名称:酢酸フェニル水銀
CAS番号:62-38-4
物質ID: | 21B3079 |
分類実施者: | 厚生労働省・環境省 |
分類実施年度: | 平成21年度 |
使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
6 | 引火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
7 | 可燃性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性・自己反応性に関する原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 区分外 | - | - | - | - | 水に微量に溶け、水より重く、下に沈む(ホンメル(1996)、水溶解度0.44g/100ml(20℃)(ICSC(J)(2000))。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類できない | - | - | - | - | 酸素を含み、それが炭素・水素以外の元素と化学結合している有機化合物であるが、データがなく分類できない。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、アルミニウムは腐食作用を受けるので、容器材料として適さない(ホンメル(1996))。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分2 | 危険 | H300: 飲み込むと生命に危険 |
P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P330: 口をすすぐこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットのLD50 = 22 mg/kg(HSDB(2005))であることから、区分2とした。 | |
1 | 急性毒性(経皮) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における固体である。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分1 | 危険 | H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 |
P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P310: 直ちに医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトに0.1%溶液を24時間適用したパッチテストで4+小水疱性の発疹を示し、一次刺激性とされている(RTECS(2008):Archives of Dermatology.106, 129, 1972)。また、ICSC(J)(2005)において「発赤、痛み、かすみ眼、重度の深部火傷がみられる」との報告が得られ、EUではR34に分類されている(EU Annex 1(access on May, 2009))ことから区分1とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分1 | 危険 | H318: 重篤な眼の損傷 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P310: 直ちに医師に連絡すること。 |
リスト3の情報ではあるが、ICSC(J)(2005)において「発赤、痛み、かすみ眼、重度の深部火傷がみられる」との報告が得られ、ウサギを用いたStandard Draize testの結果、重度(Severe)と記載され(RTECS(2008))ていること、また、皮膚腐食性(区分1)であることから区分1とした。 | |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分1 | 警告 | H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
モルモットを用いたビューラー試験において、陽性率は14/18=77.8%で陽性結果が得られている(DFGOT vol.15(2001))ことに基づき区分1とした。なお、ヒトのパッチテストにおいて、試験物質の0.01%水溶液により2030人中29人が陽性(1.4%:うち21人が弱陽性)を示し(DFGOT vol.15(2001))、別のヒトパッチテストでは、0.01%および0.05%水溶液による陽性率がそれぞれ1.4%および5.8%であった(DFGOT vol.15(2001))。ドイツ学術振興会(DFG)ではShに分類されている。 | |
5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | 消毒薬として酢酸フェニル水銀を含んだオムツを使用したアルゼンチンの子供、38人のリンパ球で、姉妹染色分体交換が増加したが、9ヵ月後には増加は見られなくなった(体細胞in vivo変異原性)(DFGOT vol.15(2001))と報告があるが、詳細は不明である。他にin vivoの試験データがないためデータ不足により分類できない。なお、in vitroではAmes試験(in vitro変異原性試験)の陰性結果が報告されている(NTP DB(access on, May.2009))。 |
6 | 発がん性 | 分類できない | - | - | - | - | データ不足。なお、ラット雄を用いた103週間経口(飲水)投与試験において、腎細胞腺腫の発生頻度の増加の結果として、高用量群では対照群に比べ腫瘍発生頻度の有意な増加が報告されている(DFGOT vol.15(2001))。 |
7 | 生殖毒性 | 区分2 | 警告 | H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
マウスにおいて中枢神経系、眼への障害および尾の欠損、ラットとウサギにおいて多発奇形、ハムスターにおいて脳脱出を引き起こすなど、酢酸フェニル水銀は複数の動物種で強力な催奇形性物質であると明記されている(Birth Defects(3rd, 2000))。また、ハムスター、ラットおよびウサギの妊娠5〜12日に経口投与により、胎児の吸収、死亡、発達遅延を生じ、催奇形作用として頭蓋の骨化遅延、全身浮腫、血腫および開眼症が報告されている(HSDB(2009))。以上のように、多種の動物で催奇形性が示された結果があるが、List2のデータであるため区分2とした。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 分類できない | - | - | - | - | ラットに単回ばく露による赤血球形態異常の誘発、血液凝固因子の阻害など血液への影響が報告されている(HSDB(2009))が、試験の方法および結果とも分類に必要な情報を欠くため分類できない。 |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(腎臓、神経系) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓、神経系) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ラットに2年間経口ばく露により、混餌投与では酢酸フェニル水銀用量0.042 mg/kg/day以上で腎障害が発生し、0.21 mg/kg/day以上では雌雄ともに腎臓の病変が観察された(IRIS(2002))。飲料水投与の場合は0.71-7.1 mg/kg/dayの酢酸フェニル水銀用量で腎皮質の色素沈着、加齢に伴う慢性ネフローゼの頻度と重症度の増強、延いてはそれが発がんの機序に関わっているとも述べられている(DFGOT vol.15(2001))。これらの腎臓病変の発現用量はガイダンス値範囲区分1に相当しているので区分1(腎臓)とした。一方、ヒトでは39歳の農場労働者が6〜7シーズンにわたり酢酸フェニル水銀による種子処理をしていた後、重度の神経毒性を発現し数ヶ月以内に死亡したと報告されている(ATSDR(1999))。また本物質の燕麦種子への散布作業に従事した同じ39歳の農場労働者は大量の水銀を尿中に排泄し、その後筋萎縮側索硬化症に似た神経疾患にて死亡したと記載されている(HSDB(2009))。以上、ばく露との関連が示唆される神経障害の症例の報告に基づき区分1(神経系)とした。なお口の腫脹、歯肉の発赤と軟化と青い線状の着色、虫歯などを認めた症例報告(ATSDR(1999))があるが、これらの症状は消化器系に及ぼす重大な毒性ではないので分類の根拠にはしなかった。また呼吸器系に関しては、呼吸困難、呼吸抑制、剖検による化膿性肺炎を認めた症例が報告されているが、酢酸フェニル水銀の直接的影響であるかまたは重度の神経毒性による二次的影響であるか不明であると記載されている(ATSDR(1999))ため分類の根拠としなかった。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分1 | 警告 | H400: 水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
魚類(ニジマス)での96時間LC50 = 8.6μg/L(AQUIRE, 2010)であることから、区分1とした。 | |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分1 | 警告 | H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
急性毒性区分1であり、金属化合物であり水中での挙動が不明であるため、区分1とした。 | |
12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
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