GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:酢酸ブチル
CAS番号:123-86-4

結果:
物質ID: 21B3031
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点(22℃: 密閉式(ICSC(2003)))が<23℃であり、初留点(126℃(ICSC(2003)))が>35℃である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点(422℃(Ullmanns(E)(6th, 2003))が70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 区分外 - - - - 鋼およびアルミニウムが容器として使用できる。(ホンメル(1996))

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50 = 14.13g/kg(ACGIH(2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値>5g/kgおよび>20ml/kg(>17.6g/kg)(共にACGIH(2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLC50値:2000ppm(ACGIH(2001))により区分3とした。なお、飽和蒸気圧濃度(15043ppmV)の90%より低いため、ミストがほとんど混在しない蒸気と判断しガスの基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLC50 = 156 ppm/4h =(0.74 mg/L/4h), および391ppm/4h(1.86 mg/L/4h)(何れもミストで試験を実施)(ACGIH(2001))に基づき、危険性の高い区分3とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験(Draize test)において、毛細血管の充血が見てやっと分かる程度の軽度の刺激性であり(ACGIH(2001))、さらに別のウサギを用いた試験およびヒトに4%溶液を適用した試験ではいずれも刺激性なしと記述されている(IUCLID(2000))。以上の結果または報告に基づき区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギ眼に試験物質原液0.1 mLを適用した試験(ECETOC TR48(2)(1998))において、最大の刺激は適用後24時間で観察され、スコアの平均値は角膜混濁で1未満、虹彩で0、結膜発赤で1、結膜浮腫で1未満を示し、最大平均スコア(MMAS)は7.5と30未満であり、7日目までにほぼ回復していることから区分2Bとした。なお、別のウサギを用いた試験では「刺激性なし〜軽度の刺激性」の結果(ACGIH(2001)、IUCLID(2000))が報告されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験(maximization test)の結果は「感作性なし」であり(ACGIH(2001))、また、ヒトで50人の被験者による皮膚感作性試験(repeated insult patch-test)でも感作された被験者は見られなかったとの報告(ACGIH(2001))があり、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - In vivo試験のデータがないので、分類できない。なお、in vitro試験においては、エームス試験(ACGIH(2001), JECFA(1998))は全て陰性、大腸菌を用いた異数性試験(ACGIH(2001))も陰性、チャイニーズハムスターの繊維芽細胞を用いた染色体異常試験(ACGIH(2001))も陰性である。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットおよびウサギの妊娠期間あるいは器官形成期の吸入ばく露により摂餌量の低下、ラットでは体重減少と胎児長減少、肋骨形成異常(波状、癒合、分岐)の増加、ウサギでは胆嚢の形態およびその他の異常(網膜ひだ、胸骨の非対称癒合)などが見られたが、これらは奇形ではなく変異と見られており、催奇形性を含め仔の発生に及ぼす悪影響は観察されていない(DFGOT vol.19(2000))。一方、ラットの交配3週間前から器官形成期に至るまで吸入ばく露により、親動物の性機能および生殖能に対する悪影響は記述されていない(DFGOT vol.19(2000))が、これらの結果は全て雌動物をばく露した試験であり、雄のばく露によるデータがないので、区分外とするには疑義があり「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(呼吸器、中枢神経系) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(呼吸器、中枢神経系) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのエアゾールによる吸入曝露試験において、540ppm/4h(2.57mg/L/4h)で肺のうっ血、肺胞の出血、気管支粘膜の脱落、肺胞上皮細胞の壊死、肺水腫などが観察されている(ACGIH (2001))ため区分2(呼吸器)とした。また、本物質(48%)、キシレン(26%)、エチレングリコールアセテート(26%)から成る溶媒のばく露を受けた作業者において嗜眠状態、運動障害が報告され(ACGIH (2001))、極めて高濃度のばく露では意識消失に至るとの記述(産業医学 vol.36 (1994))がある。ラットでは蒸気による吸入ばく露で、6867 ppm/4h (32.6 mg/L/4h)で運動失調や麻酔作用(ACGIH (2001))、3000〜6000 ppm/6h (17.5〜34.9 mg/L/4hr)で活動・運動の低下を呈し、マウスでは8000 ppm を20分間吸入ばく露(11mg/L/4h)により、姿勢異常、覚醒低下、強直性/間代性運動、正向反射の遅れなどが観察されている(PATTY(5th, 2001))。上記作業者の神経症状は回復が速やかで必ずしも重篤ではないが、動物における諸症状がガイダンス値区分2に相当する濃度で認められているので、区分2(中枢神経系)とした。なお、ヒト被験者に300ppmを2〜5分吸入ばく露した試験では咽頭刺激の訴えが報告されている(産業医学 vol.36 (1994))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットに500〜1500 ppm/6h(2.38〜7.13 mg/L/6h)を14週間吸入ばく露により、一過性の症状として鎮静と活動低下が見られたものの中枢および末梢神経系の組織学的検査では対照群との間に差はなく、NOELは500 ppm(2.38 mg/L/6h)と報告されている(DFGOT vol.19(2000))。しかし、この試験の目的が神経毒性学的影響の評価にあることから、区分外とするには疑義がある。また、ヒトで職業ばく露による眩暈、胸痛、頭痛、嘔気などの症状、あるいは神経行動学的影響がばく露と関連していることを示す疫学調査の報告がある(ACGIH(2001)、PATTY(5th, 2001))が、本物質単独のばく露ではなく複数物質(溶剤)による混合ばく露の結果であり、本物質との関連性については評価困難であると記述されている(ACGIH(2001))。以上より、得られた情報の範囲ではデータ不足のため「分類できない」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50 = 18 mg/L(CICAD 64, 2005)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:98%(SIDS, 2009))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=1.78(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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