GHS分類結果

名称:デカヒドロナフタレン
CAS番号:91-17-8

結果:
物質ID: 21A3763
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点58℃ [密閉式](Merck(14th, 2006))は ≧ 23℃ かつ ≦60℃ であることから、区分3に該当する。なお、UNRTDG(UN1147)では、クラス3PGIIIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は250℃であり(Sax(11th, 2004))、70℃を超える。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含んでいない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値は4170 mg/kg(PATTY(5th, 2001))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値は5900 mg/kg(PATTY(5th, 2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLC50値(4h)は、500 ppmV(PATTY(5th, 2001))及び710 ppmV(NTP TR 513(2005))の報告があり、それぞれ区分2及び区分3に該当するが、より危険性の高い方を採用し、区分2とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(3026 ppm)の90%より低いので、分類には気体の基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギの皮膚に4時間適用した試験(OECD TG 404)において、強い刺激性と壊死を認め、皮膚一次刺激指数 7.5/8.0で腐食性(corrosive)との結果(BUA 218(1998))に基づき、区分1とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験(OECD TG 405)において、角膜及び虹彩に刺激性を認めず、結膜に対し著しい充血と浮腫が見られたが、6〜8日後には完全に消失し、眼刺激指数 3.5/110で刺激性なし(not irritating)との結果(BUA 218(1998))に基づき区分外とした。なお、別に本物質はウサギの眼に滴下し何ら刺激性を示さなかった(HSDB(2004))との記載もある。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたマキシマイゼーション試験(OECD TG 406)において、陽性率 0%で感作性なし(not-sensitizing)の結果(BUA 218(1998))に基づき、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに13週間吸入ばく露による末梢血を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)の陰性結果があり(NTP DB (access on Nov. 2009))、チャイニーズハムスター肺由来の線維芽細胞株を用いたin vitro染色体異常試験も陰性の結果が得られている(厚労省報告 (access on Dec. 2009))ことから、区分外とした。なお、in vitro試験では、サルモネラを用いた突然変異試験で陰性(厚労省報告 (access on Dec. 2009)、NTP DB (access on Dec. 2009)))、マウスリンパ腫を用いた遺伝子突然変異試験で陰性の結果(BUA Report No.218(1998))が得られている。 [上述のマウス小核試験で雄のみ弱陽性の結果は、専門家により統計学的に有意ながらコントロールの2倍程度の増加であり、雌での陰性結果を考え合わせると生物学的意義はないものと判断された。]
6 発がん性 分類できない - - - - ラットおよびマウスに2年間吸入ばく露した試験(NTP TR 513(2005))において、両動物種とも対照群との間に生存率の差はなく、唯一腫瘍発生率に有意な増加が認められたのは雄ラット腎臓の尿細管腺腫と副腎の褐色細胞腫であったが、これらの腫瘍の発生には雄ラット特有のα2μグロブリン腎症との関連が示唆されており、ヒトには当てはまらない可能性がある。その他の所見としては、雌マウスにおける肝細胞と子宮の腫瘍の僅かな増加であったが、発がん性を評価するにはデータ不足であり、したがって「分類できない」とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - マウスの妊娠6〜13日目に経口投与し自然分娩させた試験において、母動物の死亡がみられる用量で新生仔の体重、成長、3日目生存率などを含む仔の発生指標に影響は見られなかった(NTP TR 513(2005))が、親動物の性機能、生殖能に及ぼす影響に関してはデータがなく「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の蒸気は呼吸器を刺激し(BUA Report 269(2006))、また、本物質を吸うことにより鼻と咽喉を刺激する可能性がある(HSFS(2002))との記載により、区分3(気道刺激性)とした。なお、用量など試験条件や結果の詳細は不明であるが、モルモットの蒸気ばく露、またはウサギの眼に滴下により白内障を生じたとの記述(PATTY(5th, 2001)、HSDB(2004))がある。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、呼吸器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、呼吸器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスに吸入ばく露した試験において、0.14〜2.26 mg/L(蒸気:6h/日)を14週間ばく露で雄の肝臓における小葉中心性巨細胞の発生頻度が増加し(NTP TR 513(2005))、0.028〜0.283 mg/Lを90日間または0.287〜1.435 mg/L(24h/日)を30日間ばく露では雌の肝細胞空胞化の発生頻度が増加した(NTP TR 513(2005)、BUA Report 218(1998))ことが報告され、いずれも発現濃度がガイダンス値範囲区分1に相当していることから区分1(肝臓)とした。また、ラットおよびマウスに吸入ばく露した試験では、0.287〜1.435 mg/L(6h/日)を30日間ばく露で、気管上皮のヒアリン硝子滴形成、細胞の喪失または増殖、浸出液、気管・気管支上皮の2型肺胞上皮細胞の発生頻度増加など気管、気管支、肺胞において用量依存的な病理組織学的変化が生じ、さらにモルモットに同一濃度を同一期間吸入ばく露した結果として、多病巣性肺炎を伴った肺胞への刺激、浸出液を伴った肺胞壁の肥厚が記載されており(NTP TR 513(2005)、BUA Report 218(1998))、いずれも発現濃度がガイダンス値範囲区分1に相当していることから区分1(呼吸器)とした。以上より、分類は区分1(肝臓、呼吸器)となる。なお、ラットを用いた各試験で雄の腎臓でα2μグロブリン濃度増加とヒアリン硝子滴蓄積を伴う腎尿細管の変性が認められている(NTP TR 513(2005)が、この所見は一般に雄ラット特有のα2μグロブリン腎症であり、ヒトに当てはまらないとされているので、分類の根拠としなかった。また、ヒトで高濃度の過剰ばく露により、しびれ、嘔気、頭痛、嘔吐を起こす(PATTY(5th, 2001))と述べられている。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
当該物質は炭化水素であり、動粘性率は、1.9mm2/s(約25℃)で、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こす危険がある(ICSC(2004))ことが知られているため、区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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