GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:ノルマル‐ヘキサン
CAS番号:110-54-3

結果:
物質ID: 21B3054
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が22℃(NFPA(13th, 2006))で23℃未満、かつ沸点が69℃(Howard(1997))で35℃超である。また、国連危険物輸送告(UN1208)で、クラス3、PGIIに分類されている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性ならびに自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が225℃(ICSC(J)(2000))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素原子を含んでいない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値、15800、28700、32400 mg/kg(以上、EHC122(1991))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - 5mL/kg(換算値3297 mg/kg)でウサギに死亡がみられた(PATTY(5th, 2001)との記述があるが、詳細な情報はなく、データ不足のため分類できないとした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラットのLC50値、48000ppm/4h(環境省リスク評価第1巻(2002))、74000ppm/4h(EHC122(1991))に基づき、区分外とした。なお、1bar=750mmHgとして、蒸気圧160mbar(20℃)(ホンメル(1996))より飽和蒸気圧濃度は157895ppmV、したがって気体の基準値により分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギの皮膚に半閉塞適用24時間後に軽度の刺激性(slight irritation)が認められた(DFGOT vol.14(2000))。ヒトでは閉塞適用1〜5時間後に紅斑、5時間後に水疱形成も見られ、1.5 mLを前腕部皮膚に適用後ヒリヒリ感と灼熱感および一過性の紅斑を認めた(DFGOT vol.14(2000))。さらに、EU分類でXi、R38に分類されている(EU-Annex I(Access on July 2005))ことを考慮に入れ区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの試験で、本物質を0.1mL点眼した結果、軽度の刺激性(Slight irritation)がみられた(DFGOT vol.14(2000))ことから区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - ボランティア25例を対象とした皮膚感作性試験(Maximization test)で感作性が認められなかったとする陰性結果(DFGOT vol.14(2000):WHO(World Health Organization)(1991)n-Hexane. IPCS-Environmental health criteria122, WHO, Genf.)はあるが、本報告のみでは感作性がないことの確かな証拠とするには不充分であると判断し、分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの吸入暴露による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)で陰性(DFGOT vol.14(2000)、ATSDR(1999))、マウスに吸入ばく露による赤血球を用いる小核試験(ATSDR(1999))、マウスおよびラットに吸入ばく露による骨髄細胞を用いる染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)(DFGOT vol.4(1992))でいずれも陰性結果に基づき、区分外とした。なお、ラットの生殖細胞および骨髄細胞を用いたin vivo染色体異常試験で陽性の報告もされているが、試験に方法論的欠陥があり染色体異常誘発の証拠とは見なせないと述べられている(DFGOT vol.14(2000))。また、in vitro変異原性試験として、Ames試験(EHC122(1993)、ATSDR(1999))、5178Y細胞を用いたリンフォーマアッセイ(EHC122(1991))、CHO細胞を用いた染色体異常試験(DFGOT vol.4(1992))などで陰性の報告がある。
6 発がん性 分類できない - - - - ラットおよびマウスに2年間吸入ばく露による発がん性試験(GLP準拠)において、ラットでは雌雄どの部位にも腫瘍発生頻度の増加は見られなかった(DFGOT vol.14(2000))が、マウスの雌で肝細胞腫瘍(主に腺腫)の発生頻度の有意な増加が認められた(DFGOT vol.14(2000))。しかし、このデータのみでは分類に不十分であり、他の評価機関による既存分類もなく「分類できない」とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入ばく露による二世代生殖試験において、2世代とも親動物(F0およびF1)の性機能および生殖能に障害を起こさなかった(DFGOT vol.14(2000))が、ラットに500〜1500ppmを妊娠期間中の吸入ばく露により吸収胚率の増加(EHC122(1991))、ラットに5000ppmを妊娠6〜17日に吸入ばく露により同腹生存仔数の用量依存的に有意な減少(ATSDR(1999))がそれぞれ母動物の体重増加抑制とともに認められたとの試験結果がある。また、EUフレーズはR62、MACはCに区分している。以上のことから区分2とした。なお、一方でラットに1000ppmを妊娠8〜16日の吸入ばく露が吸収胚率の増加にはつながらなかったとする報告(EHC122(1991))もある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトのボランティアを用いた吸入試験でめまい、職業ばく露において傾眠が見られた報告(EHC122(1991))があり、また、ラットまたはマウスを用いた吸入ばく露試験で認められた症状として、運動失調、協調欠如、鎮静、麻酔の記載がある(EHC122(1991)、PATTY(5th, 2001))ことから区分3(麻酔作用)とした。一方、ヒトで吸入ばく露後、咽喉または上気道の刺激を起こした、あるいは起こし得るとの記述(ACGIH(7th, 2001)、PATTY(5th, 2001))、かつ、マウスに吸入ばく露により気道刺激が観察されたとの報告(PATTY(5th, 2001))に基づき区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の職業ばく露により多発性神経障害、末梢性神経障害、多発性神経炎の発症を示す数多くの報告がある(環境省リスク評価第1巻(2002)、EHC122(1991)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.14(2000)、PATTY(4th, 1994)、ATSDR(1999))。また、本物質のばく露を受けたヒトを対象とした疫学研究も繰り返し実施され、その多くがばく露とこれらの有害影響との関連を認める結果となっている(環境省リスク評価第1巻(2002)、産衛学会勧告(1993)、DFGOT vol.14(2000)、ATSDR(1999))。以上のヒトの症例報告と疫学研究の結果に基づき区分1(神経系)とした。なお、動物試験ではラットに反復吸入または経口ばく露による所見として、末梢神経障害、神経行動学的影響、脛骨神経の軸索変性、後肢脱力、神経伝達速度低下などが記録され(PATTY(5th, 2001)、EHC122(1991)、DFGOT vol.14(2000))、その多くがヒトの症状と共通している。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
炭化水素であって、かつ40℃での動粘性率が20.5mm2/s以下であることから、区分1とした。DFGOT vol.4(1992)にはラットでAspirationにより化学性肺炎が認められたとの記述もある。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間LC50 = 3.88 mg/L(EHC122, 1991)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:100%(既存点検, 1996))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=3.9(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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