GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:アンモニア
CAS番号:7664-41-7

結果:
物質ID: 21B3003
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 区分1 危険 H220: 極めて可燃性又は引火性の高いガス P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P377: 漏洩ガス火災の場合:漏洩が安全に停止されない限り消火しないこと。
P381: 安全に対処できるならば着火源を除去すること。
P403: 換気の良い場所で保管すること。
空気中での可燃範囲(爆発限界)が15-28%(危険物DB(第2版, 1993))で>12%である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告でクラス2.3(UN No.1005)で副次危険性8に分類されており、酸化性(5.1)はついていないので区分外とした。
5 高圧ガス 低圧液化ガス 警告 H280: 高圧ガス:熱すると爆発のおそれ P410+P403: 日光から遮断し、換気の良い場所で保管すること。 臨界温度が 132.4℃(Merck(13th, 2001))で>65℃である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
11 自己発熱性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 気体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、アルミニウムを侵す(ICSC(J)(1998))、鉄と鋼は容器として耐久性がある(ホンメル(1991))。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値(4時間換算値)、3669、5671、8300 ppm(以上、EHC 54(1986))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた試験で20%水溶液の5分間の適用で壊死が認められた(IUCLID(2000)。ヒトではアンモニアガスとの接触により著しい刺激、化学的熱傷等の報告があり(DFGOT vol.6(1992))、ガスの状態でも皮膚刺激物と見なされている(IUCLID 2000))。さらに、1Nアンモニア水溶液のpHは11.6(Merck(14th, 2006))で>11.5、である。これらの事実に基づき、区分1とした。なお、EU分類ではC、R34 に分類されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギの試験で、重度の薬傷に伴い、眼球癒着、角膜の潰瘍・穿孔、永続的な角膜混濁・虹彩炎などの不可逆的影響が認められ(EHC 54(1986))、また、ヒトでも直接接触により短時間で影響を及ぼし、特に高濃度では重篤な眼障害が起きている(EHC 54(1986)、ACGIH(7th, 2001))。さらに1Nアンモニア水溶液のpHは11.6(Merck(14th, 2006))で>11.5である。これらの事実に基づき、区分1とした。なお、EUによりC、R34 に分類されている。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトでアンモニア曝露による喘息あるいは喘息様症状が複数報告されている(ATSDR(2004)、ACGIH(2001))。また、アンモニアガスは気道に対し刺激性があり(ACGIH(2001))、それらの影響も否定できないが、ATSDR(2004)ではアンモニアガス曝露と気管支喘息を含む呼吸器症状との間に統計学的に有意な関連性があるとし、別の報告では吸入誘発試験により喘息の原因をアンモニアとしている、以上に基づき、区分1とした。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いたOpen epicutaneous testにより、皮膚感作性が否定(IUCLID(2000))されているが、区分外にするには、ガイダンスで推奨されている試験法でなく、リスト2の情報であることからできない。他に試験データも無く、分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - アンモニアに曝露および非曝露のヒトから採取された血液サンプルによる調査・分析により、染色体異常、姉妹染色分体交換の増加(ATSDR 2004)、マウスに腹腔内投与による小核試験(in vivo変異原性試験)で陽性結果が報告されているが(ATSDR 2004)、いずれも詳細が不明であり、他にin vivo試験のデータがないことからデータ不足で分類できないとした。なお、in vitro変異原性試験として、微生物を用いた試験で陰性および陽性の両方の結果(EHC 54(1986)、IUCLID(2000))が報告されている。
6 発がん性 分類できない - - - - アンモニアを飲料水に混入しマウスに2年間投与した結果、発癌性を示唆する所見はない(EHC 54(1986))。また、マウスの試験で他物質の発がん性による腫瘍形成に対するアンモニアの影響を調べた文献の報告(EHC 54(1986))はあるが、胃腸に腫瘍の記載(詳細不明)(RTECS(2008):Cancer Letters: 65, 15, 1992)の他に試験データは無く、分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用い妊娠期間と授乳期間を通じての経口投与により、出生後120日目に児の体重増加抑制がみられた記述(ATSDR(2004))のみで、妊娠前(交配前)からの投与による生殖機能または生殖能力に対する影響については明らかではなく、データ不足のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで呼吸困難、肺水腫、気管支肺炎などが報告され(DFGOTvol.6(1992)、ATSDR (2004)、IRIS (1991)、BSDB (2005))、動物試験でも呼吸困難、チアノーゼ、肺の出血や浮腫、限局性肺炎など、肺を含む呼吸器系に重大な毒性影響が認められている(EHC 54(1986))ので区分1(呼吸器系)とした。なお、動物データ(EHC 54(1986))から推定した毒性発現濃度もガイダンス値区分1に相当している。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肺) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肺) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
大量にアンモニアの職業曝露を受けた後、慢性呼吸困難に加え、収縮性肺機能障害、閉塞性肺疾患などと同様の臨床像を呈した患者3人の症例報告がある(IUCLID (2000))。また、ラットに2ヶ月間吸入ばく露により、143 ppm(3ヶ月補正:94 ppm)で 組織学的変化として、肺に気管支周囲炎と血管周囲炎の徴候を伴った小領域の間質性肺炎所見が記述されている(EHC 54(1986))。前者のヒトの症例報告はList 2の情報であり、後者のラット肺所見の用量はガイダンス値区分2の範囲に含まれるとみられ、区分2(肺)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類対象外 - - - - GHSの定義におけるガスである。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(カラフトマス)での96時間LC50 = 0.083 mg/L(EHC 54, 1986)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、水中での挙動が不明であるため、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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