GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:メタノール
CAS番号:67-56-1

結果:
物質ID: 21B3012
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が12℃(closed cup)(ICSC(J)(2000))<23℃および沸点が65℃(ICSC(J)(2000))>35℃であり、国連危険物輸送勧告でクラス3(UN No. 1230)、PGIIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は464℃(ICSC(J)(2000))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素または塩素を含まず、酸素を含むがこの元素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値6200 mg/kg(EHC 196(1997))および9100 mg/kg(EHC 196(1997))から区分外と判断されるが、メタノールの毒性はげっ歯類に比べ霊長類には強く現れるとの記述があり(EHC 196(1997))、ヒトで約半数に死亡が認められる用量が1400 mg/kgであるとの記述(DFGOT vol.16(2001))があることから、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値、15800 mg/kg(DFGOT vol.16(2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラットのLC50値>22500 ppm(4時間換算値:31500 ppm)(DFGOT vol.16(2001))から区分外とした。なお、飽和蒸気圧濃度は116713 ppmVであることから気体の基準値で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ウサギに20時間閉塞適用の試験で刺激性がみられなかった(DFGOT vol.16(2001))とする未発表データの報告はあるが、皮膚刺激性試験データがなく分類できない。なお、ウサギに24時間閉塞適用後、中等度の刺激性ありとする報告もあるがメタノールによる脱脂作用の影響と推測されている(DFGOT vol.16(2001))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いたDraize試験で、適用後24時間、48時間、72時間において結膜炎は平均スコア(2.1)が2以上であり、4時間まで結膜浮腫が見られた(スコア2.00)が72時間で著しく改善(スコア0.50)した(EHC 196(1997))。しかし、7日以内に回復しているかどうか不明なため、細区分せず区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験(Magnusson-Kligman maximization test)で感作性は認められなかったとの報告(EHC 196(1997))に基づき、区分外とした。なお、ヒトのパッチテストで陽性反応の報告が若干あるが、他のアルコールとの交差反応、あるいはアルコール飲用後の紅斑など皮膚反応の可能性もあり、メタノールが感作性を有するとは結論できないとしている((DFGOT vol.16(2001)))。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウス赤血球を用いたin vivo小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)において、吸入暴露で陰性(EHC 196(1997))、腹腔内投与で陰性(DFGOT vol.16(2001)、PATTY(5th, 2001))、であることから区分外とした。なお、マウスリンフォーマ試験の代謝活性化(S9+)のみで陽性結果(EHC 196(1997)、DFGOT vol.16(2001))はあるが、その他Ames試験(EHC 196(1997)、DFGOT vol.16(2001)、PATTY(5th, 2001))やマウスリンフォーマ試験(EHC 196(1997)、DFGOT vol.16(2001))やCHO細胞を用いた染色体異常試験(DFGOT vol.16(2001))などin vitro変異原性試験では陰性であった。
6 発がん性 分類できない - - - - 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による未発表報告ではラット・マウス・サルの試験で発がん性なしとしている(EHC 196(1997)。また、ラットを用いた8週齢より自然死するまで飲水投与した試験で、雌雄に頭部と頸部のがん及び雌に血液リンパ網内系腫瘍の発生が有意かつ用量依存的に増加したと報告されている(ACGIH(2009))。しかし腫瘍の判定が標準的方法と異なり、動物の自然死後に行われていないため、評価あるいは比較が困難と考えられる。以上の相反する情報により分類できない。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
妊娠マウスの器官形成期に吸入暴露した試験において、胎児吸収、脳脱出などが見られ〔PATTY (5th, 2001)〕、さらに別の吸入または経口暴露による試験でも口蓋裂を含め、同様の結果が得られている〔EHC 196 (1997)、DFGOT vol.16 (2001)〕。メタノールの生殖への影響に関して、証拠の重みに基づく健康障害としての科学的判断がなされ、ヒトのデータは欠如しているが動物による影響は明確な証拠があることから、暴露量が十分であればメタノールがヒトの発生に悪影響を及ぼす可能性があると結論されている〔NTP-CERHR Monograph (2003)〕。以上によりヒトに対して生殖毒性があると考えられる物質とみなされるので区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、視覚器、全身毒性)区分3(麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(中枢神経系、視覚器、全身毒性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの急性中毒症状として中枢神経系抑制が見られ、血中でのギ酸の蓄積により代謝性アシドーシスに至る。そして視覚障害、失明、頭痛、めまい、嘔気、嘔吐、クスマウル呼吸、クスマウル昏睡などの症状があり、時に死に至ると記述されている(DFGOT vol.16 (2001)、EHC 196 (1997))。また、中枢神経系の障害、とくに振せん麻痺様錐体外路系症状の記載(DFGOT vol.16 (2001))もあり、さらに形態学的変化として脳白質の壊死も報告されている(DFGOT vol.16 (2001))。これらのヒトの情報に基づき区分1(中枢神経系)とした。標的臓器としてさらに、眼に対する障害が特徴的であるので視覚器を、また、代謝性アシドーシスを裏付ける症状として頭痛、嘔気、嘔吐、頻呼吸、昏睡などの記載もあるので全身毒性をそれぞれ採用した。一方、マウスおよびラットの吸入ばく露による所見に「麻酔」が記載され(EHC 196 (1997)、PATTY (5th, 2001))、ヒトの急性中毒に関する所見にも、中枢神経系の抑制から麻酔作用が生じていると記述されている(PATTY (5th, 2001))ので、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、視覚器) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、視覚器) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトの低濃度メタノールの長期暴露の顕著な症状は広範な眼に対する障害だったとする記述(EHC 196(1997))や職業上のメタノール暴露による慢性毒性影響として、失明がみられたとの記述(ACGIH(7th, 2001))から区分1(視覚器)とした。また、メタノール蒸気に繰り返し暴露することによる慢性毒性症例に頭痛、めまい、不眠症、胃障害が現れたとの記述(ACGIH(7th, 2001))から、区分1(中枢神経系)とした。なお、ラットを用いた経口投与試験で肝臓重量変化や肝細胞肥大(PATTY(5th, 2001)、IRIS(2005))などの報告があるが適応性変化と思われ採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ブルーギル)での96時間LC50 = 15400 mg/L(EHC 196, 1998)、甲殻類(ブラウンシュリンプ)での96時間LC50 = 1340 mg/L(EHC 196, 1998)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、難水溶性ではない(水溶解度=1000000 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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