GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:2, 3-エポキシ-1-プロパノール
CAS番号:556-52-5

結果:
物質ID: 21B3086
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点72℃(密閉式)(ICSC(J)(2005))に基づき、区分4(GHS基準:引火点60℃超、93℃以下)とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 本物質は歪みのある環(エポキシド類)を含み、金属塩類などと接触すると非常に激しい重合反応を起こす(ホンメル(1996))ことが知られているが、データがないため分類できない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が415℃(ICSC(J)(2005), Ullmanns(E)(6th, 2003), ホンメル(1996))で70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素または塩素を含んでいない有機化合物。酸素を含むが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を有していない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお、高品質鋼、アルミニウム、ガラスおよびホウロウは容器として恒久性がある。(ホンメル(1996))

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値850 mg/kg, 760 mg/kg(雄), 640 mg/kg(雌)(いずれもPATTY(5th, 2001))、550 mg/kg(DFGOT vol.20(2003))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギのLD50値1980 mg/kg(ACGIH(2001))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値580ppm/8h = 820ppm/4h(ACGIH(2001))および500ppm/8h = 707ppm/4h(DFGOT vol.20(2003))に基づき、区分3とした。なお、LC50値が飽和蒸気圧濃度(1188ppm)の90%より低いので気体の基準値(ppmV)で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギを用いた試験で、中等度の刺激性(moderately irritating)(ACGIH(2001), PATTY(5th, 2001))および刺激性スコア4.5(最大値8.0)(PATTY(5th, 2001))の結果に基づき、区分2とした。なお、EU分類ではXi;R36/37/38である(EU-Annex I(access on May2009))。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの眼に適用した試験で、重度であるが可逆的な角膜障害を起こしたとの記述(ACGIH(2001)、PATTY(5th, 2001))に基づき、区分2Aとした。なお、EU分類ではXi;R36/37/38である(EU-Annex I(access on May2009))。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスに腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験、ラットおよびマウスに腹腔内投与による染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)の陽性結果(DFGOT vol.20(2003))に基づき区分2とした。なお、in vitroでは、Ames試験、マウスリンフォーマ試験、CHO細胞およびヒトリンパ球を用いた染色体異常試験(DFGOT vol.20(2003))でいずれも陽性結果(DFGOT vol.20(2003)、ACGIH(2001))が報告されている。
6 発がん性 区分1B 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCでグループ2A(IARC77(2000))、日本産業衛生学会で第2群A(産衛学会勧告(2008))、EUでカテゴリー2(EU-Annex 1(access on May 2009))と分類されていることに基づき、区分1Bとした。動物試験においては、ラットを用いた103週間経口投与試験で、雌雄ともに脳の神経膠腫と前胃腫瘍の発生増加がみられ、雄では精巣鞘膜/腹膜の中皮腫および腸、皮膚、甲状腺、ジンバル腺の腫瘍が増加し、雌では陰核腺、乳腺、口腔粘膜の腫瘍および白血病が増加した。マウスを用いた103週間経口投与試験では、雌雄ともにハ-ダー腺の腫瘍が増加し、雄では前胃、肺、肝臓、皮膚に、雌では乳腺と皮下組織に腫瘍の増加がみられた(IARC vol.77(2000))。104週間吸入試験ではラットの雄では、鼻腔腫瘍と腹膜腫瘍の顕著な発生増加、雌では、鼻腔腫瘍と子宮腫瘍の発生増加が認められ、この結果は2, 3-エポキシ-1-プロパノールのF344/DuCrj(Fischer)ラットの雌雄に対するがん原性を示す明らかな証拠と考えられた。マウスでは、雄に鼻腔腫瘍、皮下組織腫瘍および末梢神経腫瘍の発生増加、雌に鼻腔腫瘍、子宮腫瘍および乳腺腫瘍の発生増加が認められ、この結果は2, 3-エポキシ-1-プロパノールのCrj: BDF1マウスの雌雄に対するがん原性を示す明らかな証拠と考えられた。(厚生労働省がん原性試験(2002))。厚生労働省では健康障害を防止するための指針を出している(厚生労働省指針(2006))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスを用いた試験で、投与経路の記載はないが、親への最大耐量の投与で、吸収胚, 胎児の死亡や異常の増加が報告されている(IARC77(2000))ことから区分2とした。ラットの妊娠13日目に羊膜腔内投与により、胎児死亡、前肢および後肢の奇形の発生が有意に増加した(DFGOT vol.20(2003))が、通常の投与経路に比べばく露濃度が極めて高くなっていると考えられ、分類の根拠とはしなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、呼吸器系) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、呼吸器系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウス及びラットの急性経口毒性試験(LD50:ラット850 mg/kg、マウス450 mg/kg)において、中枢神経系抑制に続き筋肉の振戦と顔面部筋肉の攣縮を伴う音に対する過敏反応を呈し、最終的に痙攣を示す動物も観察されている(PATTY(5th, 2001))。また、ウサギの急性経皮毒性試験(LD50:1980 mg/kg)およびラットとマウスを用いた急性吸入毒性試験(蒸気:LC50値4時間換算1.36〜1.78 mg/L)の所見にも中枢神経系への影響が明記されている(DFGOT vol.20(2003)、PATTY(5th, 2001))。さらに吸入毒性試験の場合には肺への刺激、肺炎、肺気腫の所見(PATTY(5th, 2001)、ACGIH(2001))が記載されている。以上の有害影響はLD50値(LC50値)付近またはそれ以下で発現したと推定され、吸入LC50値の用量が区分1に該当しているので、区分1(中枢神経系、呼吸器系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(中枢神経系、脾臓、精巣) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(中枢神経系、脾臓、精巣) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットおよびマウスの13週間経口投与試験(NTPTR374(1990))、マウスの16日間投与試験(NTPTR374(1990))の各所見において、脳の脱髄、小脳の壊死(ラット)の記載があり、マウスの16日間投与では300mg/kg/day(90日補正:53.3mg/kgday)の用量で発現している。また、ラットおよびマウスの13週間経口投与試験(NTPTR374(1990))、マウスの40週間経口投与試験(NTPGMM-13(2007))、ラットの16日間投与試験(NTPTR374(1990))に各所見おいて、精巣上体支質の変性、精巣萎縮、精巣上体の肉芽性炎、精子数や運動性の低下など精巣への影響が記載され、ラットの13週間投与で100mg/kg/day以上、マウスの13週間投与で19mg/kg/day以上で認められている。さらにラットの2年間経口投与試験(37.5〜75mg/kg/day)では雌雄ともに脾臓の線維化が見られたと報告されている(NTP TR374(1990))。以上の結果より、有害影響はいずれもガイダンス値範囲区分2に相当する用量以上で発生していることから、区分2(中枢神経系、精巣、脾臓)とした。資料の優先度の変更及び新たなデータの追加により、肝臓は削除し、精巣を追加した。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)での96時間EC50=53310μg/L(AQUIRE, 2010)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:85%(既存点検, 2002))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=-0.95(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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