名称:エタノール
CAS番号:64-17-5
物質ID: | 21B3016 |
分類実施者: | 厚生労働省、環境省 |
分類実施年度: | 平成21年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関わる原子団を有しない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分2 | 危険 | H225: 引火性の高い液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること/アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
引火点(13℃)は< 23℃、および初留点(78.5℃)は>35℃であることから、区分2とした。なお、国連危険物輸送勧告(UN1170)でクラス3PGIIに分類されている。 | |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性あるいは自己反応性に関わる原子団を有しない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点が422.78℃(ACGIH(2001))であり、常温では発火しないと考えられる。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素を含む有機化合物であるが、この元素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を有しない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLD50値、6200-15000 mg/kg bw(DFGOT Vol.12(1999))、13.7g(13700mg)/kg、17.8g(17800mg)/kg、11.5g(11500mg)/kg(PATTY(5th, 2005))、9.8 - 11.6 ml/kg bw(7938 - 9396 mg/kg)、15010 mg/kg bw、7000 - 11000 mg/kg bw、14.6 ml/kg bw(11826 mg/kg)、7800 mg/kg bw、11500 mg/kg bw、11170 - 16710 mg/kg bw、7060 mg/kg bw、8300 mg/kg bw(SIDS(J)(2009))、はすべて区分外に該当している。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ウサギのLDLo=20,000 mg/kg bw(SIDS(2009))に基づき、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分外 | - | - | - | - | ラットのLC50値のうち、区分4に該当するものが1つ(3,837ppmV(SIDS(2009))、区分外に該当するものが4つ(63,000ppmV(4h)(DFGOT Vol.12(1999))、20,661ppmV(4h)、66,181ppmV(4h)、22,627ppmV(4h)(SIDS(2009)))であることに基づき、区分外とした。 なお、被験物質の濃度は飽和蒸気圧濃度78,026ppmV(147.1 mg/L)の90%(70,223ppmV(132.4 mg/L))より低い値であることから、ガスの基準値(ppmV)を用いた。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分外 | - | - | - | - | ウサギに4時間ばく露した試験(OECD TG 404)において、適用1および24時間後の紅斑の平均スコアが1.0、その他の時点では紅斑および浮腫の平均スコアは全て0.0であり、刺激性なし(not irritating)の評価(SIDS(2009))に基づき、区分外とした。 |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B | - | 警告 | H320: 眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 |
ウサギを用いたDraize試験(OECD TG405)において中等度の刺激性(moderate irritating)と評価され(SIDS(2009)、DFGOT Vol.12(1999))、適用後1〜3日目に角膜混濁、虹彩炎、結膜発赤、結膜浮腫が認められ、MMAS(Modified Maximum Average Score:AOIに相当)が24.0(ECETOC TR48(1998))、かつ7日以内に症状がほぼ回復している(ECETOC TR No.48(2)(1998))ことから、区分2Bとした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足で分類できない。なお、アルコールによる気管支喘息症状の誘発は血中アルデヒド濃度の増加と関係があると考えられており、一方、軽度の喘息患者2人がエタノールの吸入誘発試験で重度の気管支収縮を起こしたことが報告されている(DFGOT(1996))が、その反応がアレルギー由来であることを示すものではないとも述べられている(DFGOT(1996))。 |
4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | ヒトでは、アルコールに対するアレルギー反応による接触皮膚炎等の症例報告がある(DFGOT(1996))との記述があるが、「ヒトでは他の一級または二級アルコールとの交叉反応性が見られる場合があること、動物試験で有意の皮膚感作性は見られないことにより、エタノールに皮膚感作性ありとする十分なデータがない」(ACGIH(2001)、DFGOT(1996)、IUCLID(2000))の記述に基づきデータ不足のため分類できないとした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分1B | 危険 | H340: 遺伝性疾患のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
マウスおよびラットを用いた経口投与(マウスの場合はさらに腹腔内投与)による優性致死試験(生殖細胞in vivo 経世代変異原性試験)において陽性結果(SIDS(2009)、IARC(1988))に基づき区分1Bとした。なお、in vitro 変異原性試験として、エームス試験はすべて陰性であり(DFGOT Vol.12(1999)、SIDS(2009)、NTP DB(2009))、染色体異常試験でもCHO細胞を用いた試験1件の陽性結果を除き他はすべて陰性であった(SIDS(2009))。 | |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | ACGIHはエタノールをA3に分類しており(ACGIH(2009))区分2相当であるが、この評価に用いたデータは、ラット雌雄を用いた飲水による生涯試験であり、ヒトでの飲酒を想定して高用量(10%濃度)で実施されている。より低用量(1%または3%濃度)のラット雌雄を用いた液体飼料による2年間試験においては明確な発がん性は示されていない(ACGIH(2009))。さらに、ヒト職業ばく露における疫学調査ではなく動物実験のデータに基づいており、ヒトに対しては不明であるとの但し書きがある。 また、IARCはアルコール性飲料を習慣的に摂取するヒトの多数の疫学調査に基づいてアルコール性飲料をグループ1に分類しており(IARC Vol. 44(1987))、2007年の再評価においてもアルコール性飲料およびアルコール性飲料中のエタノールをグループ1に分類している(IARC vol. 96サマリー(Access on Oct., 2009))が、このデータはヒトにおける嗜好的習慣的摂取のデータに基づいている(IARC vol. 96は未発刊である)。さらに、EUではエタノールについての発がん性分類はされていない。以上のことから、現時点においては分類できないと判断した。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1A | 危険 | H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
エタノールに関する疫学情報は多く、これまでの前向き研究あるいはケース・コントロール研究の結果から、一定量以上の飲酒が流産の発生あるいは発生のリスクを有意に増加させることが報告されている(IARC vol.44(1987))。また、妊婦の習慣的な飲酒が胎児に発育抑制、小頭症、特徴的顔貌、精神障害などを起こす胎児性アルコール症候群が複数の報告で認められる(IARC vol.44(1987)、SIDS(2009)、DFGOT Vol.12(1999))。その他に出生前のエタノール摂取による異常として、口蓋裂、手掌線の異常、心房心室中隔欠損、耳管欠損などが見られ、妊婦がエタノールを大量摂取した場合に催奇形性と胎児毒性が強く示唆されるとの記述もある(SIDS(2009))。以上の疫学報告および疫学研究の結果は、ヒトに対するエタノールの生殖毒性を示す確かな証拠と考えられるので区分1Aとした。なお、動物試験では、ラットおよびマウスに経口投与による一世代試験では悪影響がなく(SIDS(2009))、マウスの二世代試験で同腹生存仔数の減少が見られ(SIDS(2009))、また、ラットの妊娠期間中の経口投与による一部の試験で多指症、多合指症などの奇形が報告されている(IARC vol.44(1987))。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分3(気道刺激性、麻酔作用) | 警告 | H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトに吸入ばく露した試験で、昏迷、傾眠、軽度の麻痺が観察されている(ACGIH(2001))。また、エタノール摂取による急性の毒性影響は中枢神経系の障害であると記載され(DFGOT Vol.12(1999))、重度の中毒では筋失調、霧視、複視、昏迷、低体温、嘔気、嘔吐、痙攣など、大量摂取した場合には昏睡、反射低下、呼吸抑制、低血圧が見られ、さらに呼吸または循環器不全により、あるいは咽頭反射が欠如した場合には胃内容物吸引の結果として死に至ると記述されている(PATTY(5th, 2001))。上記のヒトでの昏迷、傾眠などの症状に加え、ラット、マウスおよびモルモットに吸入ばく露した試験における麻酔、傾眠、運動失調などの症状の記載(SIDS(2009)、DFGOT Vol.12(1999))に基づき区分3(麻酔作用)とした。一方、ヒトに試験物質蒸気の吸入ばく露は低濃度でも眼と上気道に刺激性があるとの記述(ACGIH(2001))、ヒトに吸入ばく露した試験で、咳および眼と鼻腔に疼きを感じたとの報告(PATTY(5th, 2001))、さらに非耐性の被験者の吸入ばく露試験では鼻刺激感が報告されている(PATTY(5th, 2001))ことから区分3(気道刺激性)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(肝臓)、区分2(中枢神経系) |
警告 危険 |
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(中枢神経系) H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトでアルコールの長期大量摂取はほとんど全ての器官に悪影響を及ぼすが、最も強い影響を与える標的器官は肝臓であり、障害は脂肪変性に始まり、壊死と線維化の段階を経て肝硬変に進行する(DFGOT (1996))との記載に基づき区分1(肝臓)とした。また、アルコール摂取により重度の身体的依存症となった患者は、振戦、痙攣、譫妄の禁断症状に加え、しばしば嘔気、脱力、不安、発汗を伴い、アルコールを得るための意図的行動、および反射亢進が顕著となると述べられている(HSDB、(2003))ことから、区分2(中枢神経系)とした。なお、動物試験では有害影響の発現はさほど顕著ではなく、ラットあるいはマウスの90日間反復経口ばく露試験の場合、ガイダンス値範囲をかなり上回る高用量で肝臓への影響として脂肪変性が報告されている(SIDS(2009))。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分外 | - | - | - | - | 魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50 > 100 mg/L(SIDS, 2005)、甲殻類(ネコゼミジンコ)での48時間LC50 = 5012 mg/L(SIDS, 2005)、藻類(クロレラ)での96時間EC50 = 1000 mg/L(SIDS, 2005)であることから、区分外とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 | - | - | - | - | 急性毒性区分外であり、難水溶性ではない(水溶解度=1000000 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。 |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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