GHS分類結果

名称:亜硫化ニッケル
CAS番号:12035-72-2

結果:
物質ID: 21A3756
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データなし。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に不溶(HSDB(2009))という情報があり、水に対して安定であると思われる。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 酸素及びハロゲン元素を含まない無機化合物である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値 >5000 mg/kg bw(ECETOC TR-33(1989), PATTY(5th, 2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データなし。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本産業衛生学会許容濃度勧告において、ニッケル自体ないしその化合物として気道感作性物質(第2群)に分類されている(産衛誌第51巻(2009))ため、区分1とした。なお、ドイツDFGのMAK表ではSahである。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本産業衛生学会許容濃度勧告において、ニッケル自体ないしその化合物として皮膚感作性物質(第1群)に分類されており(産衛誌第51巻(2009))、EU分類ではR43であるため、区分1とした。なお、ドイツDFGのMAK表ではSahである。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの吸入暴露による末梢血液を用いた小核試験(体細胞を用いる in vivo 変異原性試験)で、陰性(NTP DB(access on Oct. 2009))に基づき、区分外とした。なお、Ames試験でequivocal(NTP DB(access on Oct. 2009))、ヒトのリンパ球を用いた染色体異常試験及び小核試験で陽性(NTP TR453(1996))、CHO細胞及びラットの肝細胞を用いた遺伝子突然変異試験で陽性(DFGOT vol.22(2006)))の報告がある。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ニッケル化合物についてIARCでグループ1(IARC vol.49(1990))であることから区分1Aとした。なお日本産業衛生学会(産衛学会勧告(2005))で第1群に、亜硫化ニッケルについてACGIHでA1(ACGIH(2001))に分類されている。また、ラットに2年間吸入曝露した試験において、曝露に関連する肺胞・細気管支の腺腫、癌腫の発生頻度の増加、副腎髄質の褐色細胞腫の発生頻度の有意な増加が見られ、亜硫化ニッケルはラットでは発がん性の明らかな証拠があると報告されている(NTP TR453(1996))が、マウスに2年間吸入曝露した試験では発がん性の証拠は見出されていない(NTP TR453(1996))。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。なお、ラットの妊娠6日目に筋肉内投与し、同腹生存仔数の減少がみられたとの報告(EHC 108(1991)、PATTY(5th, 2001)、IARC vol.49(1990))がある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データなし。なお、ラットの気管内投与試験において、肺の炎症や出血、肺胞炎が認められている(EHC 108(1991)、IARC vol.49(1990))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
厚生労働省報告では、職業的にニッケル酸化物や金属ニッケルの0.04mg/m3以上の濃度にばく露している労働者は、呼吸器疾患で死亡する確率が高いとされ、また、ニッケル精錬とニッケルメッキ作業者に鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔穿孔、鼻粘膜異形成の報告がある(厚生労働省報告:ニッケルおよびその化合物有害性評価書(2009))。これにより区分1(呼吸器系)とした。また動物試験では、ラット及びマウスの吸入試験(0, 0.15, 0.3, 0.6, 2.5mg/m3、6h/day/13week)において、0.3mg/m3 以上でラット雌雄に肺の慢性炎症、気管支及び縦隔リンパ節のリンパ過形成が、0.6 mg/m3 以上でラット及びマウス雌雄に嗅上皮の萎縮が、1.2 mg/m3 以上でマウス雌雄に肺の慢性炎症及び線維化、さらに気管支及び縦隔リンパ節のリンパ過形成が認められた(NTP TR453(1996)、CERI・NITE有害性評価書(2007)、ECETOC TR-33(1989))。以上の毒性影響はいずれもガイダンス値区分1の暴露量の所見である。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る