GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:エチリデンノルボルネン
CAS番号:16219-75-3

結果:
物質ID: 21B3084
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 分子内に爆発性の原子団(不飽和のC-C結合)を含むが、データがないために分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が38℃(開放式)(ICSC(1999))で、23℃以上かつ60℃以下である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 分子内に爆発性の原子団(不飽和のC-C結合)を含むが、データがないために分類できない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点272℃(SIDS(2004))で、70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含んでいない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値2276 mg/kg(雄), 5071 mg/kg(雌)(SIDS(2002)), 2550 mg/kg(ACGIH(2001)), 3200 mg/kg, 2290 mg/kg(PATTY(5th, 2001))に基づき、JIS分類の区分外(国連GHSの区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値8253 mg/kg(ACGIH(2001)), >7168 mg/kg(SIDS(2002))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットLC50値2717ppm/4h(雄)、3015ppm/4h(雌)(SIDS(2002))に基づき、区分4とした。なお、本物質の飽和蒸気圧濃度は5518ppmであることから、試験はミストをほとんど含まない蒸気によって行われたと考えられ、分類にはガスの基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験で4時間適用後、軽度(mild)から中等度(moderate)の紅斑と浮腫を生じ、1〜2日目が最も顕著であったがその後徐々に軽減し、14日目迄に完全に回復した。紅斑または浮腫の平均スコア値2.3以上は動物6匹中4匹未満であり、軽度刺激性(mild irritant)との結論(SIDS(2002))に基づき、JIS分類の区分外(国連分類基準の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギ眼刺激性試験において虹彩炎および角膜損傷は観察されず、軽度の結膜充血が生じたが、24時間後に回復し始め、7日後までに全て正常に回復したとの報告(SIDS(2002))に基づいて区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - ラットに吸入ばく露による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)における陰性結果(SIDS(2002))に基づき、区分外とした。なお、in vitro変異原性試験として、Ames試験、ハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験など複数の試験で全て陰性(厚労省報告(2005), SIDS(2002))が報告されている。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用い、雄は交配前14日から交配を経て45日間、雌は交配前14日から交配、妊娠、分娩を授乳3日まで経口投与した試験において、母動物(2匹)の死亡、体重増加抑制と摂餌量減少が見られた高用量(100 mg/kg)群で、妊娠期間の延長、着床数および分娩率の減少があり、総出産児数、出産生児数及び授乳4日目生児数の低下を認めた(厚労省報告(2005)、SIDS(2002))ことから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性) 危険
警告
H370: 臓器の障害(中枢神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口急性毒性試験において、2.0mL/kg(1800 mg/kg)以上で鈍麻、円背、不安定歩行に続き、立毛、間欠性振戦などの症状を呈した(SIDS(2009))。また、ラットの吸入急性毒性試験の10.8〜16.9 mg/Lの濃度で後肢麻痺、正向反射・母趾および尾部圧反射の低下(SIDS(2002))、イヌに10.7〜15.9 mg/Lの吸入ばく露により強直性痙攣(HSDB(2005))がそれぞれ報告され、ガイダンス値区分2に相当するこれらの濃度において、主な症状は中枢性興奮、特に振戦と痙攣であると記述されている(SIDS(2002))。また、ヒトにおいて悪心・嘔吐、頭痛、錯乱、呼吸困難が見られるとの記載(PATTY(5th, 2001))に基づき区分1(中枢神経系)とした。一方、ヒトのボランティアを使った試験で30分の吸入ばく露で鼻と眼に刺激が認められ、蒸気ばく露は喉に刺激性があり、咳と呼吸困難を起こすと記述されている(PATTY(5th, 2001))ので、区分3(気道刺激性)とした。なお、ウサギの経皮試験のデータで下痢、胃腸出血、胃の膨満が見られたとの記載(HSDB(2005))があるが、胃腸出血は高用量での所見と思われ、他の試験結果と比較しても一貫性がないため採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(肝臓) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
吸入ばく露試験において、ラットでは237ppm(1.165 mg/L)を88日間のばく露により肝細胞の変性、イヌでは61ppm(0.300 mg/L)を88日間のばく露により肝酵素の上昇と胆管増生と門脈性線維化がそれぞれ報告されている(SIDS(2002))。経口投与では、ラットの簡易生殖毒性試験の所見として、100 mg/kg/day(90日補正用量約50 mg/kg/day)以上で小葉中心性肝細胞肥大と肝細胞空胞化が認められた(厚労省報告(2005))。以上の肝臓における毒性影響はいずれもガイダンス値区分2の範囲に相当する用量で発現していることから区分2(肝臓)とした。なお、ばく露の影響は腎臓と甲状腺にも認められた(SIDS(2002))が、腎臓の場合は雄ラット特有でヒトには適用されないα-2マイクログロブリン腎症と一致した所見であり、甲状腺の場合はほとんどが4週間の休薬期間後に軽減した回復性の変化で毒性学的意義が不明のため分類対象として採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて吸引により重度の肺炎を起こす旨の記載(PATTY(5th, 2001))、および、被験物質液体を飲み込むと、誤嚥により化学性肺炎を起こす危険がある、との記載(ICSC(J)(1999))に基づき区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50=3.3 mg/L(環境省生態影響試験, 1998)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存点検, 1985))ことから、区分2とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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