GHS分類結果（過年度実施分類結果の再分類）
物理化学的危険性
健康に対する有害性
環境に対する有害性
分類結果の利用に関する注意事項：
参考情報：
名称：アルファ‐メチルスチレン
CAS番号：98-83-9
結果：
| 物質ID: | 21B3080 |
| 分類実施者: | 厚生労働省、環境省 |
| 分類実施年度: | 平成21年度 |
| 使用マニュアル: | 政府向けGHS分類ガイダンス（H21.3版） |
物理化学的危険性
| 危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。 |
| 2 | 可燃性／引火性ガス（化学的に不安定なガスを含む） | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
| 4 | 支燃性／酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 6 | 引火性液体 | 区分3 |
|
警告 | H226: 引火性液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚（又は髪）に付着した場合：直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと／取り除くこと。皮膚を流水／シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合：消火するために．．．を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱／火花／裸火／高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること／アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器／換気装置／照明機器／．．．機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋／保護衣／保護眼鏡／保護面を着用すること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
引火点54℃[密閉式]（IMDG（2006））は≧23℃かつ≦60℃であることから、区分3に該当する。なお、国連危険物輸送勧告ではクラス3、容器等級III（国連番号2303）。 |
| 7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 8 | 自己反応性化学品 | タイプG | - | - | - | - | 分子内に自己反応性に関連する原子団（不飽和結合）を含むが、国連危険物輸送勧告ではクラス3（国連番号2303）となっているので、「タイプG」とした。 |
| 9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 発火点574℃（ICSC（2004））であり、常温の空気と接触しても自然発火しないと判断できるので区分外とした。 |
| 10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験法が確立していない。 |
| 12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属または半金属（B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At）を含まない。 |
| 13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。 |
| 14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を有していない有機化合物である。 |
| 16 | 金属腐食性物質 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
| 危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 急性毒性（経口） | 区分外 | - | - | - | - | ラットLD50 = 4900 mg/kg（SIDS（1998）、環境省環境リスク評価第4巻（2005）、DFGOT vol.15（2001））に基づきJIS分類基準の区分外（国連分類基準の区分5）とした。 |
| 1 | 急性毒性（経皮） | 区分外 | - | - | - | - | ウサギLD50 = 16mL/kg（14500 mg/kgに相当）（SIDS（1998）、環境省環境リスク評価第4巻（2005））に基づき区分外とした。 |
| 1 | 急性毒性（吸入：ガス） | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
| 1 | 急性毒性（吸入：蒸気） | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
| 1 | 急性毒性（吸入：粉塵、ミスト） | 区分外 | - | - | - | - | ラットLCLo=3000ppm/6h=21.74 mg/L/4h（SIDS（1998））に基づき区分外とした。なお、LCLo（3000ppm）は飽和蒸気圧濃度（2505ppm）より高いのでミストとみなした。 |
| 2 | 皮膚腐食性／刺激性 | 区分2 |
|
警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合：多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合：医師の診断／手当てを受けること。 P264: 取扱後は．．．よく洗うこと。 P280: 保護手袋／保護衣／保護眼鏡／保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である（このラベルの．．．を見よ）。 P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 |
ウサギを用いた標準ドレイズ試験で中等度刺激性（moderate irritating）の結果（SIDS（1998））に基づき区分2とした。一方、ウサギに24時間適用したドレイズ試験で、1時間後にわずかな紅斑、24時間後に激しい紅斑や浮腫、水疱形成、皮膚腐食性があり、24時間後のドレイズの評点が8.0/8.0との結果（NITE初期リスク評価書（2008）があるが、ウサギに2〜4週間連日適用した試験の結果が中等度〜重度の刺激性と軽度の壊死に止まっていた（DFGOT vol.15（2001））ことから、4時間以内の適用では可逆的と考えられるので区分2とした。各試験とも試験物質は希釈されていない原液を使用している。 |
| 3 | 眼に対する重篤な損傷性／眼刺激性 | 区分2B | - | 警告 | H320: 眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合：水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合：医師の診断／手当てを受けること。 P264: 取扱後は．．．よく洗うこと。 |
ウサギの眼に原液0.1mLを適用し、1時間後:に軽度〜中等度の発赤とわずかな浮腫、24時間後にわずかな発赤を認めたが、48時間後にはすべて回復し、適用24時間後のドレイズの評点は8/110（NITE初期リスク評価書（2008））、また、ウサギを用いた別の試験で試験物質2滴を点眼し、軽度の刺激性（only slight irritation）との報告（DFGOT vol.15（2001））があり、これらの結果に基づき、区分2Bとした。なお、EU分類はXi;R36/37である（EU-Annex I（2006））。 |
| 4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
| 4 | 皮膚感作性 | 分類できない | - | - | - | - | 職業ばく露が原因の接触皮膚炎患者128人の調査により、α-メチルスチレンの接触による皮膚感作性が原因であると結論されている（NITE初期リスク評価書（2008））が、この報告以外に本物質の皮膚感作性を示唆する情報はなく、「分類できない」とした。 |
| 5 | 生殖細胞変異原性 | 分類できない | - | - | - | - | マウスの吸入投与による末梢血を用いた小核試験（体細胞in vivo変異原性試験）での陽性結果（NTP DB（access on May. 2009）、NITE初期リスク評価書（2008））との報告があるが、本試験は13週間のばく露によるもので、雌の最高用量1000ppmで弱い反応がみられているが（陰性対照の1.8倍）、当該用量では死亡例も認められており、雄では陰性である。またin vitro試験での陽性結果もないため区分2とするには不十分であり、データ不足により分類できないとした。なお、in vitro変異原性試験では細菌を用いた復帰突然変異試験およびCHO細胞を用いた染色体異常試験で陰性の報告がある（厚労省報告（1996））、NTP DB（access on May. 2009））。 |
| 6 | 発がん性 | 区分2 |
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警告 | H351: 発がんのおそれの疑い |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合：医師の診断／手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
雌雄ラットに105週間吸入ばく露した試験で、雄に尿細管腺腫・癌腫と単核細胞白血病の発生頻度の有意な増加、雌雄マウスに105週間吸入ばく露した試験で、雌雄に肝細胞腺腫・癌腫の発生頻度の有意な増加がそれぞれ観察されている（NTP TR543（2007））ことからヒトに対する発がん性が疑われるため区分2とした。 |
| 7 | 生殖毒性 | 分類できない | - | - | - | - | ラットに交配前から経口投与による反復投与毒性・生殖発生毒性併合スクリーニング試験（OECD TG421）において、交尾率、受胎率、妊娠期間、黄体数および着床数、着床率、出産および分娩率などの親動物の性機能および生殖能に関連する指標に影響はなかったが、高用量群で2腹の全新生児死亡のため4日生存率が若干低下した（厚労省報告（1996）、SIDS（1998））。この新生仔の死亡については、「生存し得た新生児の体重がほぼ順調に増加したことから, 被験物質の新生児への直接的な影響よりも, 母体毒性による二次的な影響である可能性が高いと考えられる」と記述されている（厚労省報告（1996））。その他は仔に対しても新生仔数、性比、出生後の仔の生存数および生存率は対象群と比較して有意差なく、仔の奇形もなかったとの報告がある（SIDS（1998））。しかしながら、その他に催奇形性を含む仔の発生毒性に関するデータが不十分であり、「分類できない」とした。 |
| 8 | 特定標的臓器毒性（単回暴露） | 区分2（神経系）、区分3（気道刺激性） |
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警告 |
H371: 臓器の障害のおそれ（神経系） H335: 呼吸器への刺激のおそれ（気道刺激性） |
P304+P340: 吸入した場合：空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき：医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん／煙／ガス／ミスト／蒸気／スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん／煙／ガス／ミスト／蒸気／スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱後は．．．よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
ラットに12.3 mg/Lを8時間吸入（蒸気）ばく露（4時間換算値:17.4 mg/L）により、閉瞼、協調運動失調、感覚消失がみられている（NITE初期リスク評価書（2008））。ラットに経口投与により、高用量では自発運動の低下、よろめき歩行がみられ（NITE初期リスク評価書（2008））、また、ウサギに経皮投与した場合に自発運動低下、痙攣が観察されている（NITE初期リスク評価書（2008））。さらに、ヒトではスチレンの急性ばく露が中枢神経系抑制をもたらす可能性があり、症状として協調運動喪失、筋力低下、酩酊感、意識消失などが記載されている（HSDB（2005））。したがって、神経系への影響を示すものとして、上述のラットを用いた吸入ばく露試験でガイダンス値範囲区分2に相当する濃度で症状が発現していることから、区分2（神経系）とした。一方、本物質は眼や皮膚と同様に上気道にも刺激性を示すと記述されている（CERIハザードデータ集（2001）、HSDB（2005））。事実、ヒトのボランティアを用いた試験で眼と鼻の粘膜に強い刺激性の愁訴（DFGOT vol.15（2001））がみられており、区分3（気道刺激性）とした。 |
| 9 | 特定標的臓器毒性（反復暴露） | 区分2（鼻腔） |
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警告 | H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ（鼻腔） |
P260: 粉じん／煙／ガス／ミスト／蒸気／スプレーを吸入しないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断／手当てを受けること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
マウスに14週および2年間吸入ばく露した試験において、全投与群（それぞれ0.368 mg/Lおよび0.491 mg/L以上）の雌雄に嗅腺の萎縮と過形成、嗅上皮の萎縮と化生などの発生頻度の有意な増加がみられ（NTP TR543（2007））、また、ラットにおいても2年間吸入ばく露により、嗅上皮の変性および基底細胞過形成の有意な増加がそれぞれ1.473 mg/L以上および0.491 mg/L以上で報告されている（NTP TR543（2007））。これらの鼻腔病変は区分2のガイダンス値範囲以上の用量で発生していることから区分2（鼻腔）とした。なお、その他に経口または吸入ばく露により肝臓および腎臓への影響が報告されている（厚労省報告（1996）、NTP TR543（2007））が、ガイダンス値範囲に相当する用量で悪影響を示す所見の記載はなく、経口ばく露試験で肝細胞の好酸性変化、GPTの上昇（厚労省報告（1996））が認められているが適応性変化と考えられた。ラット雄で認められた腎臓での硝子滴の蓄積は、α2マイクログロブリンが検出されているので（厚労省報告（1996）、NTP TR543（2007））、雄ラット特有の所見と考えられた。また、ヒトについて「長期吸入ばく露で中枢神経系の抑制を引き起こす」（CERIハザードデータ集2001）と記載があるが、List3の情報であるため分類根拠としなかった。 |
| 10 | 吸引性呼吸器有害性 | 区分1 |
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危険 | H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ |
P301+P310: 飲み込んだ場合：直ちに医師に連絡すること。 P331: 無理に吐かせないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
炭化水素であり、動粘性率が1.0mm2/s（20℃）（密度0.9106g/cm320℃（Ullmanns（E）（6th, 2003））、粘度0.94mPa･s（Ullmanns（E）（6th, 2003）））であることから、区分1とした。 |
| 危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11 | 水生環境有害性（急性） | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
甲殻類（オオミジンコ）での48時間EC50=2.6 mg/L（環境省生態影響試験, 1996）であることから、区分2とした。 |
| 11 | 水生環境有害性（長期間） | 区分2 |
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- | H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P391: 漏出物を回収すること。 P501: 内容物／容器を．．．に廃棄すること。 |
急性毒性区分2であり、急速分解性がない（BODによる分解度：0%（既存点検, 1979））ことから、区分2とした。 |
| 12 | オゾン層への有害性 | 分類できない | - | - | - | - | 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。 |
分類結果の利用に関する注意事項：
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政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。 |
参考情報：
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使用マニュアル |
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