生頻度の明らかな増加は見出されていない(IARC 50 (1990))。
7 生殖毒性 区分1A、追加区分:授乳に対するまたは授乳を介した影響 危険 H362: 授乳中の子に害を及ぼすおそれ
H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P263: 妊娠中/授乳期中は接触を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
当該物質は妊娠女性に投与により、早産、出生児の成長遅延をもたらしたものの、児に対しては大きなリスクはなく催奇形物質とは考え難いとの報告(HSDB(2009)、Birth Defects(3rd, 2000))がある一方、出生児に足の骨奇形、尿道下裂、弯指が報告されている(Birth Defects(3rd, 2000))。ラット及びウサギを用いた試験では、奇形は認められてない(IARC vol.50(1990))が、母動物が毒性を示す用量で胚吸収及び胎仔死亡率の増加、胎仔及び出生仔の成長遅延が認められ、マウスでは催奇形性を示した(Birth Defects(3rd, 2000))ことが報告されている。以上より、本物質はヒトの生殖に対する悪影響の証拠が得られており、ヒトに対し生殖毒性があると考えられるため区分1Aとした。また、「本物質は母乳中に検出される」(IARC vol.50(1990))との記載があり、加えて、母乳中へ移行するとの報告があり、授乳婦に投与中は授乳を避けさせるとの記載(医療用医薬品集(2010))もあり、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(免疫系) 危険 H370: 臓器の障害(免疫系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本剤は主として臓器移植で拒絶反応の抑制に使用される強力な免疫抑制剤であるとの記述(医療用医薬品集(2010))に基づき、区分1(免疫系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓、肝臓、中枢神経系、免疫系、全身毒性) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓、肝臓、中枢神経系、免疫系、全身毒性) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質は免疫抑制剤であり、重大な副作用として、腎機能障害が高頻度にみられ、主な発現機序は用量依存的な腎血管収縮作用によると考えられるとの記述、肝障害(肝酵素およびビリルビンの上昇、黄疸)が現れることがあるとの記述、可逆性後白質脳症症候群、高血圧性脳症等の中枢神経系障害が現れることがあるとのそれぞれの記述(医療用医薬品集(2010))に基づき、区分1(腎臓、肝臓、中枢神経系)とした。さらに、本物質投与による重大な副作用として、細菌あるいはウイルスによる肺炎、敗血症、尿路感染症、単純疱疹、帯状疱疹等の重篤な感染症併発の可能性と強力な免疫抑制下では急激に重症化することがあるとの記述、急性膵炎、血栓性微小血管障害、横紋筋融解症が現れることがあるとの記述、また、過度の免疫抑制による悪性腫瘍発現の可能性が高まることがあるとのそれぞれの記述(医療用医薬品集(2010))があり、これらの副作用の多くは免疫系の関与が考えられ、また重篤な全身性疾患が含まれているため区分1(免疫系、全身毒性)とした。以上より分類は区分1(腎臓、肝臓、中枢神経系、免疫系、全身毒性)となる。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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