GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:イソプレン
CAS番号:78-79-5

結果:
物質ID: 21B3081
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分1 危険 H224: 極めて引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-54℃(密閉式)(ICSC(2004))は<23℃であり、かつ、初留点34℃は≦35℃であることから、区分1に該当する。なお、国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3、容器等級I(国連番号1218)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 分子内に自己反応性に関わる原子団(不飽和C=C)を含むが、通常流通しているものは安定剤(通常p-tert-butylcatechol)が入っている。国連危険物輸送勧告では、これをUN1218(クラス3PGI)に分類している。したがって安定剤を含むものについて、タイプGとした。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点220℃(ICSC(2004))により区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 低沸点(34℃(ICSC(2004)))の液体に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値2,043 mg/kg(SIDS(2005))であることから、JIS分類基準区分外(国連分類基準区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - ラットLD50>1ml/kg bw(=681 mg/kg bw)が記載されている(SIDS(2005))が、このデータのみでは分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラットLC50値180 mg/L/4h=64,607ppm/4h(SIDS(2005))に基づき、区分外とした。なお、被験物質の濃度63,600ppmは飽和蒸気濃度725,000ppmVの90%より低い値であることから、ガスの基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギに長時間適用および反復適用した結果、また、1日2回5日間連続適用した結果、いずれも軽度の刺激性(slightly irritating)と判定されている(SIDS(2005))ことから、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3または区分外)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ボランティアにおいて、眼への軽度の刺激が認められたとの記述(CERI・NITE有害性評価書(2006))により区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスに2週、13週、40週および80週間の吸入ばく露後の末梢赤血球を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)がいずれも陽性結果(NITE初期リスク評価書(2005)、NTP DB(2009))を示したことから、区分2とした。なお、マウス肺線維芽細胞を用いたin vivo小核試験、マウス骨髄細胞を用いたin vivo染色体異常試験においては陰性の結果が報告されている(NITE初期リスク評価書(2005))。また、in vitro変異原性試験として、エームス試験、CHO細胞を用いた染色体異常試験などで陰性との報告(NITE初期リスク評価書(2005)、NTP DB(2009))がある。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC(1999)で2B、NTP(2005)でR、日本産業衛生学会で2Bに分類されていることから、区分2とした。 なお、ラットに105週間吸入ばく露した試験において、乳腺の線維腺腫・癌腫、腎尿細管腺腫、精巣間質細胞の腺腫の発生頻度の増加(NTP TR486(1999))があり、マウスに80週間吸入ばく露した試験では、腫瘍発生頻度の増加が肝臓、腎臓、脾臓、ハーダー腺などで認められている(IARC vol.71(1999))。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットおよびマウスに器官形成期を含む期間吸入ばく露した発生毒性試験において、催奇形性を含め仔の発生に及ぼす悪影響は認められなかった(SIDS(2005))が、交配前からのばく露による親動物の性機能および生殖能に及ぼす影響については、データが不十分なため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ボランティアでの官能検査において, 160mg/m3(58ppm)で上気道粘膜、喉頭、咽頭への軽度の刺激性が認められたとの記述(NITE初期リスク評価書(2005))、ヒトのボランティアが60ppmばく露後、上気道に刺激性を感じたとの記述(NTP TR486(1999))に基づき、区分3(気道刺激性)とした。また、ヒトで中枢神経系に影響を与え、呼吸機能や意識が低下することがあると記述され、マウスを用いた吸入ばく露試験では致死量に至らない高濃度(97.5-125.3 mg/L)のばく露により、正向反射の消失や中枢神経系の抑制が見られたとの記述(PATTY(5th, 2001))により、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系、上気道) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系、上気道) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスの吸入ばく露(蒸気)試験において、13週間のばく露では大球性貧血、前胃の過形成、嗅覚上皮の変性、肝細胞の変性の発生増加(SIDS(2005))があり、26週間のばく露(0.195〜19.5 mg/L)では後肢麻痺、脊髄の変性、嗅覚上皮の変性、前胃上皮の過形成、大球性貧血の発生増加と、220ppm(0.613 mg/L)以上の群では対照群と比べ後肢握力が有意に低下した(SIDS(2005))。さらに、26週間の回復期間後に脊髄変性の有意な増加が全用量群で見られた(SIDS(2005))。脊髄変性が後肢麻痺の原因と考えられており、ガイダンス値範囲区分1に相当する用量で発生していることから、区分1(神経系)とした。また、上記の嗅覚上皮変性の発生頻度の有意な増加については、26週間回復期間終了時に220ppm(0.613 mg/L)以上の群で見られたが、イソプレンゴムの生産に携わった労働者にカタル性炎症、上気道の萎縮性変化、嗅索の変性が認められたとのヒトでの報告(IARC vol.71(1991))もあることから、区分1(上気道)とした。なお、上記の肝細胞の変性、前胃の過形成は区分2のガイダンス値を超えた用量で発生しているため分類根拠としなかった。またマウスの2週間の吸入ばく露試験で438ppm(90日換算:0.2 mg/L)以上で赤血球数及びヘモグロビン濃度の減少が見られたとの記載があるが(CERI・NITE有害性評価書(2006))、血液学検査以外に血液への影響に関する情報がないため分類根拠としなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50=3.2 mg/L(環境省生態影響試験, 2000)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、急速分解性がない(BODによる分解度:2%(既存点検, 1988))ことから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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